人とモンスター
襲ってきたり人を襲う生き物とは戦わなければいけないかもしれないとは昨日話を聞いた時に思ったけど、うさぎとか特に小動物系の動物達は多分躊躇いがあっただろうと思うし何より凄く罪悪感が沸いただろうと思う。
身近だったタイプの犬や猫、小動物なんかは特に。
自分が襲われなくても他に襲われる人が居るなら本当は戦うべきかもしれないけど、まだそんな覚悟はないしそこまでここの人達の事だって知らないからまだ後回しにしていたかった。
「そういうもんか。いつか敵にならなきゃいけない時が来るのかもしれないけど今はそんな予定もないから仲良くしてもらえるんならオレも嬉しい」
「それは子猫を取り巻く世界次第よの。だが我らから牙を剥く事はない」
「うん。まだオレはどう生きていくかも決めれてないから敵にならずにいれたら嬉しい」
いつか敵になるかもしれないと、言ったようなもんなのに気にした様子もなくどこかおかしそうに返されて素直に頷いた。まだここに来てたった3日しか経ってない。冒険者の方が稼げるかもしれないとは考えたけど今のオレじゃギルドで動く事も出来ないし他の仕事はどんな物があるのかも、知らない。
世界の事だってここの暮らしの事だってまだまだ知らない事だらけなんだから貰ったお金もまだ沢山ある今の間は焦って決める事もない。まだ今は優しくしてくれるものはオレも好きで居たいと目の前の狼を見ながら思った。
「子猫よ、遅くなったが礼を言わねばな。我の群れの子を保護してくれたのだろう?」
「いや、保護も何もただ出会ってはぐれてるっぽかったから一緒に群れを探そうかと思ったら鳴いてお前達呼んだし、ただ一緒に居ただけ」
「そうかそうか。我らの子も賢くなったな。だが、あまり遠吠えをしては駄目だ。人へも位置を教えてしまうでな」
そう注意された子狼はしょぼくれたように尻尾を垂らして答える。でも確かに危なかったのかもしれない。
近くに★4ランクのハンターが居たら飛びつきウルフが森に出た、ってなって安全確保の為に討伐されたっておかしくない。
「人目を避けてるんなら此処にいつまでも居ちゃ駄目なんじゃないか?」
「そういう事だ。よって子猫よ、礼に我らの住処へ来ぬか?」
「いや、でもオレ何もしてないし…」
「そこまでだ!その子はうちの子だ。無垢な子猫を騙すのは止めてもらおうか」
「は?うっわ…ハイドさん?」
飛びつきウルフ達の安全を思えばいつまでもここに居られないだろうと指摘すればそれを待ってたというように満足そうな顔で頷かれる。急な誘いに戸惑っていれば狼の返事の前に知ってるようで知らない声が割り込み狼達から引き離すように抱き寄せられた。
いつもと感じが違うけどもう何度も抱きしめられてるから匂いで誰か分かった。
「こんな小さな子猫食ったってなんの足しにもなりゃしない。去らなければ全て切り捨てる」
そう言って薄暗い中でも銀色に輝く剣を牽制するように狼達に向ける。え、何でこうなった?っていうか何でハイドさんがここに…?
「下がれ、子等よ。…子猫よ、知り合いか?」
「うん。あ、あのっ、ハイドさんコイツ等は…」
「飛びつきウルフ。獰猛で狡猾なやつらだ」
「ちがっ、コイツ等はそんなじゃ…」
いつもの笑顔もない、オネェ言葉でもないハイドさんは吐き捨てる様に低い声で言う。その言葉に子狼や他の狼が不満を顕に唸り声を漏らし低く体制を屈める。戦わせちゃ駄目だ、ハイドさんもどっちも強い。戦ったらどっちもきっと無傷で済まない。
「エアリエル!」
「はいですの!」
「森の入り口までオレとこの人を送ってくれないか?飛びつきウルフ達も、また来るからその時に話そう」
「ちょっと、ツバサ!」
「はいです!」
色々話さなきゃいけなくなりそうだけど戦ってどっちかが怪我するより良いと有無を言わせずエアリエルに願った。最後まで心配してくれていたこの子は絶対側に居ると思ったから。
エアリエルからの返答の直後オレの周りが薄く輝き瞬きの間にもう見慣れてしまった森の入り口に着き地面へとそっと降ろされた。
オレが魔法を使えると思ってなかったんだろうハイドさんが信じられないような顔をしている。
「助かったよ、ありがとう。エアリエル」
「これくらいいくらでも!ですの」
「ハイドさんは?酔ってない?」
「え、えぇ…。遮音とかは使えないって言ってたけど魔法は使えたのね」
辺りを見回して移動させられた事は分かったんだろう。いつもの調子で呆然と言われた。それには苦笑を返し、暗くなるだろうと思ってアイテムボックスから昨日買ったカンテラを出しライターで火を灯した。
その辺りも話したいから、と誘って近くの木にもたれて座り2人分ケイトおばさんの店で買ったレモネードを出して渡した。
「聞きたい事は色々とあるけれど、ツバサ怪我はしてないわよね?あんなところまで入っちゃ駄目じゃない」
「怪我もないし危ない事も何もなかったよ。ハイドさんは何で森に?」
「チェックアウトはしてないし荷物もあるでしょうに中々戻って来なかったから探しに教会に行ったのよ。そしたら森に行ったんじゃないか、って言うじゃない。慌てて探してみれば飛びつきウルフと対峙してるしびっくりしたわよ」
夕方を過ぎても戻らないから心配して探してくれたらしい。やっぱり冒険者でもないオレくらいの子供が夜の森に行くのは本来危ない事なんだろう。そういうこっちの常識的な物はまだ全然分からないから余計な心配を掛けてしまったみたいだ。
「心配掛けてごめん。多分ハイドさんなんとなく分かってそうな気がするから白状するけど…オレ一昨日この街に着いたんじゃなくて、一昨日この世界に落とされて来たプレイヤーなんだ。だからここの常識とかも分からなくて…」
本当はまだ黙ってるつもりではあったけど多分これだけ色々やらかせばもうバレてるだろう。そうでなくてもこの人鋭そうだし。そう思って一番の隠し事から暴露した。
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「ウルフ達と居た時のハイドさんはいつもと違って少し怖かった」
モンスターをハイドが嫌悪する理由はバッチリ有るんですがそれはもう少し先で説明入れますのでお待ちを!
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