第8話猫神さまのお腹を満たしてみた!

 「そういえばさ、さっきなで聞ける感じじゃなかったから聞かなかったけどけど功刀ちゃんはどうしてそんな格好してるの?」


 「えーと、それは、可愛いからです!」


 ものすごく功刀らしい答えが返ってきた。

 功刀のこれからの生活が決まったところでなづなはそろそろビギナーレストランをおいとますることにした。


 「それじゃ私、そろそろ帰りますね」


 「あ、はい。またのご来店お待ちしてますね」


 「功刀ちゃんもバイバイ」


 「あの、そういえばまだお名前聞いてませんでした」


 「あ、私の名前はなづな。猫神なづなよ」


 なづなは功刀に自分の名前を伝えビギナーレストランを出ました。

 なづなは外に出てから気づきました。自分も帰る家がないことに。

 どうしよう、どうしようと慌てるなづなの目にギルドが映り込みました。

 

 ――そうだ。ギルドに行けばどうにかなるかも――


 そんな根拠のない期待を胸に込めて。

 なづなはとりあえずギルドに向かうことにしました。

 しかし、今度はビギナーレストランの前に猫がいたのです。首輪を付けた猫が。

 そう、とても可愛い猫が。

 その時のなづなの目はおそらくハートマークになったことでしょう。


 「ニャアニャア」


 「あらーどうしたのかなー?」


 なづなは猫に話しかけてみると――


 「お腹がすいたニャー」


 「うわぁっ!」


 なづなはビックリしておもわず尻餅をついてしまいました。


 「しゃ、喋った?」


 「お腹がすいたニャ。なにか食べ物をくれニャ」


 ――なんだこの猫、生意気だな――


なづなはこの生意気な猫のことを生意気な猫と呼ぶことにしました。


 「お腹がすいたの?」


 「そだとさっきから言ってるだニャ」


 やっぱりこの猫は生意気でむかつきますね。なづなもイラ立ちを隠せません。


 「物を頼むときには態度ってもんがあるでしょ!」


 なづなはちょっと怒り気味で生意気な猫に言った。


 「すまんニャ。ここ最近なにも食べてないから、すこしイライラしてたニャ」


 生意気な猫は意外に素直で根はとてもいい猫のようです。

 最初からそう頼めばいいのにと思うなづな。でも根はいいこの猫の頼みを聞くだけ聞いて叶えないわけにはいけません。


 「わかった。ちょっと待っててね」


 なづなはそう言いまたレストラの中に戻っていきました。ついでに功刀の様子を見るために。まだ別れてからぜんぜん時間がたってないけど。


 ガチャ


 「いらっしゃいませー」


 すると功刀の声が聞こえてきました。


 「うわっ!功刀ちゃんもう働いてたの」


 「はい。一つでも多くこのレストランの力になりたいので」


 「僕は明日からでもいいって言ったんですけどね」


 功刀はものすごく真面目だなとなづなは思いました。でもここで聞きたくなかった知らせが。


 「真面目なのはいいんですけど......もうお皿を四枚も割ってしまってるんですよ」


 このたった数分でお皿を四枚も割ってしまうのはとてつもなく凄いことです。

 なづなは功刀の方に顔を向けると功刀は恥ずかしそうに下を向いていた。


 「ま、本人は真面目にやってるからいいんですけどね」


 やっぱり店員さんは優しいなぁといや、優しすぎるなと改めてなづなは思いました。でもこのまま功刀がお皿を割り続けると、ビギナーレストランのお皿の数がもちませんね。だから功刀にはこれからお皿をなるべく割らないようにしてほしいものです。

 

 「あ、そういえばなにか猫が食べれる物ってありませんか。お金は払いますので」


 「どんな猫ですか?」


 店員さんにそう言われなづなはレストランの外に置いてきた猫をレストランの中に連れ込みました。


 「あのーこんな猫です」


 なづなは猫を抱っこして店員さんに見せました。


 「「そ、その猫はぁぁぁぁー!!」」


 店員さんと功刀が声をそろえて言いました。


 「そ、その首輪あ、あの猫神さまの物じゃないですか!」


 猫神さま?なにそれ。と思うなづなに生意気な猫の声が割って入りました。


 「そうニャ。我こそが猫神ニャ」


 どうやらこの猫はとてつもなくえらい猫らしい。


 「お腹すいたニャ。なんか食べ物くれニャ」


 また生意気な猫に戻ってしまっています。


 「こーら、態度ってもんがあるでしょ」


 なづなは猫神さまにきつく当たります。


 「す、すまんニャ。なんか食べ物をくださいニャ」


 猫神さまは言葉づかいを直し頭をぺこっと下げてもう一度店員さんに頼み直しました。どうやら猫神さまはなづなに弱いようです。


 「うん。いい子。良い子。いや、猫だから違うか。いい猫。いい猫」


 そんな猫神さまとなづなの会話キャッチボールを店員さんと功刀は不思議そうな顔で見ていました。

 それもそのはづだってなづなが普通に話している相手は神なのだから。


 「店員さんなんか食べ物を持ってきてくれますか?」


 「あ、あ、はい。少々お待ちください」


 店員さんはそう言い、キッチンに走って行った。


 「な、なづなさん貴女はいったい何者なんですか?」


 不思議そうに功刀が訪ねてきた。


 「何者って、ただの魔女よ」


 なづなは功刀の質問に対してあっさりと答えた。

 嘘はついてない。ただの元日本人で今は異世界で魔女をやってるものだ。


 「は、はぁ......」


 功刀はちょっと呆れた顔をしていた。

 そんな会話をしていると店員さんがお皿に火の通した魚を載せてやってきた。


 「はは。これをどうぞ」


 「ありがとニャ」


 今度はちゃんとぜんぜん生意気じゃない感じでお礼が言えた。


 ムシャムシャ。


 猫神さまは火の通した魚を食べると――


 「ありがとニャ。また会える日を楽しみにしてるニャ」


 そう言い残して消えていった。


 「それにしてもなづなさんは猫神さまに向かってあんなこと言えるなんてすごいですね」


 「ん?」


そういえば、なづなはあの生意気な猫が猫神という神様ということを聞いても厳しく当たっていましたね。








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