危険なヤギの群れは星6つ

「君っ!さっきこの辺りで大きな戦闘が無かった?一瞬火柱が見えた気がしたんだけど」


「すいません、それお…僕です。魔法の練習してたら炎が出過ぎてしまって」


「君が?凄いじゃん!あたし魔法は苦手でね。戦闘じゃないなら良かったよ」


突然いかにも戦う人って感じの女の人に話しかけられて少し焦りつつ答えると安心したように笑いかけられる。こんな街にも近いようなところで火柱が上がったらそりゃ驚くよな。危険なモンスターだったら街に入れる訳にいかないだろうし。つい先日ヤギ入り込んだらしいけど。


「本当にすいません。今度からもう少し注意するようにします」


「あはは、真面目だねぇ。これくらい構わないよ。火傷とかしてない?」


短髪の焦茶の髪にキツメの顔立ちだけどよく笑うこの人は怖い人ではなさそうに見える。ところどころに防具って言えばいいのか甲冑みたいなの着てたり背中に長い大剣みたいなの背負ってたりはするけど。


「こんなとこで魔法の練習してるって事は冒険者目指してるの?」


「まだはっきりと決めた訳ではないんですけど、一応は…」


「そっか。あたしも君くらいの頃には冒険者になって強い敵を次々倒すんだーって言ってたなぁ。実際にはそんな簡単ではないんだけどね」


そう言って苦笑を浮かべる。休憩がてら相手してくれる事にしたのか背中の大剣も降ろして俺の側に座った。俺だけ飲んでるのも申し訳なくて鞄から1本コーヒーを渡すと嬉しそうに笑ってくれた。


「ありがとね。裏切りの森で飲みきっちゃってたから実は喉カラカラだったんだ。君は危ないから始まりの森もあまり奥まで行かない方が良いよ。タックルラビットや飛び付きウルフが出たりするからね」


「危ないんですか?あ、でも狼は危ないか…」


名前的にすごい弱そうに聞こえるの何でだろう。聞けば名前そのまま高速でタックルしてくる兎とでかい体で飛び付き押し倒して的確に喉を食いちぎる狼らしい。分かりやすいけどもっと良い名前無かったのか?

この世界ではモンスターの強さは☆の数で言われるらしく強い奴は星が多くなる。タックルラビットでもクリティカルだと複雑骨折じゃ済まないって事で星は2つ。酷けりゃ死ぬ事も有るんだとか。兎なのに。飛び付きウルフは更に当然だけど強く星4。ただ白雪が呟いてたがオレには問題ないらしい。普通に考えて狼に勝てる気はしないんだけどな。


「あの、ヤギってどれくらいなんですか?」


「ヤギ?雑食ヤギかな?アイツはね、数にもよるんだけど単体でも星4。数が増えれば5や6だと言われてる。捕食中の雑食ヤギには絶対近付かない事!アレは子供が好きだから追い回されるからね」


「ヤギこっわ!絶対見たら逃げます」


犬が子供好きっていうのとは大違いで子供を食うのが好きとか怖すぎる。それをさくっと倒して来るとか実はハイドさんってかなり強いんじゃないか?見た目イケメンで強いとか女が放っておかないだろうけど本人あぁだしな。楽しそうではあるけど。


「それが良いね。あたしも単体なら倒せるけど群れは1人じゃちょっとね。ランク足りないから手が出せないよ」


戦うにも冒険者のランクが基準で始まりは星1スタート。ギルドの任務をこなしていく事でランクが上がる仕組みでランクが足りない場合やっぱり相当リスクが上がるから見たら即離脱してギルドに報告する義務がある。それを元に高ランクの冒険者に討伐依頼が作られるという。こういうとこもしっかり整備されてるみたいだ。興味はあるけどギルドで動けないようじゃ話にもならない。

遮音か騒音耐性身に付けてからだと溜め息をついた。


「練習中って言ってたのに長居しちゃってごめんね。これありがとう。任務報告しなきゃいけないしあたしはそろそろ行くよ。君も遅くなる前に帰りなよ?夜の森は危険だからね」


「色々聞けて楽しかったです。僕ツバサって言うんです。また会えたら任務の話とか聞かせて下さい」


「あたしはエミリア。またね!ツバサ君」


また背中に大きな剣を背負い直すと笑顔で森の出口の方へと歩いて行った。あの大きさの剣背負って移動とか体力や腕力すごいんだろうな。


ここの事は人に聞けるけど何より自分の事が分からないのが問題だと思う。

コッチに来て変わってしまったところどころ毛に覆われ硬い爪が備わった手を握る。こんな手は知らない。爪はこれだけで凶器じゃないかってくらいには固く鋭い。猫って器用に高い木に登ってたりするしこれはその為の爪なんだろうか。


「なぁ、お前にとって爪って何?」


「ぶきだニャ。ひっかけるしきりさけるニャ。あとひっかけてたかいとこにものぼれるにゃ」


「やっぱそうだよな。敵からの逃走手段としても木登りって有利だよな」


攻撃手段としての爪の使い方は分からないけど木登りなら出来るような気がした。

結局実験で跳んでみたらそこそこ高い枝まで跳び上がれてしまい爪を使う必要もあまり無く上まで上がれてしまった。猫は結構ジャンプ力も有るって言うしそういう事なんだろう。初めての木登りだったっていうのにあまりにあっさり過ぎて感動するというより呆然とした。

でも高い所からの景色はとても綺麗でぼんやり空を観ていたらゆっくり陽が落ちていった。何だかこの世界の夕陽は異常なくらい赤くて少し怖かった。


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『夕方になると街の地域放送の曲を思い出すのって刷り込み現象?』


太陽は同じでも夕焼けまで同じとは限らないのです^^

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