1 中学校

 中学受験を経て入学した私立の中高一貫の女子校。小6の頃に通っていた学習塾の仲間もいたので、新しい学校でもすぐに友達ができた。


 そして何故だか学級委員を務めることになった。学級委員と言ってもお堅いものではなく、帰りの会で司会をする程度だった。

 もう一人の学級委員のサクラちゃんとは仲が良かった。

  

 後期になり(前後期制)、クラスの役員も変わった。そしてサクラちゃんとはあまり話さなくなった。


 そして事件が起きた。

 

 あれは確か一月の下旬だった。


 当時はLINEやTwitterなどのSNSは発達しておらず、携帯電話のeメールで連絡を取り合っていた。


 そんな中、チェーンメールという一種の迷惑メールが流行っていた。


 チェーンメールというのは、長文でどこか恐ろしくて「このメールを5人の人に送信しなければあなたに不幸が起こる」といった文言がある悪質なメールのことで、私の携帯電話にもこのようなメールがしばしば届いていた。

 

話を戻すが、事件というのはこのチェーンメールを用いたいじめであった。


 「サクラちゃんうざくね?」「わかる~」といった会話が周りの友達のあいだで飛び交った。

 サクラちゃんというのは、前述したが、前期に一緒に学級委員を務めていた友達だ。具体的にどのようなところがうざかったのかは明言していないが、中学1年生の女子というのはグループで行動し同じ意見を持つことを好むので、大した理由もなく陰口を言っていたのだと思う。



 サクラちゃんがクラスでハブられるようになった。それでも「サクラちゃんうざい」という会話はやまなかった。


 そんな時、誰かが、いや私だったかもしれないが、「チェンメ作っちゃう?」と言い出した。皆部活生で忙しかったので、私がチェーンメールの文章を考えることになった。


 普段から私のもとに届いていたメールを参考に、自分なりにかなり悪質な文章を作り上げた。さらに悪質なことに、文章の一番下にサクラちゃんの携帯番号を載せた。

 そして仲間に文章を確認してもらい、クラスのほとんどの人に一斉送信した。他校の人にも送信した。サクラちゃんの携帯番号を広めるために、決まり文句の「このメールを5人の人に送信しなければあなたに不幸が起こる」という言葉も書き、どんどんメールは拡散されていった。


 

 メールが送信されて数日経った日の朝礼で担任が言った。


「最近、悪質なメールが流行しているようですね」


 私はハッとなり、頭のなかで「やばいやばいやばいやばいやばいやばい…」と連呼した。その後、教室の後方の扉から偉い先生が入ってきた。


「今から一人ずつ悪質なメールについて聞いていきます。正直に答えてください」

 

 そうして、クラスの友達が一人ひとり呼び出されていき、ついに私の番になった時、私は「私がやりました」と言った。


 その日のそれからの授業は出席していない。個別の会議室のような狭い部屋に連れていかれて、紙に自分のやったことや誰と一緒にやったのかを全部書かされた。私は正直に全部書いた。


 休み時間毎に違った先生が部屋に来て私と面談した。


 保護者も呼び出されて、私の母親は何事かという顔をして学校に来た。


 担任が、私のやったことを母親に説明した。母親は絶句した。

 

 母親と一緒に帰宅した。車の中では何も話さなかった。

 

 父親が仕事から帰ってきた。今日学校であったことを母親が報告した。

 

 二人とも怒るというより呆れて悲しんでいた。姉もそこにいた。

 

「私の育て方が悪かった…」と母親は泣いた。

 

 私は何も言わずに泣いた。ただただ泣いた。

 


 後日、両親と私はサクラちゃんの家へ謝りに行った。

 私の姉とサクラちゃんの姉は同級生だったので、姉はサクラちゃんの姉に頭を下げた。

 

 それから教室に行きにくくなった。何故私はこんなことをしてしまったのか考えた。

 自分のせいではなく、最初に「サクラちゃんうざくね?」と言った子のせいにしたこともあった。

 しかし、自分がメールの本文を作ったことや自分がメールを送信したことに変わりはなかった。


 サクラちゃんは携帯番号を変えた。


 二月中旬、登校を再開し、黒板の前に立ってクラス全員の前で謝罪した。ありがたいことに、クラスの子達は優しく話しかけてくれた。


 もしかしたら、私が登校を再開する前に担任が私への接し方について何か言ったのかもしれないが、それでも嬉しかった。

 

 私は永遠に中学1年生のこの事件を忘れることはないだろう。


 


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私なりの生き方の行方 森川ヤヨイ @yakkk

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