タグには「溺愛」「逆ハー」とありますが、私はこの作品は女性向けとしてではなくもっと広く老若男女に読まれてほしいと思います。
恋愛ものというより、少女の冒険譚であり、暴君が名君へ生まれ変わる成長ものであり、剣と魔法ならぬ剣とあやかしの戦記ものなんです。
最初はわがままでおてんばでお姫様でありお姫様でしかなかった公主・杏が一人また一人と忠臣を得つつ王として成長していく姿には胸打たれますし、それでも時折幼かった頃のお姫様の面を見せるところは愛らしく。
同時に、荒れ狂う武人・武翔が杏を求める姿は、残虐で冷酷でありながらもどこか切なく微笑ましく、あまりにも人間臭くて、彼にも幸せになってほしいと思わざるを得ませんでした。
また、杏に忠誠を誓うあやかしの神官・虎珀も、徐々にその過去が明らかになっていき……彼と杏の絶対的な主従関係は潔ささえあって読んでいて安心しました。
脇を固めるキャラもみんな魅力的! 銀もカイチも李勇験も、呉勝も梁尊完もみんな好き!
杏を取り巻く男たちが国の存亡をかけて戦う姿は熱く、血沸き肉躍る!といった感じです。
特に最後の河での合戦は武翔がかっこいい……。杏と武翔が相対するところは盛り上がりました。
男たちの愛と忠がぶつかり合う、激しくもリズミカルな作品です。
もっと多くの方にドキドキハラハラしながら杏の行く末を見守っていただきたいです。