アルプスの少女?

「ぬいぐるみじゃなかったのね。この子どうしたの?」

「ぺ…オレの相棒らしいです。てかお前人間の食べ物平気なのか?」

「ニャ」


手の上は居心地が悪かったらしく腕を這い上がってくるチビに聞いてみると短く頷く。

人前ではただの猫でいくらしい。静かで良いかもしれない。

というかオレもどうなんだろう…猫人族って人認識で良いのか?なんだっけ?、猫はねぎが無理?


「レサさん、猫人族って何食えるんすかね…。オレ猫の事なんか全然知らないんですけど」

「獣人族だろうとは思ってたけど猫人族だったんだ?毒無効持ってない?」


レサさん曰く毒無効とは体にとって有害、すなわち毒であると認識される物は勝手に無効化されるスキルらしい。獣人系は強弱は兎も角、大抵基本スキルとして持ってるらしく食べ物に関しても例えばネギ類とかチョコみたいな中毒起こすって言われてるような物でも即無効化されるから食べても大丈夫なんだとか。


「毒無効★★持ってます。なんか便利ですね、毒無効って」

「じゃあ大丈夫よ。お昼はここにしましょ。ヘレナの料理が絶品なの。宿も兼ねてるから料理が気に入ったらここに泊まるのも良いと思う」


そう言って連れられて来たのはそこそこ大きめの二階建ての建物で淡い橙を基調に白や黄色のレンガかタイルで飾られた可愛い感じのところ。看板らしい物には多分店名が書かれてるんだろうけどそれは流石に読めなかった。自動翻訳が対応してくれるのは言葉までらしい。


「ちょっと変わった店員が居るんだけどツバサ人見知りはしない方?」

「ちょっと変わったって……うっわぁ!?ちょっ…」


ちょっとアレな店員って言葉が気になって聞き返そうと思った時レサさんの後ろのドアが開き出てきた人に笑いかけられたと思ったら抱き上げられた!

いや、縮んだし体重も軽くなってるけど軽々抱き上げ過ぎだから。抵抗する間もなかった。


「可愛い子に変な事吹き込むんじゃないわよ、レサ。ハァイ、ぼうや。うちは初めてよね?」

「ちょ、降ろして下さい!」

「こんな可愛い子是非うちに来て欲しいもの。ヘレナのご飯絶品よ?来るって言わなきゃ降ろしてあげない♪」


ひょーいっとオレを抱き上げたその人は重さなんか全く感じていないようにオレを抱いたまま楽しそうに笑って言う。というか見た目どう見ても長髪イケメンっぽい人から良い声の女言葉が聞こえる…。


「……男?」

「アタリ。アーデルハイドよ。ぼうやは?」

「ハイジ?オレ、翼…」


つい小さく呟いた言葉にも綺麗に笑ってついでに頬にキスされた。なんか色々ツッコミ所多すぎて頭混乱しそうだ。むしろ思考停止した。アーデルハイドってハイジかよ、とかイケメンなのになんで女言葉とかいつまでオレの事抱き上げてるんだとか色々思うけどどこから言えば良いのか飛んでいってしまった。


「ハイド!最初からここで食べる予定よ。だからツバサ降ろして店に入れてよ」

「なぁんだ、そういう事はもっと早く言いなさいよ。今なら良い席空いてるからこのまま連れてってあげるわ」


レサさんの言葉で好転するかと思ったらまさかの悪化方向だった。子供みたいに抱っこされて人の居る店内とかどんな羞恥プレイだ。


「絶対嫌ですっ!」

「ちょ、危なっ…くないのね。じゃあこれくらいなら良いでしょ」


店内に入る一歩手前。扉を開ける為オレを抱く腕が片手になった時に肩を強く押して緩んだ隙に飛び降りた。猫の本能か身軽に着地は出来たけれど結局大きな手に捕まり手を引いて店内に連行されてしまった。逃げれなかった…。この人早くね?


「…悪い奴じゃないけどハイドこうだから。ほんと悪い奴じゃないのよ?」

「はぁ…そうなんすか」


とりあえず曖昧に頷いて引かれるままに付いて行く。店内はちょっとオシャレなカフェのような内装で少しご飯時とはずれているのか数席母娘だったり若い男女グループとかが居るだけでそんなにさわがしくもなかった。そこそこの広さもあるし宿も兼ねてるって話だから夜は居酒屋のようになるのかもしれない。


「はーい、到着。水とメニュー持って来るわね。レサは今日もトゲトゲ蟹のクラブサンドにするの?」

「今日は別のにするからあたしにもメニューちょうだい。あと今空き部屋有るかも聞いといてもらえる?」


促されるまま椅子に近付くと当たり前の様に椅子を引かれて座らされる。こういう事は女の人であるレサさんにするべきだと思うけど別に良いらしい。頭上で言葉を交わすと片手を挙げてハイジの人がカウンターの方へ歩いていった。


「まさかあのタイミングで外に出てくるとはちょっとあたしも思わなかったわ。びっくりしたでしょ」

「まぁ少し…。でもま、危害加えられた訳じゃないんで良いですけど」


ほんとにオネェって居るんだ…とは思ったけど。最近オネェブームとかでよくテレビには出てたけどあれって芸能界で生き残る為のキャラ作りだと思ってたし。実際そういう人に会うとは思って居なかった。


実際されたのは抱っこされたり頬にキスだったりおてて繋いで入店させられたくらい…。

あれ、十分危害加えられてんじゃないか?


---------------------------------------------------------------------------

『よく考えたら羞恥プレイって立派に害だしセクハラされてた』


今の読者さんハイジの本名がアーデルハイドだって知っているのでしょうか。ちょっとこのネタ通じるか不安です(苦笑)

---------------------------------------------------------------------------

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る