消えてなくなるわけじゃなし
「ステルス」とは、隠密という意味で、簡単に言えば見つからないように行動すること。ネット上では、広告とは思わせない手法で行う「ステルスマーケティング」なんて言葉もありますが、航空機を思い浮かべる人も多いでしょう。「ステルス」なんて、直球の映画もありました(AI搭載のステルス戦闘機が登場するアクション映画です)。SFではない現行のステルス機は、レーダーにまったく映らないのではなく、非常に小さく映るため鳥などと区別がつかなくなるそうです。
そもそも航空機や船舶を発見するためのレーダーは、照射した電波(レーダー波)が対象物にぶつかり反射した、その反射波を受信することで、対象までの距離などを知ることができる装置です。したがって、レーダー波に映らないステルス性を持たせるには、レーダー波を吸収する方法や、受信されないよう乱反射させる方法があります。後者の場合、RCS(Radar cross-section)、レーダー反射断面積が小さくなるような形状になります。米海軍のミサイル艦ズムウォルト級がタンブルホーム型船形なのは、RCSを考慮したことによります。
将来、レーダーにまったく映らない航空機が登場するかもしれませんが、それを打ち破るための技術も研究されています。実は、現在無線LANの機能として、一般家庭でも使われている機能が、ステルス性を打ち破る鍵になるかもしれないのです。
MIMO (multiple-input and multiple-output)という、無線通信の機能をご存じでしょうか? 名前は知らなくても、IEEE 802.11nに準拠した無線ルーターであれば、MIMOが標準機能として搭載されています。MIMOを簡単に説明すると、複数のアンテナから発信した電波を複数のアンテナで受信するしくみです。ある大学の先生は「千手観音のキャッチボール」と喩えていました。
MIMOのように、複数のレーダーアンテナから電波を放射し、反射波を複数のアンテナで受信する。これによって電波を反射する物体であれば、探知する可能性が大きくなるという理屈です。
ただ、この技術の検証にはステルス機能を持った航空機が必要になるので、今のところ日本ではアメリカに協力を頼むしかないのですが、わざわざ自分たち(ステルス戦闘機)の長所をダメにするような技術に果たして協力してくれるでしょうか。なので、日本も早々にステルス機を作りましょう。そうしましょう。
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