森の王の庇護 ※ハイド視点

「言っとかないとなんかもう今後もっと心配させそうだし…」


そう言って苦笑したツバサは隠していた事を咎められると思ったのかしょんぼりと落ち着かない様子で尻尾も小さく揺れている。


「確信はしてなかったけどそんな気はしてたわ。だって箱入りだったのかと思うくらいここの事を知らないのにその年で独り立ちしてるんだもの。でもやっぱりそうだったのね。レサが貴方を?」


「やっぱり年齢的にまだ早いんだ?うん、神官さんに頼まれたみたいでレサさんが見つけてくれて、教会でちょっと話し聞いて、その後はハイドさんが知ってる通り」


「ご飯や宿より少しくらい街を案内してあげるべきでしょ。レサは今後怒っとくわ」


まぁでも、その結果うちに連れて来てくれた訳だから感謝しても良いかもしれない。

けれどツバサにとったら不運だったかしら。買い物に行ったりこうやって散策したりしているけど分からない事だらけだったでしょうに。


「いやっ、宿見つかったし、皆優しくしてくれて困らずに済んでるし」


「そういうと思ったわ。その猫ちゃんは?ギフト」


「あ、そう。オレにしか聞こえないけど普通にしゃべるし色々雑にだけど教えてくれる相棒みたいなやつ。ハイドさんもしかしてプレイヤーに詳しい?」


「冒険者の中にはプレイヤーも居たから少しはね。でも神官程ではないし、本人から聞いた話くらいよ」


プレイヤーはNPCに比べてスキルレベルだったり能力値が高いのが多いのはアタシ達の中では常識。中でも突出して強かった人は英雄と言われていたりする人も居たし、逆に戦闘に特化していなかった人は建築技術や様々な知識や技術を授けてくれこの世界の発展に貢献したりって場合も有る。アタシの知るプレイヤーはもっと特殊だったけどね。


「で、多分これ言うと驚かれるとは思うんだけど…コイツとは別に称号で、獣に愛されし者ってやつ貰ってて…獣系は動物でもモンスターってやつでも、獣人でも好意的に接してもらえるみたいなんだ。だから森も平気かなと思って…」


「って事はさっき本当に大丈夫だったって事かしら?」


「た、多分…」


「アタシ悪い事しちゃったかしら。でもNPCの反応は大体あんなもんよ。モンスターの被害はどうしても多いの。食物連鎖は仕方無いとは思うけど、どうしても身内贔屓はあるものね。こちら側に攻撃をしてくる敵とみなされる」


ツバサを保護しなきゃ、と攻撃してくるなら切らなければいけないと思っていたけど確かに1番大きな個体とは意思疎通も取れていたような気がする。どうしてもモンスターは敵という認識が強いけどそれをツバサにまで強いるつもりはない。けれどモンスターと親しくしていくというのも茨の道を行くことになりそうで心配ではあるわ。


「その感じは分かる。襲ってくる猛獣って考えたら怖いのは当然だと思うし、多分オレも喋ってくれなかったら怖かったし」


「アタシには分からなかったんだけど、会話が出来てたのよね?」


「え?うん。1番大きな奴の言葉だけだったけど。えー、また何か特殊スキルか、あれ」


残念だけど大きな飛びつきウルフも他とアタシにとっては変わらなく聞こえていた。自分だけだったと気付いたツバサも複雑そうな顔で尻尾も大きく揺れてるのが見えた。ヘレナの場合嬉しいと尻尾が揺れるんだけど、表情を見る限り嬉しそうにも見えないのよね。猫の感情って分からないわ。

そんな事を思いながら尻尾を眺めていると尻尾が突然膨らんでツバサからも驚いたような声が上がった。


「どうかしたの?ツバサ」


「ハイドさん、あの大きいののステータスって見た?アイツもしかして始まりの森の王?」


「アタシも初めて見たけれどランクは★6。王になってたわね。それが何か?」


「森の王の庇護ってなんだそれ…」


「ツバサ、アタシもステータス見せて貰ってもいいかしら?あぁ、ほら落ち込まないで」


ボワっと膨らんでいた尻尾は元の太さに戻るとしょんぼり具合を現すように地面に落ちた。可愛いんだけど本当に落ち込んでいるように見えて思わず頭を撫でた。

落ち込んだ様子のまま、どうぞ、と返事をくれたからステータスを呼び出す。


翼-ツバサ-


年 20(10)才/体長133cm/体重35kg

種族 猫人族(元人族)


称号 プレイヤー 獣に愛されし者 移住者 始まりの森の王の庇護New


スキル 自動翻訳★★ 身体強化★★ 索敵★ 属性解放★ 毒無効★★ 


ギフト アイテムボックス 導く者



「称号に入ってるって事は多分さっき付与されたのね。明確に示して来た訳だから敵意は本当に無かったんだわ。それに王の庇護を得たんだから配下の飛びつきウルフ達や王が統率する生き物はそれに従うでしょうね」


「またそういうやつか…。これ無くさせる事出来るかな」


「どうして?安全が約束されたようなものじゃない。嬉しくないの?」


そう尋ねると本当に困ったような顔で首を振られた。肩に乗ったままの子猫もアタシも何故嫌がるのか分からず首を傾げた。


「いや、だってオレそんな凄い人間でもないし、あいつらや他のやつらにだって何にもしてやれないのに称号持ってたからってそんなの悪い」


余程納得がいかないのか不機嫌そうに鋭い爪で地面をガリガリと削りながらそんな事を言う。本当に優しくて不器用な子。こんなじゃ元の世界でだってきっと生きにくかったに違いないのに少しもひねたような所がない真っすぐで他者を気遣ってしか生きられない子。

あの言葉もこういう考えが根底にあるからなのね。


「ツバサ。良い事教えてあげるわ」


「何?」


「称号やスキルってね、神様だって無差別には付与出来ないのよ。元々の魂や生き方にそういう素質がある物しか付けれないんですって」


これは本当。特に称号はその傾向がとても強い。例の知り合いのプレイヤーは好奇心が旺盛で称号やスキルの条件なんかを研究する事もあった。結果自分の性質と正反対だったり全く関わりの無かった物に関してはどれだけ実験をしても付かなかったと独特の笑いと一緒に聞いた。

その結果を神官にも言ったところ肯定されたとも言っていた事を簡単にツバサにも話す。


「やわらかい、あたたかいってウルフ達は言ってた。魂が綺麗で優しいってエアリエル達も。それがハイドさんが言う素質?」


「そうね。だから付与された称号なの。そしてね、称号っていうのはその称号自体が何かする訳じゃない。称号はただ分かりやすく名前をつけてあるだけ。移住者なんか特にそうでしょう?移住者だから転々と拠点を動かなきゃいけないわけじゃないでしょ?」


「あ…そっか。って事は勝手にそう変えられた訳じゃなくて…」


「元々ツバサがそういう子だったって事」


やっとツバサが見つけた答えに頷くとどこかほっとしたようにそれまでせわしなく動いていた尻尾も速度を落とした。どうやら少し受け入れられたみたいね。こういうところはこの子を見てた人間じゃないと教えてあげれないものだろうから責めるのも違うんでしょうけど少し神官にはクレームを入れないと、と今後の予定に組み込んだ。


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『20(10)才には触れていいのかしら。道理で大人びてる筈よね。それでもアタシからすれば子供だと思うけれど…』


納得していなかった称号問題がやっと少し受け入れられました。どうぞ!差し出されてもラッキーと思うのではなく、自分には勿体ないと戸惑ってしまうのがツバサです。

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