人間を辞めさせられた日
「神官様、連れて来ました。この子です」
「ありがとうございます。箱庭へようこそ、翼さん。長くなりますからこちらへどうぞ」
「はぁ…どっかで会った事ありましたっけ」
神官様と呼ばれたその人は白のローブっていうんだっけ?そんな長い服を着たどっからどう見ても人畜無害そうな笑顔の人だった。いかにも外国の神父って感じの金の肩より長いストレートの髪に柔和そうな優しい茶色の目のイケメンだ。
こんな服着た人に会って話した事があれば覚えてそうなもんなのに覚えがない。
相当酔ってる時に飲み屋で話したとかなら覚えてないかもしれないけど神官って言われてる人が居酒屋はものすごく微妙…。偏見か?
「お会いしたのは今日がはじめてです。神様に新しく来られるプレイヤーの事はお聞きしているので。ですが名乗りもせず、というのは失礼でしたね。私はランバート。ここでは神官とも呼んで頂いています」
「あたしはレサ。お話の間裏の孤児院に居るから終わったら来てね。色々案内してあげる」
そう言ってやっと手を放してもらえた。彼女の体温が移った掌が急に冷やされて冷たくなる。
ていうか気付いてなかったけどなんか手おかしくね?やけに爪が伸びてるしなんか動物っぽいような…
「色々聞きたい事もありそうですね。私でお答え出来る事でしたらお話ししますからどうぞこちらへ」
洋画でよく見るエスコートみたいに手を差し出されて無意識に手を出してしまいまた連れられる。オレってこんな進んでスキンシップ取る方だっけ?もっと淡白に生きてきたと思うんだけど。
連れられた部屋には高そうな木のテーブルとシックな色の革張りでこれまた高そうなソファ。多分応接室的な部屋なんだろう。
そして片側のソファ前で手を放され座るよう勧められたんで素直にソファへと腰掛けた。座るのを待ってジャムの瓶にストローが刺さったような見た目の飲み物らしいものを置かれ長く話し込める感じの準備が整ってしまった。
「まずは貴方の疑問からお答えしましょうか。急ぎ聞きたい事はありますか」
「あー…色々気になる事はありますけど、此れって何っすかね?なんかドウブツっぽいんですけど」
まず手がおかしいので前に突き出して手を見せつつ聞く。 途中までは普通だけど手首辺りから動物の毛のようなものが生え、指先にはこれまで見慣れていた薄い爪の代わりに猫とか犬の手足で見るような鋭く硬い爪が生えていた。
「そうでした、貴方は元人族でしたね。見た方が早いと思います。そこに姿見があるでしょう?」
元人族。いや、オレ人間なんだけど…と思ってたけど違ったらしい。指差された姿見に映るのは本来耳があったとこにふさふさなオレンジの毛に覆われた耳、黒だった髪もオレンジ色で普段より幼い顔をした黄緑の目をしたオレっぽい物。
ぽっかり口が空いた間抜け面をしてるがところどころ見覚えはあるし、オレが口を閉じるとオレンジのオレも口を閉じたのでぽいじゃなく、オレらしい。尻尾もあった。
「大きな変更は無いそうですが種族は猫人族へ変更。寿命が長い種族なのでそれに合わせて若返ってしまったようですね」
「種族変更は大きな変更だと思います…。レサさんや神官さんがデカイんじゃなかったんすね」
一緒に覗き込むように神官さんが隣に並んだから身長差がよく分かる。頭一個分どころじゃなかった。
「体長133センチのようなので慣れるまで少し不便かもしれません」
背が縮んだ事での不便…まず高いとこに手が届かない。あとは…男の威厳とかそういうのは全くない。道理でレサさんにずっと手を引かれて歩いた訳だ。
でもそれくらいならそんなに問題は無い様な気がした。
「ついでなのでステータスの確認をしてみましょうか。ステータスと思い浮かべてみて下さい」
「あ、はい。おおっ…」
ソファに座り直すと神官さんに言われるままにすると目の前に近未来的モニターみたいな物が現れた。凄いなこれ。
翼ーツバサー
所持金 20000リル
年 20(10)才/ 体長133cm/体重 35㎏
種族 猫人族(元人族)
MP 50000
称号 プレイヤー 獣に愛されし者
スキル 自動翻訳★★ 身体強化★★ 索敵★ 属性開放★ 毒無効★★
ギフト アイテムボックス 導く者
「スキルはなんとなく分かるんですけどギフトって?」
「ギフトとは神様がお贈りになる物です。導く者は…この子です」
「えーと、子猫ですよね?ペット?」
辺りを見回した神官さんが棚に居た掌サイズの真っ白の子猫を抱き上げて差し出して来た。毛並みは短いけどふわふわの毛で当然だけどぬくい。
可愛いけど猫だ。ちなみに気付いてたけどじっとしてたからぬいぐるみだと思ってた。
「ペットはひどいニャ。せめてオトモとかあいぼうといってほしいニャァ」
「しゃべるのかお前…」
「ニャ。ツバサがさみしくないようにナビゲートニャ!」
モン○ンのオトモア○ルーっぽいポジらしい。二足歩行しないけど。
まぁ猫とか動物は好きだし貰っとこうと思う。
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『そもそも要らないって言ったらさ、このチビどうなるのか、とかも
ちょっとだけ考えた』
モ〇ハンも好きです。ネコで戦えるようになって歓喜したBaumです。
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