プラスチックはどこへ行く

 中国の廃プラスチック輸入禁止措置によって、環境省がプラスチックを"燃えるゴミ"に分類ウするとか。十年ほど前には、プラスチックを燃やすことで発生する「ダイオキシン」が社会問題になっていました。プラスチックの完全燃焼に対応した焼却炉であれば、ダイオキシンの発生を抑えることができると言われ、近年ではダイオキシンの発生量は減少していると言われています。ホンマかいなあと疑惑の目で見たしまいますが。


 日本では、年間940万トンも廃プラスチックが出るそうです。このうちリサイクル率は約25%、熱回収率が約57%、その他焼却埋め立て等が約18%。ちなみに熱回収率というのは、サーマルリサイクルとも呼ばれる方法で、固体燃料にしたり焼却時の熱を利用して発電したりする方法のことです。溶かしたり分解したりして再利用するマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルと合わせて「日本のリサイクル率は高い」と言う場合もあります。それはちょっと違うなぁと思いますね。


 中国に対しては、年間150万トンも送られていたそうで、それは送り先を東南アジアなどに変更されるそうですが、そんなんで賄えるはずもなく。また、東南アジアでも韓国からの廃プラスチック受け入れを拒否するなどの動きも出ているので、将来、輸出そのものができなくなる可能性も高いでしょう。つまり、自分たちで出した廃プラスチックは、自分たちの国の中で処分しなければならなくなると。当たり前っちゃぁ当たり前ですが。でも、リサイクルするにはやはりコストが掛かるわけで、しかも完全に元の材料と同じにはならないので、使用範囲は限られてきます。


 プラスチックも、突き詰めれば炭素、水素、酸素。これに塩素とかも加わるわけですが、こうした原子レベルに分解できれば、プラスチックごみの問題も解決するかもしれない──と考えて、世界各国で研究が進められています。将来、ある薬品を振りかけるとプラスチックが分解される、なんてことが可能になるかもしれません。

 一方で、そんなに簡単にプラスチックが分解できてしまうと、別の問題が発生します。プラスチックを分解することで、機械や設備を破壊するといったテロリズムに使われるかもしれません。あるいは、プラスチックを溶かす薬品が制御できなくなって、世界中の石油製品を分解してしまう可能性だって否定できません。まさに、そんな石油製品が失われたディストピアを描いたSF作品が『終末のプロメテウス』です。


 プロメテウスはギリシャ神話の神様で、人間に火を与えたエピソードが有名です。火を与えたことで戦争が起きるようになったり、人類が扱いきれない原子力が生まれたりしたのだとする考えもあります。そのため、原子力事故などにもこの名前が引き合いに出されます。本人にしてみたら、いい迷惑だと思いますけどね。


 閑話休題。

 プラスチックの完全分解リサイクルが可能になるとしても、数年内ということはないでしょう。ですが、廃プラスチックは毎年出ます。燃やしても有害物質が(少なくなったとはいえ)出るし、埋め立ては先延ばしでしかない。結局、プラスチックの利用を減らしていくしかないでしょうね。そのためには、多少の不便は我慢しないとね。

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