宇宙の海を進むため
航空機では、プロペラのように空気の流れを作って前に進む方法や、ジェットエンジンのように吸い込んだ空気を圧縮、燃焼させて推力を得る方法がありますが、空気のない宇宙空間では、プロペラもジェットエンジンも役に立たちません。
たとえば、実験用探査機「はやぶさ」で有名になったイオンエンジンは、アルゴンやキセノンをイオン化させ、電圧を掛けることでイオンを加速・放出することで前に進む推進方法です。化学反応を利用するエンジンに比べると、燃費(比推力)は優れていますが、推力は非常に小さくなります。「はやぶさ」のイオンエンジンでは、一円玉を動かす程度で「鼻息のようなもの」と言われています。
こんな小さな推力でも宇宙を飛べるのは、宇宙空間に空気の抵抗がなく重力も小さいからです(重力を利用したスウィングバイについてはそのうち書きましょう)。慣性を妨げるものがない(影響が小さい)ので、小さい推力であっても前に進むことができます。そして、加速を続けることで速度を上げることもできるのです。※前回、慣性の話を書いたのは、これを書くための伏線でしたw
イオンエンジンの仲間である電気推進方式には、ホールスラスタという方式もあります。プラズマ化したキセノンを放出する推進方式で、イオンエンジンよりも大きな推力を得ることができます。今後、日本でも研究が進むと思われます。
化学推進や電気推進以外の推進方法には、
原理は簡単で、太陽から放射されている光やプラズマ、イオンを帆(あるいは鏡)で受け止めて、その反作用で進むというものです。風の力を帆に受けて進むヨットに似ていることから「宇宙ヨット」とも呼ばれています。アイディアとしては古くからありましたが、実証実験に初めて成功したのは、JAXAの「IKAROS」です。ちなみに、IKAROSの研究チームを主導した森先生は、SFコンベンションにも参加する程のSF好きですよ。IKAROSについても、詳しく書きたいですね。
ソーラーセイルは、非常に省エネな推進ですが、到達できるのはせいぜい木星までです(JAXAでは、ソーラーセイルを使った木星探査機を検討中)。そこで、ソーラーセイルをレーザー光で押すというアイディアが生まれました。いわゆるレーザー推進です。ロバート・L・フォワードの「ロシュワールド」にも登場します。
この方式であれば、レーザーが届く範囲なら到達することができます。
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