秘密を明かすという事  ※途中から少しヘレナ視点あり

「それにしてもやっぱりアイテムボックスって有ると便利ねぇ。普通に販売にしてくれたら良いのにケチだわ」


「アイテムボックスって普通にあるもんなんだ?それならあまり気にしなくて良かったかな」


「冒険者ギルドではランクや任務に合わせて貸し出しなのよ。それに入れれる個数に上限があるから多分ツバサにしか使えないでしょうけど取られないようにした方が良いわよ?面倒事にも巻き込まれたくないでしょ?」


まだアイテムボックスは一般的ではないらしい。ハイドさんも現役だった頃は持ってたけど冒険者を辞める時に返してしまったんだとか。その割にヤギの討伐とかはしてたみたいだけど。倒したヤギって血塗れのまま担いで帰ってきたとか?ちょっとグロい。


「雑食ヤギを討伐した時もそのまま持って帰って来たとか?」


「あぁ、あの時は丁度レイズ達が店に来てたからアイテムボックスを借りて行ったの。そのまま持って帰ったら流石に子供達に怖がられちゃうわよ」


そう思うとある意味冒険者用の方が貸したり出来て楽なのかも。ちなみにオレの持つアイテムボックスは白雪が言うにはやっぱりオレ専用で他には誰も使えないし数量制限も重量制限もないらしい。それもそうか、タバコとコーヒーなんか無限に有るし。こういう辺り微妙にチートくさい。凄く地味だけど。

でもよく考えればアイテムボックス自体がチートだった。向こうじゃ当たり前だけど荷物は全部自分の手で持つしかなかったし食べ物や飲み物なんかは当然だけど時間が経てば腐る。そんな便利な物誰にでも持たせられないよな。悪用されたら盗んだ物だろうと入れ放題で治安も乱れ放題だ。

こういうとこ本当にこの世界はしっかりしている。


「さ、もう暗いし帰りましょうか。あまり遅いとヘレナに泣かれちゃうわね」


「すいません。今度から遅くなる時は言って行くようにする。ヘレナさん達にも称号の事とか言っとく方が良いかな」


「言ってもいいと思うなら話してあげればいいと思うわ。安心するでしょうしね」


迷惑掛けたく無くて黙ってたけど、心配掛けたい訳じゃないしヘレナさんやハイドさん以外の店員さんには言っても良い気がした。


正直帰ってからはそりゃもう大変だった。夜の営業時間内だし、と油断していたら店はまさかの臨時休業になっていて心配して待っていたらしいヘレナさんが入り口で仁王立ちしていて、帰ってきたオレ達を見つけるなり飛びついてきてハイドさんの心配通り大号泣。

2人で必死に慰めて落ち着かせて中に入ると今度はお説教コースだった。


普段がまぁ穏やかな人だし言っちゃ悪いけど怒ってる姿自体はそんなに怖くなかったんだけど、頷くまで絶対引いてはくれない頑固な性格だって事は今夜初めて知った。

しかもお説教中言い訳のようにプレイヤーだって事を話したらまさかの事実発覚。

初日のオレが寝てしまってハイドさんがついてくれてたあの間にヘレナさんだけはレサさんから聞いていて知ってたらしい。


「ちょっと待って!アタシ聞いてなかったわよ!?」


「だって言って無かったものぉ。ツバサちゃんから言ってくれないって事は秘密にしたい事なんだと思ったし、ハイドちゃんでも勝手に言えないでしょう?」



※ここからヘレナ視点


まだ今日はちょっと肌寒いからあったかいココアのカップで冷えちゃった手をあたためつつ首を傾げた。

ハイドちゃんは私より色々と知ってるし鋭いから自分で気付いちゃうかなぁとは思ってたけど、犬人族だって感情の機微には鋭いんだから。ハイドちゃんが何か考えて困ってる事も、ツバサちゃんが不安な気持ちになってる事もお見通し。

でも、自分から言いたくない事なら知らない振りだってしてあげる。だけど一人にはしてあげないの。一人は寂しくて余計に悲しい気持ちになっちゃうものね。


「それはそうね。でもヘレナ、お店閉めちゃって良かったの?仕込みとかしてたでしょ?」


「いいの!だってお店空けてたら2人にお説教出来なかったもの。それに、料理はね、常連さん達とアイちゃんがお鍋持ってきてテイクアウトして行ってくれたからあとちょっとなの。ツバサちゃん、ハイドちゃんお腹空いたでしょ?ご飯にしましょ♪」


そう言って丁度適温になったココアを飲み干して立ち上がりほとんど火を落としてしまった厨房へと戻る。

私が思い付きで行動してるのはハイドちゃんは知ってるからクスクス笑って見送ってくれた。今はこうだけど、ここで働き始めた頃と比べたら大違い。昔は本当に傍を離れるのが躊躇われたもの。一人にしたらそのまま崩れちゃうんじゃないかって、気がいつもしてた。もうハイドちゃんからそんな気配はちっともしない。


残りのシチューを温めながら簡単にサラダを盛り付け、ふわふわパンをほんの少しだけ焼き、飲み物をどうしようか考えているとカウンター越しにツバサちゃんのオレンジ髪が覗いた。


「ツバサちゃんなぁに?もうすぐ用意出来るわよー」


「あの、何か手伝える事がないかと思って…」


「あ!そうだ、ツバサちゃん。本当は年いくつ?お酒飲みたい?」


プレイヤーが本来の年のまま来ない場合が有るって事を思い出して思わずぽむっと手を合わせて聞くと一緒キョトンとした顔をした後、言いにくい事を言うように本来は20才の人族だったって事を教えてくれた。

今の姿からは20才のツバサちゃんが想像出来ないのが残念。でもここは16才で一応成人だと言われているし大丈夫ね。


「え、でも良いんですか?」


「今は私達しか居ないもの。いいわよー。ハイドちゃんはー?お酒にするぅ?」


「そうね、エールにするわ。アタシいれるからいいわよ。ツバサはまず味見からね」


笑って頷いたハイドちゃんも立ち上がって厨房側に入って来たかと思うと通常のグラスとデザート入れにも使ってる小さなグラスを取り出してエールの瓶を開ける。

いつもスマートに何でも手伝ってくれるからついお願いしちゃう。それにエールは泡のバランスが私は苦手。泡ばっかりになっちゃうか、泡がほんのちょっぴりになっちゃうかなの。だから普段もエールは注文を取って来た子がそのまま用意して持って行ってくれるのよね。


「こっちはエールなんですね。オレの所でも国によればエール作ってました」


「あら、それならそんなに気にならずに飲めるかしら。まぁ、ちょっと飲んでごらんなさい。うちで1番人気のベリーエールよ」


「わ…結構甘いにおい。でも後味が爽やかで…飲みやすい」


ツバサちゃんはお酒好きみたい。やっぱり男の子ねぇ。確かめるみたいに数口飲んでから残りも全部飲んでしまった。それから用意出来た料理をみんなで運んで色んな事をお話しながらいつもに比べたら少し早い夕食を取った。


プレイヤーだって事、元の世界では家族は居なくて早くに孤児院を出て一人で生きようとしていた事、この世界で私達や妖精に優しくしてもらって戸惑っている事をポツポツと話してくれるツバサちゃんともっと仲良くなりたいと思った。

だから迷惑掛けたってここを出ようとしたツバサちゃんを半ば強引に引き留めて更に1週間の宿泊を取り付けた。


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『ツバサちゃんは迷惑を掛けたって思ったまま出してしまったらもう戻って来てくれない気がするの。女の直感って当たるんだから』


今回ちょっとだけヘレナ視点です。ヘレナ可愛い、とても癒されました。ヘレナは忘れがちですが犬人族なのです。獣なので気配や感情には敏感、としました。感覚的には泣いている時愛犬が寄り添ってくれる感じを想像して頂けると嬉しいです。

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