質量と重量

 2020年、一発目に何がいいかな? と考えて、やはり初心に立ち返り基本的な話が良いであろうと思いついたのが「質量」と「重量」の話です。


 質量と重量は、よく混同されがちですが明確な違いがあります。簡単に言うと、質量とはその物体が本質的に持っている量であり、どんな場所──宇宙空間であっても地上であっても月面であっても──その量は不変です。一方、重量とは重力環境下における量であり、(重量)=(質量)×(加速度)という公式が成り立ちます。以前のエピソード「体重を軽くするには?(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054886810506)」でもさらっと触れていますが、加速度が異なる環境であれば、重量も異なるわけです。地球上で体重60kgの人が月に行けば、体重は10kgになります。月の重力加速度が、地球の6分の1だからです。体重は変化しても、質量は変わっていません。


 さて、一般的には重量を「kgキログラム」(SI単位系)で表しますが、kgという単位は質量を表す単位なのです。科学や工学における重量は、kgf(キログラム重あるは重量キログラム)で表されます。例えば、「荷重120kgf」というように。日本の工学系教科書では、「kg重」と書かれたものもあります。ただ、近年ではkgfよりも、Nニュートンが使われるようです。1kgf = 9.80665 N です。1Nは、1 kg・m/s^2です。係数の「9.80665」は、地球の標準重力加速度から。9.80665 m/s^2 は1Gと表されます。

 Nは力の単位としても使われるので(というか重量も重力中心方向への力といえますが)、なじみのない人には混乱の元かも知れません。


 さて、重力加速度という言葉を使いましたが、その正体は「引力」です。万有引力の法則で示されているように、質量と質量の間には引力が生じます。たとえば地球上のの人間を考えた場合、人間には地球の引力が働きますが、同時に地球も人間に引っ張られていることになります。ただし、人間の質量に比べて地球の質量があまりに大きく、一方で人間による引力は無視できるほど小さいのです。つまり、人間(に限らず地球上の物体)は、常に地球に引き寄せられている状態です。

 物体に常に力が加わっている時、物体は加速していきます。地球が物体を加速させるから、(地球の)重力加速度と呼ばれるのです。


 さて、地球と人間の間に引力が働くように、人間同士にも引力が働きます。人はそれを“愛”と言います……忘れてください。

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