第77話 訓練初日
「走れ! 走れ! ボンクラども――! 走るんだ――――!」
デュークたちを含む50名ほどの集団が訓練所のグラウンドを駆けています。後ろからはものすごい形相をしたカエルの軍曹が「喰っちまうぞっ!」と言うほどに、追い込んでいるのですから、それは全力全開の疾走というべきものでした。
「ごるぁぁぁぁぁぁ! 止まるな、ウドの大木! おが屑にすり下ろされたいか!」
「サー! ノーサンキュー! サー!」
歩くのが得意ではない種族――たとえば植物から進化した種族などは、歩行補助具の使用が認められていますが、もとから走るどころか歩くのだってやっとなのです。それでも、根っこをモゾモゾさせてなんとか前に進みます。
ゴローロの他にも、どこからから湧いてきた他の訓練担当官たちが、新兵たちの脇で罵声を飛ばしています。走るのが得意な、たとえば四つ足の虎型が先行しようとすると、訓練教官の一人がビシリと、鞭を彼の鼻先に振るいました。
「仲間を置いて走るんじゃない! お前だけが進んでどうするんだ! お前は仲間を見捨てるのか!」
「
走るのが得意だと言っても先走ってはいけないようです。共生宇宙軍は、仲間を見捨てない軍隊なのですから当然なのかもしれません。
「そこのクソ虫ィ! お前、余裕があるなら、仲間を助けてやれ!」
クソ虫呼ばわりされたアリ型種族ですが、走ることは得意な様子です。彼はスリスリスリと後ろへ歩きぬけると、一番最後を走っていた仲間――樹木型種族の後ろについて押し始めました。
「すまんのぉ、助かるぞい」
「気にしないでください」
昆虫型の種族というものは概して力持ちですから、怒涛の勢いで植物型の種族を押し上げ始めます。
「よぉぉし、クソ虫、やるじゃないか! 今からお前は、クソコロガシに昇進だ! おっと、そこの樹木はクソノキを名乗れ!」
褒めているのか罵倒しているのかよく分からないセリフを投げ掛けるゴローロの脇ではデュークがまだ慣れない重力の下、懸命に進んでいました。スラスタに制限を加えられた彼にとって、走るのは大変なことなのです。
「ひぃ……はぁ……」
「大丈夫かぁ――デュークぅ」
スイキーがデュークに声を掛けるのですが、彼にも余裕はありません。彼は短い足を必死に動かしているのです。次第に疲れを見せて速度を緩める彼らの横にゴローロ軍曹がピタリと付いてこのように言います。
「カラダを動かせぇぇぇぇぇぇぇ! トリ頭ぁ――! 気合い入れろ、ボロ船――! 潰しちまうぞ、ゴルッァァァァ!」
そのようにして、小一時間も攻めたてられるた頃「全体、小休止!」という掛け声が掛かります。
「ふぇぇぇぇぇぇ……」
デュークがズサリと地面に寝っ転がり、その横でスイキーがペタンと腰を下ろしました。すると――
「くぅおらぁぁぁぁぁぁぁぁ! ボロ船ぇぇぇぇぇぇぇ! トリ頭ぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 寝っ転がるな! 腰を下ろすなぁぁぁ! 浮かんで休め、立って休むんだ! そして、惑星カムラン様に謝罪しろ――――! 勝手に地面に乗って申し訳ありませんとぉぉぉぉ!」
「あわわ、惑星カムラン様、ごめんなさい! ごめんなさい!」
慌てて浮かび上がったデュークが、艦首を何度も上下させました。
小休止を終えると、新兵たちは息を切らせながらまた必死に走りはじめま。恐ろしい形相で怒鳴り続ける訓練教官たちがいたから当然のことでした。
訓練教官は新兵の足が止まりそうになるたびに、こう叫びます。
「お前の限界はそんなものかっ⁈ ひ弱な種族めっ!」
「足が痛いだと⁈ 貴様はオスじゃないな? ひ弱なメスだ!」
「女だからって手加減するかっ! 涙を流す暇があったら走り続けろ!」
「この男女! いや、女男か⁈ どっちでもかまわんから走れ、走れ、走れ!」
共生宇宙軍では、性別による差別は全く無いので、男性や女性、無性であろうが、両性に関わらず、手ひどい言葉で”平等”にこき下ろされるのです。新兵の多くは心のなかで「これじゃ共生宇宙軍じゃなくて、”強制”宇宙軍ぁぁぁぁっ! パワハラだ――!」だと罵りました。
すると彼らの心を読んだかのようにゴローロは「共生宇宙軍法は、パワハラ防止法に超越する! 覚えておけ!」と言うのです。
そして新兵たちの限界が近づき、教官たちが罵りの言葉をかけても、カラダがピクリとも動なくなって、新兵の全員が一様に倒れ伏すこととなりました。体力の限界まで追い立てられて、地べたに転がってヒクヒクとカラダを震わせることしかできないのです。
その様子を見咎めたゴローロ軍曹は、薄ら笑いを上げながらデュークたちを指差しこう言います。
「やはり、貴様らは地べたを這う虫けらではないか!
そして彼は、フンと鼻息を漏らしてから、こうも言うのです。
「ふん、ゴールに転がる蛆虫か」
デューク達が倒れ伏したところは、走り込み最終回を回った後だったのです。
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