超音波と赤外線

 先日、テレビで「砂の器」が放送されました。何度目の映像化でしょうか。個人的には、やはり加藤剛、丹波哲郎が出演していた劇場版ですね。いまや千葉県知事となった森田健作も若手刑事の役で出ていました。その「砂の器」、原作は松本清張の小説なのですが、ボリュームのある原作を映画の尺に収めるため、いくつかのイベントがカットされています。そのひとつが「超音波による殺人」です。これまでの映像作品にも登場していないはずです。原作では、超音波殺人にリアリティを持たせるため、犯人を前衛音楽家、電子楽器奏者にしていますが、超音波による殺人そのものがあまりに現実離れしているため、映像作品では犯人を音楽家、殺害方法を撲殺などに変更しています。


 たしかに、超音波で人を殺すことは難しいでしょうね。現在では、暴徒鎮圧用に「音響兵器」というものが作られていますが、これは音で対象の気力を削ぐという方法のようです。「怪奇大作戦」あたりなら、登場しても違和感ありませんが。


 超音波の定義は曖昧で、おおよそ人間の可聴範囲以上、16kHz~20kHz以上の高い周波数を持つ音波の総称として使われています。その利用範囲は結構広く、超音波診断などの測定関連装置、地中探索レーダー、非破壊検査装置などの他、樹脂の部材を溶着する際にも超音波が使われています。

 かつては、テレビリモコンにも利用されていました。昭和世代には懐かしい、サンヨーの「ズバコン」です。今ではリモコンなんて当たり前ですが、当時は「リモコンは果たして必要なのか?」なんて議論もありました。

 テレビCMなどを使って大々的にデビューしたズバコンですが、誤作動が多かったためにいつしか消えてしまいました。ありふれた日常の音でも、高い周波数が含まれているとそれに反応してしまったんですね。実は、超音波よりも先に「光」を使ったリモコンもあったのですが、明暗差を利用したものだったので、こちらも誤作動が非常に多く普及しませんでした。


 現在、家電製品のリモコンは「赤外線」を利用したものが主流となっています。こちらは誤作動もほとんどなく、遠くまで届くので使い勝手が良いのです。また、昔はチャンネル切替、音量上げ下げ、電源オンオフ程度をコントロールできれば十分でしたが、テレビだけを取ってみても機能が増えているため、複雑な(長い)コードの送受信でも誤作動が少ない赤外線が優れているのです。

 将来、すべての家電がネットワークに接続され制御されるようになれば、リモコンはスマートスピーカーに置き換わるのかも知れませんが、それまでにはまだ時間が掛かりそうです。

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