レールガン開発に見る技術の継承という話
先頃、防衛省の予算にレールガン開発が組み込まれていたことから、「日本がレールガンを本格的に開発へ」などとするニュースが流れました。それに対する反応はさまざまで、中には「アメリカも諦めたのだからオワコン」だとか「実用性に難がある」などといったネガティブなものも散見されます。
レールガンについては、このコラムでも以前書いていますが、防衛省陸上装備研究所で長年にわたって研究開発が進められてきました。昨日今日、沸いて出てきた話ではないということです。そして、ある程度目処がついたからこそ予算をつけたということです。
勘違いしてはいけないのが、一口にレールガンといってもアプローチは複数あって、アメリカが艦艇搭載を目指していたものは大口径、それに対して日本で開発が進められているのは小口径のレールガンです。また、熱の問題を解決するために、防衛省のレールガンでは弾丸部分とアダプタというかスレーブというか別部品に分かれていて、レールを通過する最中にアダプタ部分が融けて蒸発することで熱を放出します。さらに、レールに侵入するまでに初速がつけられることも特徴です。初速は火薬以外の方法になるでしょう。
ロマン兵器とも言えるレールガンですが、一方で実現性が乏しくすでにオワコンという声もあります。私としては、賛同しかねる意見ですね。
ひとつの理由としては、技術という者は単独で存在するものではなく、受け継がれ発展していくものだからです。継続性の重要度が良く分かる事例として、NASAのスペースシャトル計画が上げられます。NASAがロケットからスペースシャトルに移行した際、多くのロケットエンジニアが職を失いました。しばらくしてスペースシャトル計画が破綻、再びロケットを、と考えた時には、エンジニアは民間に流れた後でした。その知識や経験も失われてしまいました。NASAが民間にロケット建造を依頼する背景には、こうした背景もあるのです。アメリカでは民間企業がエンジニアの受け皿になりましたが、日本では難しいでしょうね。
さらに付け加えるなら、たとえレールガン否定論者(そんな人がいるとして)が言うところの、技術的に困難な問題(熱と電力量)で実現ができなかったとしても、レールガン開発によって培われた技術は、十中八九、別の技術に応用され花開くと考えるからです。最近良く耳にする言葉として「スピンイン・スピンアウト」という言葉があります。ひとつの技術から派生した技術が別の役に立つ、兵器の技術開発が私たちの生活に役立つものになるという考え方ですね。これは昔からあって、例を挙げれば枚挙に暇はありません。つまり、レールガン開発は無駄ではないということです。
もうひとつの理由として、防衛省が艦艇から火薬を排除しようとしていることです。火薬は常に爆発の危険性がありますし、攻撃を受けて誘爆する可能性もあります。そうした危険性を排除するため、艦艇の電装化は進められていくはずです。レールガンは、それを大きく後押しするはずです。
技術の継続性、汎用(応用)性、そして安全性の向上といった観点から見れば、無駄に見える研究開発も、実は無駄ではないのだ、というお話でした。
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