第9話以外に男前なんですね!

 「それにしてもなづなさんは猫神さまに向かってあんなこと言えるなんてすごいですね」


 「ん?」


 そういえば、なづなはあの生意気な猫が猫神という神様という事を聞いても厳しく当たってましたね。

 なづなは猫神さまのお腹を満たした後、本来の目的であるビルドに向かうことにしました。

 なづなは本来の目的を思い出し、腰を持ち上げると店員さんと功刀の不思議そうにこちらを見ている顔が見えた。


 「二人そろってそんな不思議そうにしてどうしたんですか?」


 「いや、なづなさんっていったいなんなんですか」


 「そうですよ!いったいなんなんですか!」


 こんどは不思議そうな顔から一転して熱い眼差しをなづなに向けていた。


 「なんなんですかってただの駆け出しの魔女ですよー」


 「ほんとうですか~?」


 なぜか功刀がちょっと挑発交じりの口調で聞いてきた。


 「ほんとだってば」


 「ほんとうですか~?」


 「だからほんとだってば」


 しばらくこんな会話が続きました――

 最後には功刀の方が諦めました。


 「わかりました」


 「わかってくれてよかったよ」


 「ここまでして口を割らないのでしたら今度でいいです」


 「もうそれでいいよ」


 ぜんぜんわかっていない功刀になづなはとても疲れて「なんにもわかってないじゃん!」というツッコミを入れる気力もなくなり諦めまじりで答えました。

 この時なづなが改めて理解したのは――功刀ってほんとにアホだな

――でした。

 もちろんアホというのはいいほうの意味です。

 なづなは功刀とのアホな会話をした後にギルドに向かうという本当の目的を思い出しました。

 

 ――次は絶対に邪魔は入らない――


 たしかにそう言えばギルドに向かおうとしているなづなに対してそれを拒む《こば》かのように邪魔が入ってばっかりです。

 このままではなづながほんの目の前にあるギルドにたどり着けなくなってしまう。(ギルドが閉まるという意味で)

 しかし今のなづなにはギルドが閉まってしまうという焦りと共になぜか嬉しさもあった。

 それは何故かと言うと、まだ、なづなは異世界に降り立って一日も立ってないのに困っている人を二人、困っている猫(神様)を一匹助けたからである。神様を一匹、二匹と表していいのか分からないけど。

 人助けというものは悪くないと(気分的に)あらためてなづなは思いました。


 ――よし!そろそろギルドに向かおう――


 バリーンっ!


 お皿を割る音がしました。


 「もーう、またお皿割ったんですか」


 「はい。もう五枚目です」


 そんな陽気な会話が聞こえてきましたがなづなは無視します。

  さぁ、運命の一本道をなづなが歩きます。

 一歩目なにもなし。二歩目もなにもなし。三歩目もなにもなし。四歩目もなにもなし。五歩目もなにもなし。――そして最後の一歩......


 ――今日は人助けをたくさんしたんだからもう邪魔は入りませんように――


 こんな神頼みをなづなはしていました。しかしそんな願いは届かず。

 

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 なづなの悲鳴がビギナー村に響きわたり、思わず尻餅をついてしまいました。しかもかなり大きめのを。


 「ど、どうしたんですか!?」


 やさしい店員さんの慌てた声がなづなの耳に聞こえてきました。 


 「な、なにがあったんですか!?」


 続いて功刀の声もなづなに聞こえました。

 さぁ果たしてなづなが目にしたものとは・・・・・・


 「む、虫がぁーーーーー」


 そこには虫がいたのです。しかもかなり大めの気持ちの悪い光る虫が。おそらくこの大きさのサイズの虫は日本にはいないでしょう。(大きさは数少ない読者の方々の創造におまかせします)この大きなサイズの虫を目の前にくるまで気づかないという事はカメレオンみたいに虹色素胞と呼ばれる細胞が皮膚の奥の方にあってその中にあるナノ結晶というものが働いているのだろう。だから目の前に来るまで気づかなかったのだ。しかも目の前まで来たらいきなり光るという恐怖。

 とても怖いです。

 なづなの虫に対するここまでのおどろっきぷりで店員さんも功刀もさすがに気づきました。なづなは虫がとてもとっても苦手で大っ嫌いだという事を。

 店員さんと功刀がなづなに近寄ると大きな虫をまじまじと見つめていた。


 「あーこの虫はジャイアント・ナノ・ホレオンですね。今このぐらいの涼しい時期ぐらいにたくさん出ますね。しかもこいつらは集団で行動するので一匹いたら周りにもたくさんいると思ったほうがいいですね」


 「解説してないでなんとかしてくださーい!」


 なづなはまたビギナー村に響くような声で叫んだ。が――そんななづなの悲鳴に反応したのかジャイアント・ナノ・ホレオンが次々と集まってきた。


 「叫んでは駄目です。こいつらは音を頼りにして行動してますから」


 「それを早く言ってください」


 なづなは小さな声で言った。


 「ちょっとまっててくださいね」


 「え?あ、一人にしないでくださいよー。あ、そうだ功刀ちゃんは」


 なづなは功刀のほうに目を向けると――功刀は気絶してました。


 ――おまえも駄目なのかぁー!――


 大きな声を出すとジャイアント・ナノ・ホレオンが寄ってくるのでなづなは頭の中でツッコミを入れた。


 「お待たせしました」


 やっと来たと思い店員さんの方に目を向けると店員さんの手には火の付いた松明たいまつが握られていた。

 そんな物でほんとに大丈夫なのかという思考はあっという間に消えてなくなりました。

 そう、店員さんは手に持っていた松明を振り回すとジャイアント・ナノ・ホレオン略してホレオンはみんな逃げて行ったのです。


 「す、すごい......」


 この時なづなは初めてあのとても優しくて泣き虫な店員さんの事を男前だなと感じました。


 「以外に男前なんですね」


 「えっへん。慣れっ子ですから」


 「慣れっ子!?」


 この時なづなは異世界怖っ!と思いました。





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輝きたい私はやがて魔女になる 抹千夜 @kennoo5

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