第3話

最近オープンしたばかりの有名なパン屋、「ナギ」。なんでも、ここの店長の名前が「なぎ」だかららしい。

まあ、今俺はそんな感じの店に来ているのだが。

「何故お前らがいる」

「それは此方の台詞だ馬鹿兄貴」

「あれ、イワクラさんじゃないですか!!どうせだからイワクラさんの分も奢りますよ!!」

「仕方ねえな許してやる」

「軽」

はあ、こいつらだけには会いたくなかったなあ······。そんなことを考えながら奢って貰うパンを選考する。

あ、これ美味そう。そう思いメープルメロンパンに手を掛ける。

___不意に、自分と同じパンを選んだのだろう、誰かの手とあたった。その瞬間は反射的に譲る様に手を避けたが、自分が譲ろうとした相手が誰か分かった途端、自分の方に戻しかかった手をすぐパンの方に向けた。それは相手も同じだったらしい。

「おい、離せ」

「お前が離せ、レディファーストという言葉を学べ」

「俺はお前をレディだなんて思った事はねぇ、ここは兄の権限だ、諦めろ」

「あ?生まれた日同じじゃあねえか、ちょっと生まれた時間が早かったぐらいで兄貴ぶってんじゃないよ」

「「 やんのかこらあ 」」

「ああ、止めてください!!ここパン屋!!」

お互い拳を交えようとしたところをサイグウが制止を掛ける。普通パン屋でこんな騒がしくしていれば周りの者は怒りの目を向ける者なのだが、騒がしくしているのが桁違いの美男美女だからなのか、その者たちから発せられる威圧感からなのか、或いはどちらもなのか、周りの者たちは怒るような表情は見せなかった。どころか、

「まあ、元気な子達ねえ」

「あら、あの子すごいタイプだわあ」などと談笑している。その光景を見ているのが中年の女性だったのが不幸中の幸いといったところか。

周りの女性たちの会話が耳に入ってしまったサイグウは外見の大切さを学んだのであった。

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ナギ 豆澤ハニー @aikobokko0821

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