ロケットが飛ぶ仕組み


 スクラムジェットの話をしたので、改めてロケットの話をつらつらと書いていこうと思います。ロケットの話はこれまでにも書いてきたけれど、基本的な「ロケットが飛ぶしくみ」についてはほとんど触れてきませんでした。誰でも知っていることと思ってましたから。でも、そんな思い込みはいけないと思いまして。と、ここまでが前置き。


 ロケットが打ち上がる原理は、ニュートン力学の第三法則「作用・反作用の法則」に則ったものです。二つの質点が相互に力を及ぼすとき、それぞれの質点には同じ大きさで向きが逆の力が働くというもので、簡単に言えば、押した力と同じ力で押し返されるということです。私たちの日常でも、作用・反作用の法則は至る所で目にします。たとえば、人が歩き出そうと地面を蹴るとき、地面から私たち(の脚)に同じだけの力が働いているのです。人間と地面(地球)では、質量に差がありすぎるのであまり実感はできませんが。ほかにも、銃を発射したときに射手が受ける反動も、作用・反作用の法則通りです。


 地面に向かって力を及ぼすと、その反作用で(地球の質量はとても大きいので動いていないように見える)ロケットが飛び上がるということです。


 問題は、ロケットがどのようにして地面に力を及ぼすか、です。ペットボトルロケットの場合、水をペットボトル内に入れた空気の力で押し出します。ただ、ロケットは水では飛びません。何十トン、何百トンもの質量を、水と空気の圧力で飛ばすことはできません。現在の科学力では、何かを燃焼させて下向きに力を放出する方法になります。


 さらに、ロケットの目的と言えば、宇宙空間まで到達すること。いわゆる地球脱出速度(第二宇宙速度)にまで加速しなければなりません。ちなみに、第二宇宙速度は秒速約11.2km(時速40,300km)です。そこまでの速度に到達するために、効率良く燃やさなければなりません。この時の効率は「比推力」で表されます。

 比推力が高く、ロケットの燃料として一般的なのが、液体水素と液体酸素です。この二種を混ぜ合わせて点火すると、爆発的な推力を得ることができます。便利な反面、液体水素は爆発の危険性が高く、ロケット発射直前に慎重に充填してやる必要があります。安全性という面では、固体燃料の方が優れていますが、比推力は液体燃料に劣ります。


 日本のH-2A/Bも、今度打ち上げられるH-3も、メインは液体燃料、補助ロケットは固体燃料が使われています。


 液体燃料や固体燃料以外には、前回紹介したスクラムジェットがあります。また、レーザーをロケット下部に当てて宇宙まで運ぶ「レーザー推進」というアイディアがあります。燃料を搭載する必要がないので、ロケット本体の重量を軽く出来るというメリットがあります。一方、地上側で安定したレーザーを供給する必要があること、打ち上げるだけの出力を得ることが大変なことが挙げられます。雲など天候にも左右されるでしょうし。レーザー推進は、むしろ宇宙空間での推進に利用した方が効率が良さそうです。


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