猫のぼうや

レサさんは孤児院だって言ってたな。どこにでも孤児っているもんなんだな。俺も親無しだし。


「ここまで案内してくれた人が待ってくれてる。教会裏の孤児院に居るって言ってたしぐるっと回ってみるか」


ニャと短く答えてきた為そのまま教会の周りを歩いて行く。やっぱり教会を中心に街は広げられたようで教会の周りには店っぽい看板や商品が並んでいる店が多い。


服屋っぽいとこや、飯屋、飲み屋、雑貨屋。剣と魔法の世界らしく剣なんかが飾られた武器屋みたいな店とか。

どれも建物自体は大きくはないけど逆に圧迫感みたいなものはなくて気楽に入れるような気がする。


「ぼうや、そこのネコのぼうや」


色んな店があるし今後の為にも辺りを見渡していると突然雑貨屋っぽい店のおばさんが声を上げた。ネコの人を呼んでるらしいがネコっぽい人はこの辺り居ないんだけど、と思いながら辺りを見回した。時間的な物なのかやっぱ店が集中してるからなのか人は多い。

剣を腰に下げたちょっと堅気か疑いたくなる強面の男の人とか主婦っぽい女の人とかが大半だ。 ネコの子供は見当たらない。


「あんただよ。オレンジのネコのぼうや」

「おぉっ、オレ?」


キョロキョロしてるとおばさんがずかずか店から出て来てガシっと肩を掴まれたもんだから油断してたオレは変な声と共に仰け反ってしまった。ちょっと恥ずい。 まさかのオレの事だったみたいだ。猫人族とさっき確認はしたけどオレの意識はまだ人間のままだったから気付けなかった。


「あんたしかいないじゃないか。さっきからきょろきょろしてるけど迷子かい」

「あー、いえ。行き先は分かってるんで迷子じゃないです」

「そうかい、どこに行くんだい。おつかいかい?」


背が小さいせいで物凄く子供扱いをされてるらしい。猫人族ってここメジャーじゃないのかな。とりあえず心配そうなおばさんに迷子では無いことを訴えてみたけど一人でうろうろしてる事が問題みたいで心配そうな顔で見られる。


「教会裏の孤児院で待ち合わせしてるだけなんで。ほんと大丈夫です」

「なら良いんだけどねぇ…。そうだ、ぼうや。孤児院に行くならこれを持っておいき。そんな細っこいんじゃ大きくなれやしないよ!」


納得してくれたのかは分からないけどやっと肩から手を離してもらえて、代わりに紙袋に入った何かを押し付けられる。なんていうかドラマとかで町に絶対一人は居る感じの世話焼きおばさんみたいだ。


「ども…。おいくらですか」

「要らないよ。その代わり気に入ったら今度はお母さんと買いに来とくれ。ほら、待ち合わせなんだろ。引き止めて悪かったね」


普段着にエプロンを付けたおばさんは商売人らしく明るく笑ってオレの頭を撫でると店に戻っていった。

勢い有りすぎて子供じゃないとも、貰えないと断る事も出来なかった。

かといってわざわざ追いかけて言うのもむしろ背伸びしたがる子供のように思えて諦めた。場所はなんとなく覚えたからおばさんの言う通り後日買い物に来ればいい。表に並ぶ商品的に日用雑貨とかちょっとしたおかしを取り扱ってるみたいだ。

ここで生活するなら日用雑貨とかも揃える必要があるし丁度良いかもしれない。


「ツバサ、なにもらったニャ」

「ん?なんだろ。あっちで言うマドレーヌとかフィナンシェみたいな焼き菓子と、こっちはラスクっぽいか。とりあえず改めて孤児院だ」


肩からチビが乗り出して欲しそうにしてるけどレサさんをあまり待たせるのも申し訳ないし、そう仕切り直して今度は早足で歩き始めた。

それから数分で再度引き止められる事もなく教会の裏側へと辿り着いた。

目の前には庭のような広いスペースと教会程ではないけどそこそこ大きな建物。

庭では遊んでいる子供が数人とレサさん、シスターのような女の人が立ち話をしていた。


「レサさん、待ってもらってすいません」

「あ、終わった?じゃあ行こっか。落ち着いたらまたこの子連れて遊びにくるね!」

「え、いいんすか。ちょ、あの、レサさんお借りします!」


オレに気付いて女の人との会話を切り上げた彼女は教会に来た時と同様にオレの手を引いて歩き出す。

話してたんだろうにこれじゃあんまりだろうと引きずられながら叫んでみると微笑ましく眺めて手を振られた。多分レサさんは普段からこうなんだろう。


「もうお昼過ぎてるしお腹空いたでしょ。何食べたい?」

「好き嫌いないんで何でも。チビ連れて入れるとこならそれで良いです」


オレの感覚ではちょっと前まで樹と飲んでて、そのまま落とされたから腹は別に減ってないけどチビが反応してるしレサさんに任せる事にする。旨かったら今後利用すればいいだろう。 それよりも体感的に落されて少ししてレサさんに起こされて寝た気がしないから眠い気がする。


「チビ?」

「あぁ、コイツの事。腹減ってるみたいなんで」


肩にぶら下がったままのチビを摘み上げて手の上に乗せて見やすくする。

子猫程もないチビは小さくなったオレの手でも片手に収まるくらいだ。真っ白でふわふわの毛並みにスミレ色の目で…静かにしてると普通に可愛いのにな、コイツ。

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『無条件に子猫は可愛いって思うけどさ』


ショタのおててに子猫も全力で可愛いと思ってます!

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