第7話功刀ちゃんがしばらく働きます!

 「二人とも感謝感激です!!」


 そう言って女の子は立って一礼して見せた。

 礼儀正しい子だ。


 「あっ」


 店員さんはやっぱり号泣していた。

 店員さんらしいといえば店員さんらしいな。

 そういえばさっきまで女の子が痩せ細っていたせいか今、よく女の子を見ると可愛いな。日本の中学校や高校に居たら間違えなくモテそうだ。スタイルいいし顔は間違いなく美人だし。

 しかし女の子が身に着けている服装は今まで見た事が無い。上の服は袖がぽっかり開いた着物を身に着けていて、下はミニスカートに黒のニーソで下駄を履いていて、腰に二本の刀が武装されていた。和と洋のバランスはごちゃ混ぜだけどなぜか女の子には似合っていた。


 「このご恩は一生忘れません」


 「こちらこそ貴女が元気になってよかったです」


 店員さんが本心でそう言ってるのがなづなにはわかった。なづなも店員さんと同様心の底から元気になってよかったとそう思っている。人助けってこんなにも心が愉快になるなんて。

 女の子が元気になった今、女の子に聞きたいことがなづなにはあった。


 「ねーねー」


 なづなはそう言い女の子の肩をポンポンと叩いた。


 「はい。なんでしょう」


 「貴女の名前はなに?」


 「あっ、申し遅れました。重文殊功刀くぬぎといいます」


 ――まさかの僕っ子かよ!――


 名前を聞いたところで気になることがたくさんあるので質問タイムに入る。


 「功刀ちゃんの家族とか親戚とか友達は一緒じゃないの?」


 「いいえ。一人できました」


 「功刀ちゃんはじゃぁ、どこから来たの?」


 「ジャパンという和の国から来ました」


 ジャパンという和の国?ん?もう日本じゃないか。


 「えぇー!?あのジャパンから一人で来たんですか!?」


 そこに店員さんが割って入ってきた。店員さんの口ぶりからしてここからジャパンは相当距離があるらしい。

 なづなはまた気になる事が出来た。


 「そういえばなんで一人なの?」


 「ジャパンには『可愛い子には旅をさせよ』ということわざがあってそれに習って親が旅してきなさいって」


 ――そのことわざ知ってます――


 本当にそのことわざにならって旅させる親なんているんだとなづなは実感した。ていうかそうなると功刀の親は自分の娘が可愛いと思っていることになるな。まっそれもそうか。だってこの女の子とてつもなく可愛いし。


 「その腰に身に着けてる刀はなんなの?」


 「あっこれは天之尾羽張あめのおはばり天羽久斬あまのはばぎりという刀です。旅を始める前に何年もお金を貯めて父から買い取りました」


 ――なんかめっちゃかっこいい刀きたー!――


 「そして余ったお金で鍛冶職人に綺麗にしてもらいました」


 「へぇーちょっと触ってもいい?」


 そう言いながらなづなは手を刀の方へと伸ばした。


 「あっ!駄目で――」


 功刀の発した言葉はなづなが刀を触るのよりもすこし遅かった。


 ビリビリ!!!!!!!


 なづなが刀に触れた瞬間、稲妻いなずまがレストラン店内にほとばしった。


 「伏せてください!!」


 功刀の言葉でみんなとっさに伏せた。



 しばらくすると稲妻はやんだ。


 「この刀は重文殊じゅうもんじゅ一族以外が触れると稲妻が発生してしまうのです」


 「ご、ごめんなさい」


 知らなかったといへ大変失礼なことをしてしまったのできちんとなづなは謝罪をした。


 「あやーでもよかったです。


 「え?死ぬんですか」

 

 「あっ、はい。実際には見た事ないですけど稲妻に打たれて死んだ人いるらしいですよ」


 ――え!?怖っ!!――


 もう二度と触れないでおこうとなづなは心の中で硬く決心した。


 「え、じゃぁ鍛冶職人の人はどうなったの?」


 「あの鍛冶職人はとってもタフでマッチョですから稲妻を身体で受けても大丈夫でした」


 「タフすぎんだろ!」


 思わずツッコンでしまった。本日、何回目だろうなとなづなは自分の頭の中で数えた。


 「あっ、いけない!」


 「ど、どしたの?」


 なづなは急に功刀くぬぎが叫んだのですごくびっくりした。誰でも急に周りの人が叫んだらびっくりするだろう。


 「もうこんな時間!?宿とらなくちゃ!」


 なづなはという単語に敏感に反応し、なづな自身も家に帰らなくてはいけないという事を思い出した。(なづなに今は家なんてないけど)


 「お会計お願いします!」


 「あ、はい」


 店員さんは自分の涙を袖で拭いレジに向かった。


 「三百エナのチャーハンが五皿で千五百エナになります」


 功刀は着物の袖から財布を取り出した。

 おや?なにやら様子がおかしいぞ。功刀の顔が青ざめていた。


 「......あ......財布の中身が空っぽですっ!!」


 どうやら事情を聴くと刀を親から買い取った時に全部お金を後先考えずに使ったらしい。まったくバカな子だ。

 これに関しては優しすぎる店員さんの顔も困った表情になっていた。


 「ど、どどどどうしましょー」


 功刀は慌てた口調で言っていた。


 なづなは功刀の慌てている様子を見てなにかいい案はないかと自分の頭の中で必死に考えて考えて考えぬいた案がこれだ。


 「いっそうの事ここで元が取れるまで働いたら?」


 「それですぅ!!」


 なづなは功刀と少し話しただけで分かった。


 ――この子、天然で元気っ子だな――


 「そ、そんな結構ですよ。わたしは人助けできただけで結構ですから。それに貴女の笑顔が見れましたし」


 ――やっぱり店員さん優しすぎる!――


 「だめなんです!それじゃぁ僕のプライドがよるさないんです!!」


 功刀はなんども店員さんに自分のプライドを押し付けた。その結果――


 「それじゃぁ少しの間ここで働いてもらいますね」


 「はい!よろしくおねがいします!」


 それにしても二人ともなづなが最初であった時より元気になってよかったなと心の中で思った。


 「そういえばさ、さっきまで聞ける感じじゃなかったから聞かなかったけど功刀ちゃんはどうしてそんな格好してるの?」


 聞いてから思ったが別に聞かなくてもよかったんじゃないかとなづなは思った。けれでも聞いてしっまたからには答えが返ってきた。


 「えーと、それは、可愛いからです!」


 ものすごく功刀らしい答えが返ってきた。












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