飛び付きウルフ

「引っかかれてる木が可哀想だし降りるか。今から降りるから落ち着けって。飛び掛かって来たら逃げるからな」


下を見下ろして溜め息をつき一応忠告だけしてみる。すると分かってるのかはともかく大人しく座った。 意外と頭は良いのかもしれない。

大人しく待たれたら降りない訳にもいかず一度また枝にぶら下がってから身軽に飛び降りた。


「近くでみるとやっぱりお前デカイな。触っても良いか?」


そう聞くと返事のように短く吠えたから背中の方から豊かな毛並みを撫でた。毛並み的にもやっぱり犬っぽい硬い毛だけど毛の量が多いから凄く気持ち良い。向こうでも見掛ける事はあってもあまり触らせてもらう機会はなかったしこういうのが癒しって言うのかもしれない。


大人しく触らせてくれるんでしゃがんで撫でているとどこか不満そうにこっちを見てきて器用に手の方へ頭を出して来る。撫でろって事かと撫でると嬉しそうに目を閉じた。ちなみに尻尾はさっきと同じくめちゃくちゃ揺れてる。


「ちょっとステータス見せてくれるか?」


一応聞くとまた素直に吠えて答えてくる。ちゃんと返事するしやっぱり意外と頭は良いのかもしれない。


・飛びつきウルフ 幼体。ランク3。


デカイと思ってたけどまだ子供だったみたいだ。飛びつきウルフは★4ランクだって昨日聞いたけど子供だからか少し低い。


でも爪はしっかり固くさっき引っかかれてた木の幹には何本もそこそこ深い傷が出来ているし、呼吸の合間見える歯や牙もしっかりしたもの。敵意を持って襲いかかられていたら結構危なかったと思う。

実際にはそんな事は無くて今もご機嫌にオレに撫でられてる訳だけど。撫でるのを止めると不満そうに鼻先で催促してくるから満足するまで撫でてやってから立ち上がった。


子供だったら親が近くに居そうなもんだけど吠える声とかもしないし好奇心で走り回りでもして逸れたのかもしれない。


「お前ここにずっと居ちゃ駄目なんじゃないのか?親とか群れのやつらとか探してるんじゃねーの?」


そう声を掛けながらオレが歩き始めると一瞬ハッとしたような顔をしてからオレの周りをそわそわと回った後立ち止まって遠吠えをした。

それに続くように遠くから何匹かの遠吠えの声が聞こえてぞっとする。


「ちょ、お前もしかして呼んだ?これお前の仲間ここに集まって来るんじゃないのか?」


慌てて聞くと嬉しそうに頷かれた。狼の群れとかだったら流石にちょっと怖い。

そんな事を思ってると次第に少し離れた場所から繁みをかき分けるような音と地を獣が蹴るような音がし始めて焦る。数はそんなに多く無さそうだけど2mは既にある幼体の親って言ったらもっとデカイだろうし、そんなにデカイ狼を見るのは初めてだ。子供はともかく大人には称号なんか効果がなくてぱっくり食われるんじゃないかとか、アウトだろうと思いながらとりあえず一緒に居たら余計警戒されるだろうと考えて子供の狼から離れようとして失敗した。


置いて行かれると思ったんだろう。しょぼくれた顔でパーカーの裾を子供狼がしっかり咥えていた。


「…分かった、居るからパーカー離してくれるか?怒られたらお前頼むぞ?」


言うと素直に離してくれたから褒めるように頭を撫でた。そこ間にも音は近付いて来ていて正直怖い。 最終的に繁みから姿を現したのは一回りは子狼よりデカイやっぱり大人の狼だった。


迫力とかが子供の非じゃない。逸れた子狼に怒ってるんだろう、唸る声は低く威圧感すら感じる。 白銀にも角度によって青銀にも見える豊かな毛並みと鋭い爪と牙。凄く綺麗だと思うけどそれが自分に向けられる可能性が有るんだからオレは内心落ち着かない。

心臓は全力疾走でもしたように荒れ狂っている。


「うっわ!?」


気付けば別の所から側にやって来ていたのか1匹の狼がオレの背後に居て下げていた手を舐められた驚きに文字通り飛び上がって近場の木の幹を足場に枝へと飛び付いていた。咄嗟の防衛本能って凄いな、と思えたのは落ち着いてからだったけど。


「驚かせたか。すまん、子猫に不躾であった」


「へ?今喋ったの狼か?」


「我だ。我らは子猫に危害を加えたりはせぬ故降りて来てくれまいか?些か首が辛いでな」


オレの居た場所に座った1匹の狼は他よりも大きく一番分かりやすく立派な身体つきをしていた。ソイツが話しつつオレの居る木の側へとやって来てそんな事を言う。狼からオレ達と同じ人の言葉が出てくるとは正直予想もしていなかった。でもそうか、喋れないとオレが勝手に思っていただけでこの世界なら喋れたっておかしくはない。


そもそも世界自体が違うんだ。オレの常識がこの世界の常識と合う訳がないし、魔力だったある。魔力に適応し独自に進化していった訳だから強い奴や長生きな奴が同じ様に話せたっておかしくはない。


「降りるけど、食べようとしたらもっと上に逃げるからな」


そう前置きをしてさっき同様身軽に木の枝から飛び降りた。すぐ側で見ると相当でかい。詳しくは分からないけど3〜4mくらいは余裕であるんじゃないかと思う。そりゃこんなのに襲われたら即死だろう。

牙で簡単に食い千切られるだろうし爪で引っ掻かれたって致命傷を与えるくらい簡単だ。


「でも飛びつきウルフって人間とか襲うんじゃないのか?そりゃオレは猫人族だけど獣人は襲わないとかじゃないんだろ?」


「人間を食べるよりも獣人を食べる方が確かに旨い。だが子猫は我らの敵ではない」


「何で?」


「我らには分かる。子猫は柔らかい、あたたかい。子猫のような者は稀なのだ。食ってしまうよりも我らは子猫に寄り添いたいのよ」


怖い見た目の狼なのに、そう語る声はとても優しい。子狼より太く立派な尻尾を緩やかに揺らして少し頭を下げオレの顔に擦り寄られる。子供よりは毛が硬いけど毛がもっと多い分気持ち良いし温かい。


「そういうのって見るだけで分かるもんなのか?」


「見ただけでは分からぬ。だが気配が子猫はそうなのだ。獣は気配に敏感なんでな、分かる」


それには他の子狼や群れの仲間なんだろう大人狼3匹も一番最初に繁みから出て来た奴も頷くように吠えた。そして代わる代わる側にやって来て擦り寄られる。向こうでも犬や猫は優しい人や自分達を好きな人は分かるって確かに聞く事も有ったけど称号の効果もそんな感じなのかもしれない。


実際触れ合う機会自体はあまり無かったけど動物とかは好きだし好かれたり戦わずに済むのであれば有難い。


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「やっぱりオレの使命ってもふもふ王国作りかな、と本気で思えて来た」


初モンスター登場です。サイズ感的にはもののけ姫のヤマイヌ辺りを想像して下さい。でっかい狼に懐かれるツバサとか可愛いと思ったので絶対やりたかったシーンでした(*´艸`*)

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