第4話 忘れ物

学校に来て気がついたことがある。

今日は毎月1回あるお弁当を持ってくる日。

朝、彩乃さんががんばって作ってくれたお弁当があったのに、彩乃さんとお話していたたらすかり忘れてしまった。

いつものように、微妙に話がズレて長くなってしまったから学校に行く時間ギリギリになってしまったことも理由の一つではあるけど、彩乃さん気にしてなければいいなぁ。

う~ん・・・無理か。


キーンコーンカーンコーン


昼休みを伝えるチャムが学校中に響いた。

月に1回しかないから、忘れた生徒のため靴箱近くに特設の購買ブースが設けられ、お弁当やパンが販売されている。

彩乃さんには悪いけど、今日のお昼は何か買って食べることにしよう。

昼ご飯を買うために席を立つと、廊下がなにやら騒がしい気がする。

半分はなんとなく予想しているけど、もう半分の興味本位でゆっくり教室のドアを開けた。

自分の手のひら程度のスペースを開けたドアの隙間から、廊下に土下座ポーズで固まっている彩乃さんの姿が見えた。


「あ・・・彩乃さん?」


「ぼっちゃま!ぼっちゃま!

大変申し訳ございません。

私の無駄話で時間を削ってしまったことに加え、剰えお弁当を渡し忘れてしまう大失態を犯してしまった私をどうか許していただけませんでしょうか。

許して頂けませんよね。そうですよね。

だって私なんぞがつくったお弁当は、ぼっちゃんのお口に合うわけがありませんもの。

そうです。

不届き者の私が作ったお弁当を、ぼっちゃまがお口にして頂けるなんて、甘い考えをもってここまでやってきましたが、この行為も迷惑そのものでしかありませんよね。

私は失態を重ねて、ぼっちゃまにご迷惑ばかりおかけしてしまいました。

この罪はどうすればよろしいのでしょうか。

今から校庭走りますか?

やはり学校で受ける罰といえば、廊下で永遠に水の入ったバケツを両手に持って直立不動のまま耐え抜くか、足がもげるまで校庭を走り続けるかのどちらかでしかりませんよね。

それだけでは許して頂けないのでしょうか。

それでは、一糸まとわぬ生まれたての姿になり、校庭を足がもげるまで走り続けた方がよろしいでしょうか。

あーーーーーでも、私の醜く汚い裸体をぼっちゃまにお見せするなんて、それこそ罪深い行為です。

私は、どんな罰を受ければよろしいのでしょうか!!!!」


「いや、ありがたくお弁当をいただければ十分です。

ここまで持ってきてくれてありがとう。彩乃さん。」


「ぁはふぅ!!

ぼっちゃまはなんてお優しいのでしょう。

こんなにお優しいぼっちゃんのお世話が出来て、私は幸せモノです。

あーーーーでも私がこんなに幸せであってはいけません。

幸せになって良いはずがありません。

私の心は汚れきっています。

そんな私が通った道全てを掃除して回らなくてはいけません。

さら、今すぐお家を今まで以上にピカピカにしておきますので、許してください!!!!」


勢いよくひとしきりしゃべった彩乃さんは、そのまま突風のように家へ戻っていった。

とりあえず、折角持ってきてくれたのだから、彩乃さんの手作りお弁当を頂きます。

味は絶品、料理がとても上手な彩乃さんは、とても頑張り屋さんです。

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ボクの片思い日記 風見☆渚 @kazami_nagisa

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