絶 三十と一夜の短篇第24回
白川津 中々
第1話
定刻と化した起床時間と機械的な一連の所作であるが毎々日々考える余地は多分にあった。
目覚めた瞬間から己が生に投げかける疑問。これでいいのかと、何かせねばならないのではないかと思案を巡らせてはパンを焼き、バターを塗り、齧る。油と乳の味に取り憑かれ早十数年。噛み締めれば益体のない妄想の記憶がありありと蘇っては費える。
食事か終わると頭は切り替わる。身支度をしながら、頭痛を感じながら職務について考えるのだ。口を濯ぎ、シャツに袖を通しながら、今日も仕事だと、あの人に話を通さなくてはいけないと、まるで自分だけが激務に苛まれているかのように悩むのだが、結局のところ俺の仕事は安月給に見合った労働に過ぎず、他の評価も、自己の肯定もできぬまま、机に向かっているだけなのである。
部屋を出る。木造の扉が心許ない。あってないような鍵を掛けながら、盗まれるようなものもないだろうにと、いつも思う。
溜息を吐き一歩を踏み出す。陽が満つる空は澄み渡り、薄いヴェールのような雲が藍色に浮かんでいる。途方もない。俺はきっと、あの空から見たら虫と変わらぬくらいに小さいのだろうと、これもやはり、いつも思うのである。
重い足を無理矢理に進め、やれ生きる為だの、やれ飯の為だのと、無意味な言い訳を自分に聞かせる。これもまた……いや、止めよう。無駄な事だ。
今日も一日が始まり、そして、終わる。意味のない時間がただ経過していく。俺はずっとこのまま、水泡のように時が消えるのを見ているだけなのだろう。恐ろしく長く、恐ろしく無駄な時を、俺は生涯目の当たりにしなければならないのだろう。
あぁ、時が過ぎる。ただ、過ぎてゆく……
絶 三十と一夜の短篇第24回 白川津 中々 @taka1212384
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