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 階段を下りて、洗面台で顔を洗うと、リビングへ向かった。

「おはよう」

 返事がないことを分かっていて、声をかけた。代わりに返ってくるのは、テレビから流れた爆発音だ。

「……よっと」

 朝陽がきらきらと差し込む中を大きく横切り、わざとらしく声を出しながらリモコンを拾い上げる。隣へ腰を下ろしても、詠の反応はない。テレビへ真剣に魅入っている。

 胡座をかいて、同じように画面を眺める。小さな世界で、キャラクター達は広々と動き回っていた。

 時間が止まったかのように、ゆっくりと流れていく。しばらく、紡は画面に映る『スリーミニッツ』に、まるで子供の頃のように熱中させられていた。

 始めて出会ったとき、画面の中の少年は年上だった。それも、今では同じ年齢だ。そう考えると、少しだけ不思議な感じがする。

 十分も経たずに、テレビからはエンディングの曲が流れ始めた。あっという間に終わってしまい、少しだけ物足りない。それでも、残りは満足な気持ちで満たされている。紡は半ば無意識に、スタッフロールに合わせて、鼻唄を歌っていた。

「お兄ぃ、ご機嫌だね」

「久しぶりに見たからね」

「カッコよかったよね」

「うん」

 憧れていた少年は、画面の中で変わらず存在していた。歳が同じになった自分は、近づけているのだろうか。

「今度さ、DVDでも借りに行こうか」

「それいいね。ナイスアイディア」

 ふわふーん、と終わってしまった曲を再び口ずさみながら、詠が立ち上がる。そのままパンツ丸出しの後ろ姿を見せつけ、テーブルに置かれていた牛乳を飲んでいた。

 そのまま紡はカーペットの上に倒れ、天井を見上げる。ふかふかの繊維が、太陽の光を集めて気持ちが良い。すぐに眠気が再び訪れそうになる。目を擦り、意識をはっきりとさせると、ようやく立ち上がった。

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