「つばめ」がギネス記録認定

 JAXAの「つばめ(SLATS)」が、「最も低い地球観測衛星の軌道高度」を記録した衛星としてギネス世界記録に登録されました。


JAXAのプレスリリース

http://www.jaxa.jp/press/2019/12/20191224a_j.html



 従来の地球観測衛星の高度は600~800キロメートルですが、「つばめ」の飛行高度は200~300キロメートルというとても低い軌道です。今回、認定された高度は167.4キロメートル、宇宙との境目とされるカーマンラインが100キロメートルですから、その低さが分かるかと思います。ちなみに、国際宇宙ステーション(ISS)の高度は、400キロメートルで、地上から見ることができます。


 「つばめ」は、ギネス以外にもヤクルトスワローズやJR九州とコラボして、何かと話題が多い衛星ですが、そもそも低い軌道を飛ぶことが目的ではありません。


 高度200~300キロメートルという軌道は、これまで中々利用されることがありませんでした。それは、この位の軌道だと大気の影響を受けてしまうからです。大気の影響を受ける、つまり酸素や窒素などの原子・分子が衛星の機体に衝突し、抵抗を生み出してしまうため速度が落ちてしまうのです。

 低軌道を飛行する際、機体にどのような影響があるのか――たとえば、断熱材として使われるポリイミドに対する酸素の影響がどうなるのか――を調べることが「つばめ」の目的のひとつです。そのために、素材のサンプルを搭載し、それをカメラで撮影することで耐久性や破損具合などを確認します。このデータが、今後の低軌道衛星開発に活かされるはずです。


 「つばめ」は、地球観測衛星としては珍しくイオンエンジンを搭載し、高度が下がるとイオンエンジンで推進し高度を上げる(維持する)方式を採用しています。当然、推進剤を噴射して軌道を変える方式よりもコストアップですから、高い高度を飛行する衛星よりも運用期間が短くなる低軌道衛星がペイするかどうか微妙なところでしょう。

 一方で、低軌道であれば、感度の低いセンサーでも精密な観測が可能になります。JAXAはあまり関係ありませんが、安全保障の世界では「即応型衛星」というニーズがありまして、これは有事の際にすぐ衛星を打ち上げて情報を収集するという目的の衛星で、運用期間はそれほど長くなくてもいいんですね。


 「つばめ」の後がどうなるか分かりませんが、低軌道衛星の費用対効果が十分に見込めるものになれば、低軌道を利用する(運用期間の短い)衛星が多数打ち上げられるようになるのかも知れません。

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