第42話 幼生期の終わり ~龍骨の変化~

「さて、他になにか変な感じはしないか?」


「えっと……」


 デュークは副脳を通して、自分の構造を眺めました。


「縮退炉や推進器官の配置は、随分といい感じだよ。新しく生えてきた器官も、龍骨にうまく繋がってるみたい……だけど――」


 デュークはカラダを確かめるように龍骨をひねるのですが、一部に違和感を感じるのでした。


「それはなんだ?」


「艦首のコレが、なんだか良くわからないんだ」


 デュークは新調された手を艦首へ伸ばして、高さ200メートルほどに成長した艦首の中心を叩きます。そこには、直径20メートルほどのまるいふくらみがついていました。


「なんじゃこれは……? 綺麗な円構造をしておるのぉ。ふむ、レーダーか?」


「それが、よく分からないんだよ。いったいコレは何のための器官なの?」


「ふむ、随分と硬質の素材で出来ている……」


見通す眼光ザ・インサイト”の二つの名を持つゴルゴンは、フネを眺めればおおよその構造がわかってしまうのですが、彼の龍骨にも”識別不能”というコードが流れるだけでした。


「うーむ、一体なんだろうか。なにかの開口部にも見えるが……良く分からないな」


「まぁ、ワシらには良くわからん器官が生えることもあるからのぉ。ワシも自分のカラダから、隠し武器が出てくるようになるまで、時間がかかったものじゃ」


「そういうものなの?」


 龍骨の民は、一度繭化を迎えるとカラダが大きく変わることはありません。でも、稀に二度目三度目の繭化をするフネもいます。新しい器官が生えて来たりすることもありました。


「ま、そのうち何だか分かるだろう――それより、だ」


 ゴルゴンは、ポンポンとデュークのカラダを叩きながら、「龍骨の中から新しいコードが湧いているな?」と尋ねました。


「うん、恒星間航行のためのコードがハッキリしてきたよ」

 

 デュークは、”龍骨”の内から、恒星間を飛ぶための情報が溢れてくるのを感じていました。


「そうか、これで――」


 ゴルゴンはデュークの内面が重大な変化を終えたことを確かめ、こう告げます。


「――お前は、少年期に入ったのだ」


 恒星間を渡る準備が出来れば、龍骨の民はという種族はただ前に進み、星の世界に飛び出してゆく生き物なのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る