コエカタマリンを作ろう

 今回は趣向を変えて、ドラえもんのひみつ道具「コエカタマリン」を作るにはどうしたらいいのか? という思考実験をしてみましょう。


 コエカタマリンは、藤子・F・不二雄のドラえもんに登場する道具のひとつで、これを飲んで声を出すと、出した声がそのまま文字の形をした塊になるというものです。

 もちろん、現在の科学技術でこれを実現するのは不可能ですが、技術は積み重ねです。もしかしたら近い者が出来るかも知れません。少しずつ、出来そうなところから考えてみましょう。


 声は、振動です。コエカタマリンを服用すると、その振動が「塊」つまり実体化します。ですから、まず、振動を実体に変える手段が必要ですね。無から有は生み出せないので、「振動を与えると固まる液体」を仮定しましょう。3Dプリンタなどでは、紫外線で固まる液体や粉が使われています。紫外線による化学反応で硬化するわけで、ならば、振動を与えることで粒子同士の間隔が狭くなり、お互いの引力によって強く結び着けられる――そんな材料です。

 振動は、ありふれた現象なので、簡単に硬化しては困ります。塊を作る直前に硬化するよう二益混合型にするか、ある一定の音量以上でないと反応しない必要があります。使いやすさからすれば後者ですね。

 その振動で固まる液体を、静かに容器に流し込みます。下からスピーカーで振動を与えてやれば、液体は固まりますが、振動によって出来た波紋の形になるでしょう。コエカタマリンは、発した音の形になる必要があるので、発した音に応じて振動させる範囲を変えなくてはなりません。声を一旦、マイクで集音します。音声認識技術で、なんという文字にすれば良いかを判断し、それに合わせて振動させればいいのですが、シャッター機構を使って文字の形に振動を制御するよりも、文字の形に合わせて突起を付きだし、その先端だけ振動するようにした方が簡単でしょう。


 こうして、コエカタマリンを工学的アプローチから作り上げる第一歩を踏み出した訳ですが、ここで「マイクで集音して文字を作るなら光凝固でもいいじゃないか」派が出てきて試作を始めてしまいます。


 ……とまぁ、暑さに脳みそをやられて妄想してしまいました。何が言いたいかっていうと、一見すると不可能に思えても、技術の積み重ねでなんとかなるかもしれない。それが研究開発というものだ、ということです。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る