第13話

少年が強い息を吐きかけると、球体は蝋燭の焔を

吹き消すように消え去った。

片膝を付き、足元に転がるリングを拾い上げると

それを、目の高さに翳す。


「よく見れば、判る筈なのに」

女の肉付きのいい指では、おそらくどこにも嵌らない

細すぎるサイズ。


「思い込みって怖いね」

そう呟くと、親指で器用にリングを弾く。

綺麗な弧を描き宙に舞った小さな石粒の塊は、静かに闇へと吸い込まれていった。


少年は満足そうな笑みを浮かべると、ゆっくりと歩き出す。

やがて、その華奢な後ろ姿も闇に溶け込むように消えて行った。



―――――少年の名は死神。

現世に彷徨う魂の未練を断ち切り、あの世へと送り届けるのが

彼の生業なりわい


               了

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最期の贈り物 一ノ瀬 愛結 @akimama7

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