前のエピソード――24時間働けますか？　―自転とうるう秒

　NASAのSLS、打ち上げが延期されてしましました。ロケットエンジンの不具合が見つかったということで、少し先送りになってしまったけれど、成功率が上がったとポジティブに捉えましょう。

　ロケットの打ち上げでは、予定が延期されることはよくあることです。今回のように何らかの不具合や天候不順などが原因です。そのため、日本では台風シーズンを避けたり、風が強くなる午後の打ち上げを避けたりします。打ち上げ計画率案時には、あらかじめ予備日を設定するなど、余裕も持たせています。それでも、止むなく中止なんてこともありますが。

　ところで、ロケットが打ち上げられる際に『打上ウィンドウ』という言葉を聞いたことがありませんか？　打上ウィンドウとは、ロケットを打ち上げるための時間帯を、空に浮かぶ仮想的な窓として表現したもので、「打上ウィンドウが開いているうちに打ち上げなければならない」などのように使われます。

　たとえば、人工衛星の軌道――日本上空の静止軌道に配置する衛星を打ち上げる場合、効率を考えると最適な打上時間が導き出されます。静止軌道であれば、とりあえず軌道に乗せて、後から日本上空に移動させるという方法もありますが、その分推進剤を使わなければならないので非効率です。まして、月にまで到達しようというSLSの場合には、もっとシビアになります。

　打上ウィンドウは、意外に狭い（つまり打上可能時間が短い）ので、一度打上ウィンドウが閉じてしまうと、再調整は大変なのです。それでなくても、打ち上げる際には航空機への警告や日本の場合には船舶への警告など、やることがたくさんあります。

　裏庭でロケットを作って打ち上げる、なんてことは簡単にはできません。ちなみに、日本では、内閣総理大臣の認可がないと打ち上げられません。