子猫達は飛び起きる
「んん…んー…っ!?…何でベット!」
ふと意識が浮上して無意識に伸びをした。薄目で見た視線の先ではオレの服とシーツに埋まったチビが同じように伸びてるのが見えた。…シーツ?オレどこにいる?
ガバッと勢いを付けて起き上がったらチビが驚いた鳴き声を上げたけどそれどころじゃない。 部屋を観察する様に顔を動かすと笑いを耐えてるような顔をしたハイドさんと目が合った。
「少しは眠気も取れた?ツバサちゃん」
「……はい。あの、ここって…」
見渡しても机とテーブル、クローゼットっぽい扉とタンスやチェストがあるだけであまり生活感がない。ハイドさんが居るって事は従業員用の休憩室とかだと思うけど何故かはっきり聞くのは躊躇ってしまった。
「二階の従業員フロアにあるアタシの部屋よ。シンプルだから意外でしょ?」
もしかしたらとは思ったから言い当てられて頷いてしまう。それに気にせず笑って椅子から立ち上がったハイドさんは神官さんからも貰ったようなストローの差さった蓋つきのボトルを渡してくれる。 合わせて今度は大人の手のひら大の小さなトレイに水の入ったお皿を乗せてベット側のチェストの上に置いた。
「あの、迷惑掛けてすいません…」
「これくらい迷惑でもないわよ。むしろツバサちゃんの寝顔が見れて役得ね」
「それもどうかと…」
オレの寝顔見たって何の得もないと思う。それより多分オレ食堂で寝落ちたからここまで運んでもらった訳で、しかも人のベット借りて寝るとか迷惑でしかないと思う。 そう考えて微妙に凹んでると軽くデコピンされて顔を上げる。
「迷惑かなんて相手の感じ方でしょ?ツバサちゃんが迷惑と思ってる事でも意外と相手は気にしてないものよ。だからアナタはそんな事気にしなくて良いの」
「それはそうですけど…」
「じゃあお礼に1つアタシのお願い聞いてくれる?」
気にしなくていいと言われるより面倒事でも何でも言われた方が全然マシだと思う方だから頷くとハイドさんが苦笑した。だってなんかしてもらったんなら返すのが当たり前だと思うし。
「じゃあこれからアタシには敬語は無しね。さっきも敬語なんかない方がツバサちゃんらしいって言ったでしょ?」
「え、いや…だってハイドさん」
「さん付けも禁止にしちゃうわよ?そんなことでーとか思ってるでしょ?アタシには重要なのよ」
そう力説されて折れた。ハイドさんがくれた飲み物はレモネードらしく常温でも旨い。 突然は無理だし気分を変えるのに飲んだんだけど正解だったみたいだ。そして思い出した。オレはレサさんとここに来たのに今ハイドさんと居る。レサさんはどこに行ったんだろう。呆れられたかもしれない。
「ハイドさん、レサさんは?というかどれだけ寝てた?」
「レサなら買い物に行って戻って来るって言ってたから早ければもう戻ってるんじゃないかしら。まだ一刻も経ってないわよ。もう平気?」
一刻って昔の言い方で二時間だっけ?ここだけ昔だ。別に良いんだけど。
二時間も寝てないにしてはすっきりしてるしこれなら夜までは持ちそうで良かった。
「頭はすっきりしてるから多分夜までは平気だと思う。レサさんが戻って来るなら戻らないと」
「レサとは元々知り合いって感じじゃないけどどういう関係?」
「あー、オレこの街には来たとこで、道に迷ってたらレサさんが声掛けてくれて成り行きで食事に誘って貰ったようなもん」
嘘は言ってない。ちょっとぼかしはしたけど、大体そんな感じだった。実際は人生に迷ってるようなもんだけど。
「まだ
「や、そこはまだ決めてない。まず住むとこ確保したり街に慣れてからどうするか決めようかと」
まずやっぱ基盤がしっかりしてないと動きたくない。特に冒険者なんか気軽に身1つでなれるとも思えないし体の感覚とかスキル理解してからじゃないと手は出せないと思う。
この体での戦い方も分からないし、そもそも感覚が違う。そういう動きの面では身長が縮んだ事はデメリットだっただろう。だってリーチが違いすぎる。その代わり身軽ではあるから小回りはきくかもしれないけど。
「それならこことかどう?街の中でも格安で泊まれるわよ?」
「ちょっとそれは考えてる。でもとりあえずレサさんが戻ってないか見に行かないと」
「案内してあげるわ。ついでに客室の方も見せてあげる」
そう言ってチビ用の水のトレイとオレが飲み干したレモネードの瓶を取ってハイドさんが立ち上がって扉を開けてくれる。遠慮してもまた諭されるんだろうから素直に従って部屋を出る。ハイドさんの部屋が一番手前らしく先にはまだ数部屋あるらしい。
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『ここで住み込みの仕事とか高条件過ぎね?』
ふわふわ系癒しオーナーとイケメンってだけでも高条件だと私も思いますw
ちなみに幼生期・青年期・成熟期で行こうかと考えています。
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