第14話 活動体、フネのミニチュア その4

「うわぁ、なんて大きなフネなんだ……」


 デュークの視覚素子に、大きなフネの姿が二はい映っています。


「この形は――ゴルゴンじいちゃんとオライオじいちゃんだ」


 クレーンを何本も持った工作艦と、通常型商船のシルエット――それはいつも見慣れたおじいちゃん達の姿でした。


「でも、いつもよりも何倍も大きいぞ……」


 規格外のカラダをもつデュークですから、いつもはおじいちゃんたちの姿が小さく見えています。でも、今、彼の目に映るゴルゴンらは、とてもとても大きなフネなのです。彼はゴシゴシと目をこすりますが、まったく変化はありませんでした。


「ははは、私達が大きくなったのではないぞ。お前のカラダが小さくなったのだ。本体の機能が制限されて、龍骨意識が活動体をベースとして動いているのだよ」


「あっ――」


 デュークが自分のカラダを確かめると、いつものカラダとは違ったフワフワモコモコとした――”自分自身”のミニチュアの中にいるのに気づくのです。


「――そっかぁ、僕は今、活動体の中にいるんだ!」


 デュークはなるほどと思い、初めての活動体の感覚を味わいます。デュークが天井を見上げると、手が届かない高さになっています。ネストの壁は随分と遠くなって、作業場にある機械や部品はとても大きく見えるのです。


「ネストが広いよ! いつもと全然違って見える――!」


「ふむ、では、後ろを振り返ってみなさい」


 ゴルゴンの指示にしたがって、デュークが活動体をクルリと振り向かせます。すると、壁のようなものにポコンと舳先をぶつけてしまいます。


「あいた…………なんだこの壁?」


 それは高さ50メートルほどの高くて白い壁でした。左右は差し渡し250メートルほどもあるのです。


「なんだろう、これ?」


 彼が白い壁をペシペシと叩いて感触を確かめると、ツルンとした感触が手に伝わるのです。


「少し下がって、確かめて見ると良い」


 デュークは活動体にもついている重力スラスタを吹かして、少し後ろに下がります。


「壁……じゃない。これはフネのお肌だ!」


 その壁はフネの船腹でした。全長250メートル、高さ50メートルの大きさを持つフネがデュークの目の前に鎮座していました。


「もしかしてこれって――」


 デュークは、「あ!」と、何かに気づきます。

 

「僕だ――――!」


 山のように大きな自分自身を眺めて、デュークは驚きの声を漏らしたのです。

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