愛される喜びを知る

森は昨日と変わらず木と土の匂いがして手前側には誰も居なかったから昨日と同じ辺りまで来てお昼にする事にした。


「白雪、牛乳か水ならどっちが良い?」


「ぎゅうにゅうがいいニャ」


「ん。溢すなよ」


ケイトおばさんの店で買っておいた食器をアイテムボックスから出してクロワッサンサンドを乗せてやり小さな皿に牛乳を注いで置いた。しっかり紙に包まれているから自分はそのままで良いかと思いそのままかぶり付く。クロワッサンも美味しいしはさまってるチーズと野菜、玉子サラダが旨い。アイテムボックスでは状態維持が掛かるから野菜は瑞々しいままだし、チーズは固まることなくトロリとして玉子サラダとも合ってる。これはヘレナさんがオススメしてくれたの分かる。お土産にも3つ買えて良かった。


「ぜっぴんニャ!チーズもタマゴもさいこうニャー!」


「オレも食ってるよ。旨いのは分かったから落ち着いて食えって」


白雪にも好評だったみたいで興奮したようにガッツイて感想を言ってくるけどしゃべるから口から溢れて汚い。注意すると静かになって食べる事に集中し始めた。


サンドイッチを食べながら辺りを見る。神官さんが森に妖精や精霊が集まっていると言ってたけど…。


「……なぁ、そこの羽根生えた女の子。落ちたの拾ってもそれ砂付いてるから食えないよ」


「きゃぁっ!?わ、わたしが視えるんですか…?」


探してみたらまさかのすぐ側に居た。しかも白雪が落とした玉子拾おうとしてた。流石に皿どころか土の上に落ちてる物だから声を掛けたら飛び上がって驚かれる。うん、突然話し掛けてごめん。


「うん、視えるよ。お腹が減ってるならオレのあげるから少し聞いても良いかな」


「良いんですか?もちろん私に分かる事でしたら何でもどうぞですの」


さっき視た焔の精霊よりは大きいけど結局手の平に収まるくらいの大きさのこの子は薄い緑の髪がふわふわしていてウエーブっていうのかな。そんな感じの髪が小さい体の膝下くらいまである。それも人間で考えたら凄いけどそれよりも背中には髪に近い色の鳥の翼みたいなのが生えている。呼ぶと羽根を開いて飛んでやって来た。


「こっちはかじってないからこっちで良いかな」


「あ、いえ、少量で十分なのでそれをほんの少し分けて下されば十分ですの」


確かに少しだけで十分そうだからかじってない所を少しちぎって渡す。そもそも小さな体だから両手で持っても十分大きそうに見えた。多かったら白雪にやれば食うからと伝えると笑顔で頷いた。結局半分位食べてお腹いっぱいになったらしく残りを白雪に手渡そうとして食われ掛けていたのを救出した。

大きさ的に白雪の方が大きいし口で受け取ろうとするもんだから本気で丸ごと食いつかれるんじゃないかと思った。


「ありがとうございましたです。それで聞きたい事とは?」


「君って妖精だよね?」


「はいです。エアリエルという風などを操る妖精ですの」


精霊ではないかな、と思って聞いてみればやっぱりそうらしい。確かに鳥っぽいし風には強そうだ。


「君達妖精や精霊はオレみたいな視える人間が魔法を使う時に力を貸してくれるって聞いたんだけど…」


「もちろんですの。だって視える人はお友達ですから」


「だって視えるだけなのに?」


オレが引っ掛かってるのはここだ。ただ視えるだけでしかない。そりゃ今回みたいにこうやって話す事だって、お腹を空かしていたら食べ物を分けてあげる事だって出来るけど良い人ばかりじゃないだろう。

この子や神官さんの話し方だとその人が視えて何かしてくれた訳じゃなくても力を貸してくれるようだから、逆に不安になるんだ。無償の好意なんてあまりオレは知らない。


「視えるから、です!視える人はとても魂が綺麗で優しいから私達は大好きですの。もう視える人はとっても少なくなってしまって会える事さえ奇跡。そんな大好きな人が困っていたら助けたいのですわ」


「お礼とかしてくれない人でも?」


「私を視て話してくれた、それだけで十分ですの。だって会えて嬉しいのですもの。一緒に何か出来る事が幸せですの。ねぇ、お姉様達」


彼女が笑ってそう呼び掛けると木々の上から次々に彼女と同じように背中に羽根を持つ小さな人達が降りてきてオレの周りを飛び回って口々に言う。


「あなたに会えてそれだけで嬉しいの」


「私達を視てくれた。それだけでいいの」


「だってやっと手伝えるんだから」


「ずっと待ってたのよ。あなたに会えるのを」


歌うように言いながらオレの頬に小さな手で優しく触れていく。皆優しい笑顔でとても嘘を付いているようには見えなかった。初めて会ったオレでもただ会えただけで、手伝えるだけで、話せるだけで幸せだと喜んでくれる。初めての体験になんと言えば良いのか分からず戸惑って白雪を見ると、ほらみろ、と言いたげな顔をしていた。


「ツバサはあいされることもっとしるべきニャ。あいにみかえりなんかいらないニャ」


「愛される事…」


寮のおばさんとか孤児院の人とかもそうだったんだろうか。孤児院の人が面倒を見ようとしてくれたのは仕事や同情からだと思っていた。寮のおばさんも当時オレは全部自分で支払おうとバイトばかりして典型的な苦学生だったからそれでだと思ってたけど違ったんだろうか。


「でも…オレは…」


「そんな辛そうな顔をしないで下さいな」


「でも、嫌じゃなければ愛する事を許して」


「嫌な訳ない!でも…」


オレは彼女達に何が出来るんだろう。優しいのはオレじゃない。綺麗なのも彼女達だ。オレはただ視えるだけで、まだ全然世界の事だって分かってない。


「ツバサ、なにもむずかしくないニャ。ただありがとうでいいのニャ。それでたりないにゃらツバサもエアリエルたちをしってスキになればいいのニャ」


「そんな事で?」


「十分ですの。私達の想いを受け取って貰えただけで幸せ。でも好きになってもらえたら私達はもっと幸せになれますの」


白雪がオレの膝に乗ってオレよりよっぽど大人みたいに言う。それでも頷けなくて聞くと一番最初に声を掛けた子が小さな体でオレの指に抱き着いて笑った。彼女達を嫌う訳がない。こんな風にオレを愛してくれた人を嫌うなんか出来る筈ないんだ。

向こうの世界でも気に掛けてくれる人は居てもこんな事は知れなかった。

ただ、漠然と迷惑にならないように一人でしっかり生きていかないといけないと思っていた。


「ありがとう。オレもエアリエル達の事好きだよ。何も出来ないオレの事を好きだと言ってくれたのはエアリエル達だけなんだ」


「みんな分かってないのよ。貴方は存在するだけでもこんなに愛しいのに」


「こんなにも貴方は優しくあたたかいのに」


「貴方は何も出来ないなんて事ないのです。そんなことを言う人は私が怒ってあげますの」


想像するしか出来ないけど両親から向けられる物がこういうものなのかもしれない。無条件に愛され、ただ無事に産まれて来ただけで喜ばれる。オレにはどれも元々存在しなかったけど、これだけ彼女達が言ってくれるんだから信じようと思えた。なんだか少しだけ気持ちが楽になった気がした。


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「愛される事なんかオレは知らない。それでも良いと言ってくれるから嬉しかった」


個人的に白雪のクロワッサンサンドを狙った子お気に入りです。今後名前を付

けるかは現在検討中です。

名前があった方が良いと思って下さる方いらっしゃればコメ下さい。必死こいて今後登場する妖精。精霊他色々キャラの名前を考えます!Baumやれば出来る子!

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