火星の夕焼けは青い

 火星は、地球と同じように大気を持つ惑星ですが、太陽が沈む頃の空は赤く染まるのではなく、青くなります。


InSight Images a Sunset on Mars(NASA)

https://www.jpl.nasa.gov/images/pia23202-insight-images-a-sunset-on-mars


 なぜ、こんな現象が起きるのでしょうか?

 それを説明する前に、「なぜ(地球の)空が青いのか」について考えてみましょう。


 「空がこんなに青いのも、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんなわたしが悪いのさ」――たぶん50代以上じゃないと知らないでしょう。昭和の頃のギャグというか言葉遊びです。昔から、空が青いし夕焼けは赤いということは、当たり前の自然現象です。

 空が青いのは、「光の散乱」という現象によるものです。元々、太陽からは幅広い波長の光が放出されています。そのうち、私たち人間が見ることができる光(可視光)全部をまとめると白く見えます(太陽を直接見てはいけません)。空が白くならないのは、太陽光が地表に届くまでに、空中にあるさまざまな粒子(水や塵など)にぶつかって散乱するからです。

 散乱は、次の式で表されます。


 α=πd/λ d:粒子の直径、λ:散乱した光の波長


 αが1よりも非常に小さい(α≪1)場合を「レイリー散乱」、αが1に近い(α≈1)場合を「ミー散乱」と言います。

 日中、空が青く見えるのはレイリー散乱により、波長の短い(約460~500nm)青の光が散乱するためです(波長が短いと散乱しやすい)。遠くの景色が青みがかって見えるのも、同じ原理です。実を言えば、もっとも散乱しやすい光は紫の光(約380~430nm)なのですが、紫の光は弱いうえに人間の目は紫の感度が低く見えにくいのです。

 さて、夕方になって太陽が地平線に近くなると、光が通る大気の厚さが増すと赤い光(約700~780nm)も散乱するようになって赤く見えるのです。ちなみに、雲が白く見えるのは、雲の中の水蒸気や塵が波長よりも大きいためにミー散乱が起きるためです。


 では、火星はどうでしょう?


 火星の大気は、二酸化炭素が主成分で大気圧は地球の1000分の6。海がないため、地球のような気温調整が行われないため、酸化鉄を多く含む地表の砂じんが巻き上げられています。この砂じんの大きさが赤い光の波長に近いために、火星の空は赤く見えるのです。夕方になると、今度は赤い光が目に届く前に散乱してしまい、火星では比較的散乱しにくい青い光が届く――青い夕焼けになるという訳です。


 こうなると、他の惑星における夕焼けはどんな色なのか気になりますね。

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