神様なんて居ないと言っていたら存在を誇示された
Baum
プレイヤーとノンプレイヤーキャラ
『本日未明喧嘩の仲裁に入った男性が殺害されました。容疑者達は…』
「喧嘩止めようとしただけで殺されるとかこわ。神様居るんならこんなん無くしてー」
「バーカ、神様なんか居る訳ねーじゃん」
居酒屋で呑んだ帰り道、電気屋前のテレビで最近人気のアナウンサーが珍しく真面目な顔をして噛まずにニュースを読んでいた。可愛いけどこの子良く噛むんだ。ニュースの内容が入って来やしない。
それに良い感じに酔っ払った友人がケラケラ笑って冗談みたいに手を合わせて言うのでオレも笑って言った。タダ酒飲みに友人と初詣に行きはするがオレ自身は無宗教だし信じてない。
懺悔し祈れば救われるとか鼻で笑ってしまう。ま、これはオレの考えで宗教そのものを否定するわけでもないけどさ。
「困った時の神頼みとか言うじゃんかー」
「はは、困ってたら助けてくれるとかただの良い人かよ。そんなのないって」
友人の言葉に笑ってテレビから離れて歩き出す。一歩、二歩、三歩目で前触れ無く足元が抜けた。
「…は?」
「翼っ」
友人が慌てて手を伸ばそうとしてくれたが足元の真っ暗な穴に落っこちた。直後ブラックアウト…。
飲みすぎて変な夢でも見てるのかもしれない。あの子が噛まないとかやっぱ夢か。
「…ちょっと、ねぇだ…じょうぶ」
「ん…あ、すいません。ちょっと飲みすぎて…」
「良かった、大丈夫みたいね。どこか痛いとこは」
「いや、別に……どこだここ。酔って移動したか?あの、駅ってどっちですか」
女の人の声に起こされたオレは寝起きのまま答える。ひっくり返ったままじゃ悪いと起き上がると女の人が安心したように笑ってくれた。
転んでそのまま寝た訳ではなかったらしくどこも痛くはないが周りの景色がおかしい。街みたいではあるがどこか全体的に建物は小さいし、ビルや電柱がない。
酔って隣街の駅に居たとか終点の駅で降りてたとかはたまにあるからそうなんだろう。駅に行けば帰れると駅の場所を聞くと女の人のが息を呑み驚いたような顔をした。
「あの…なんとも無いし駅が分かれば適当に帰るんで…」
「帰れないわ。ようこそ神様の箱庭へ」
「はい?帰れないって財布も持ってるし電車に乗れば」
オレの言葉に女の人がゆっくり首を振った。手を差し出されたので素直に立ち上がる。
それにしてもオレもそこそこ背はある方だと思ってたけどこの人も背が高い。むしろオレよりある。モデルさんかなんかかな。
肩くらいまでの茶髪にラフな服装だけど、勝ち気な感じの美人だ。目の色が金や琥珀色のように見えるしどちらかというと日本人離れした洋風の顔立ちをしているから外国の人かもしれない。とても日本語上手いけど。
「ここにデンシャやエキという物はないわ。貴方はここの名前を言える?」
「電車止まんないんですか。えーと、酔って適当に辿り着いちまったみたいなんで分かんないですけど終点から歩いたのかも」
「いいえ。言ったでしょう?ここは神様の箱庭。昔は神様の実験所とも言われてたらしいけど、ここは貴方の知る世界じゃないの」
手を差し出されて立ち上がらせてもらったそのまま彼女はオレの手を引いて歩きながら話し出す。手を引かれて歩くとか何年ぶりだろう。というか今オレの知らない世界って言った?話について行けてないオレを置いて彼女の話は続いた。
「稀に貴方のように突然ここに来る人がいるの。そういった人達は神様に試練を課せられてると言われてる。あたし達元々この世界で生まれた者達はNPC。ノンプレイヤーと言われてるわ」
どこに向かってるかは分からない。彼女は歌うように話続ける。
彼女が言うにはこうだ。
・不定期にこれまで居なかった人が現れる
・そいつらはプレイヤーと呼ばれている
・そして神様とやらから試練を課せられてるらしい
・それが何かは本人も知らない
・元の世界とは次元が違うのか帰れた人は居ない
・NPCはそういった試練を課せられてない住人の事
・プレイヤーは死ぬまで試練を自覚しないまま死んでくのがほとんど
プレイヤーとNPCとかゲームかよ、と思ったのが聞き終わったオレの素直な感想だ。
実はまだどっかの道端で寝ていて夢でも見てんじゃないかな。そういうゲームは友人の
「長くなったけど別に構える事も無いわ。帰れないのは残念だけど」
「はぁ…で、一体どこに」
オレが寝てたとこから移動していって街の広場のようなとこも過ぎてまだ歩く。
実験場だか箱庭だかは知らないが元々知らない街なのでどこへ向かっているのかはさっぱりだ。 でもどこも建物はそんなに大きくもなく全体的に可愛い感じの建物だ。
「教会よ。まずは神官様に会うの。神官様はね、これまでのプレイヤーの事を記録していらっしゃるし、唯一神様と接点がある方なの」
それにも実感が沸かず気のない返事をした。実は宗教の勧誘だったりして。
その割にはちょっと設定が大掛かりな気もするけど。
彼女がここだと指差した教会はまぁここのシンボル的なやつらしい。他と比べてでかいし言っちゃ悪いけど金掛かってそうな外観でファンタジー好きの女の子とかが喜びそう。あくまでオレの偏見だけど。
宗教の勧誘ならちょっと…とは思ってもオレの手は彼女にしっかり握られててどうしようもなく、彼女が大きな扉を開けるのを止めれる訳もなかった。
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『教会にちょっと興味がなかったとも言えないしさ』
少し表現が乱暴な部分がありますがあくまでツバサ視点ですので多めに見て
いただけるとありがたいです。
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