はじめての魔法
試しに森まで白雪にはしっかり捕まってるように言ってダッシュしてみたけど身体強化って脚力とか体力にも関係したらしく息切れもしないし、マラソン選手かよ!と言いたくなるくらいには早かった。
街をずっと抜けると開けた森の入り口になっていて更に行くとそこそこ良い場所が有ったから立ち止まる。嗅覚も人間より良いから木や草匂い、土の匂いをはっきりと感じる。
「猫人族っていうか、プレイヤーって凄いな。すっごい早く着いた」
「にゃーはヒヤヒヤだったニャ。にゃーようのポケットかかばんほしいニャ」
「ケイトおばさんのとこで探してみる。まぁ、帰りはゆっくり帰るから我慢な」
そう告げると短く返事が有ったから木の根本に移動して座りアイテムボックスからヘレナさんに作ってもらったサンドイッチを取り出す。流石というか崩れる事もなく、野菜がしなってる事もない。出来立てそのままというような感じだ。
クラブハウスサンドとヘレナさんの優しさか唐揚げみたいな物とフルーツ、サラダまで入ってる。
「あ、悪い。お前の水忘れた」
「フルーツくれたらいいにゃ。それとツバサならみずまほうつかえるニャ」
「まず魔法が分かんね。じゃあお前にはこれだけな」
やっぱりヘレナさんの気遣いで紙皿みたいなのも有ったので白雪用にも分けてやり食べ始める。パンがナンみたいなもっちりした食感で旨い。今後も昼は宿で頼もうと心に決める。朝は食わなくて良いや。
食べながら空を見上げると木の少ない所だから広い空が見える。別の世界でも空は一緒だ。青い空と白い雲。ようはこの世界も地球と変わらない体系をきっとしてるんだろう。
こうしていると違う世界に居るって実感は全くしない。ただ森林公園にでも来て子猫とゆっくりしてるだけだ。実際には子猫はしゃべるし、自分も猫だ。けれど危険もないし実感は沸かない。
「なぁ、白雪。ここって違う世界なんだよな?」
「そにゃ。けんもまほうもモンスターもいるせかいニャ。でもここじゃにゃきゃツバサとニャーははなせなかったニャ」
「まぁ、そうだよな。ならオレ此処に来た意味は有ったのか」
白雪と再会する為、言葉を交わす為ここに来た。今はそれでも良いかと思えた。それにここの人も温かいから。
食べ終わってコーヒーを飲み一服しながら自分のステータスを改めて確認する。
称号 プレイヤー、獣に愛されし者、旅行者(新)
スキル 自動翻訳☆☆☆ 身体強化☆☆ 索敵☆ 属性開放☆ 毒無効☆☆
称号が増えたのは多分神官さんに言ったせいだろう。他には増えた物は特に多分ないけど魔法っぽいのは属性開放しかない。属性開放ってまず何だ。この辺り友人の樹ならなんとなく察するんだろうけどあいにくオレはあまりゲームはしなかったからさっぱり分からない。
「属性開放って結局なんなんだ?」
「まずまほうにはぞくせいがそんざいするニャ」
白雪が言うには魔法には火水風光闇と無属性って有ってそれら全ての力を最大限使えるのが属性開放。でもまずその属性魔法自体が分からない。基本はイメージと念じる事らしい。呪文は有っても無くても良いんだとか。結構適当である。
「じゃあツバサはひってどうやってつかうニャ?」
「ライターで」
「ライターっていっぱいひをだせるニャ。ライターからぼーぼーのほのおかんがえるニャ」
ぼーぼーって…。説明が酷い。でもなんとなくイメージは沸いた。意識しやすいようにライターも使う。 ライターから大量の炎…
「っ!あっぶね!」
「かげんしないとあぶないニャ」
「だから先に言え!馬鹿雪!」
ライターだから真上にデカイ火柱上がった。前髪燃えかけたし!驚いた瞬間消えてくれて助かったけど本気で危なかった。心臓バクバクしてる…。でも少し分かったんで心臓を押えたまま指に火を灯すイメージをしてみる。ライターから出るくらいの火が出た。でも別に指は熱くない。
「じぶんのほのおはあつくないのニャ。ライターいらずにゃ」
だからライターは1個だけだったのか。火が出せれば要らないもんな。ついでだから新しい煙草に火を点けてから指を握り込んで火を消す。多分水と風もこんな感じなんだろう。ただ光と闇、無って何だろう。
多分白雪の説明じゃ分からないだろうから神官さんに聞きに行く方がいいかもしれない。明日の予定はおばさんの店と教会だと決めて煙草を咥えたまま寝転がった。
自分としては見た目しか変わった自覚がないのにいつの間にか魔法まで使える身体になっていたみたいだ。 猫人族に変えられて見た目から少し変わってしまって、しかも無自覚にまぁ猫だから聴力も嗅覚も上がってて、スキルの効果で脚力とかも上がってて…自覚してなくても色々変わってしまってたみたいだ。
これまで親無しではあったけど普通にそこそこの人生送ってきたのにここに来てそれらの経験全てが無に帰した気分になる。人生ってなんだろうとか哲学的な事は言うつもりもないけど。人生やり直せって事なんだろか。
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『もう20になるのにまさか人生丸ごとひっくり返されるとは予想してなかった。これが神災ってやつか?』
ツバサ初魔法回。感動とかはありません。魔法に憧れるような主人公ではないのでw
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