第2話『あたしは家がラブホみたいな感じですね~』
No.8『嫁とメイドさんは別腹』
社会不適合者日本代表。およそ誇れるような肩書きではない。だけど俺はそれを自分から、さも誇らしいように口にするようにしている。
決してやせ我慢や皮肉、自虐の類ではない。俺はこの称号を中学生卒業間近に付けてもらったのだ。そしてその付けてくれたヤツを、付けてくれたヤツの愛するものをいつかぶっ殺してやるために、俺はこれをいつまでも口にするだろう。
△▼△▼△
そうそう。夫婦島を登校させることが出来たって校長に報告に行ったら普通に感謝されて驚いたんだよな。俺の中であの人って金の亡者で面倒ごとを弱みを握った生徒に押し付けるクズゲス女だったからさ、めちゃめちゃビビった。
それからこの一週間、マジで何もない状態が続いている。校長に呼び出されることもなく平穏にぼっちを満喫。もうこのまま何もなく平和に卒業できねぇかなぁとか思ったりもするが……。
そんな願いが叶うはずないわけで。またあの時同様、放課後に放送が流れた。
『二年六組の
うわぁ……ついに来たか。俺はチラッと
俺もその後に続こうと立ち上がると……なんか背中に視線を感じる。首を少しだけ回し、黒目を動かして背後を確認。
俺の方を見ていたのは、例のなんとか君じゃなくて
……何を考えてるかは何となく分かる。俺みたいなぼっちのクラスのゴミが春夏秋冬と関わってんじゃねぇよ的なことだろう。目で悪意と敵意出しすぎなんだよなぁ。
ま、俺はそんなの気にしないがな。知らないフリ知らないフリ。
△▼△▼△
校長室に入ると、先に行っていた
「あ、
「……なんでお前いんの?」
「彼は今日一日ずっとここにいたからね」
「は? じゃあ授業受けてねぇの?」
「そりゃずっとここいたっすから」
いやそんな当たり前だろみたいな顔されても困るんだけど。
「お前この前メイドさんに言ってたじゃねぇか。ちゃんと勉強してみんなの誇れるご主人様になるって」
「それはそうっすけど〜。僕、やっぱ入学式から一度もクラスに顔見せたことないじゃないっすかぁ」
「……うん」
「だからクラスに馴染めるか不安になっちゃったんすよね!」
なんだコイツ。あれだけ悩みもないから学校に通うくらいは出来る、ただめんどいだけ、みたいな雰囲気醸し出してた割には普通に不登校生の悩み持ってんじゃん。
「なるほど。じゃあんたはメイドさんを裏切ったわけね」
「まぁ僕にはメイドさん以外にもたくさんの嫁さんがいますっから!」
「は、待て待て。お前二次元厨じゃなくなったんじゃねぇのかよ」
「いやいや僕一度もそんなこと言ってないっすよ! 今でも二次元大好きアニメ大好きっす。嫁とメイドさんは別腹っすよ!!」
「「キモい……」」
夫婦島の発言に俺と
結局人間性ってのはそうそう変わるもんじゃないってことなのか。二次元キャラ好きは根っからあるものだから捨てられないようだ。
「ふむ、結構君たち仲良いようだね。これから共に活動するにあたってやりやすくていいだろう」
「はぁ!? 共に活動ってどういうことですか!」
「言った通りさ。夫婦島くんにも君たち同様にわたしの面倒ごとを解決してもらうことになったんだよ」
「そういうことで、よろしくおなしゃっす!」
ペコっとお辞儀しようとしたが腹の肉が邪魔で浅い礼になっている夫婦島。このキャラでデブって、イジりポイント多過ぎかよ。
「なんの弱みを握られたか聞いていいか?」
「弱みっていうか、条件付きっす」
「条件?」
「うす。教室じゃなくてここに登校して来ていいけど、代わりにパイセンたちのことを手伝えって」
「ほーん、なるほどな」
「先生、このデブいらないですー。穢谷だけでも一緒にいるの嫌だってのに、キモオタも付いてくるとか先生悪趣味なんですけどー」
「かぁ〜! 相変わらず春夏秋冬パイセン辛辣っすね〜!」
「黙れ腐れ童貞」
夫婦島かー、コイツ使い物にならなそうだなー。それにしても春夏秋冬、嫌がりすぎだろ。さすがの夫婦島も泣くぞ。
「あとせんせー! 放送で穢谷と一緒に呼ぶのやめてください!」
「なんでー? 君と穢谷くんは一緒のクラスなんだし、ひとりひとり別々で放送するのもアホくさいじゃないか」
「私がコイツと何か関係があるって思われたくないんです! 先生コイツのクラスでの立ち位置知ってるでしょ。陰キャ通り越してクラスのゴミなんですよ」
「おいコラてめぇ、黙って聞いてりゃボロカス言いやがって……!」
「何よ、事実じゃない! あんた死んだ方が社会のためになるわよ。今すぐ家に帰って楽になれば?」
「うっせバカ死ねっ。目ぇ潰すぞ」
「まぁまぁまぁまぁ、落ち着きたまえ」
ニヤニヤと作り物みたいな笑顔を崩さず、校長が間に割って入って来た。そして今日呼んだ本題について話し始める。
「君たち二人の口論をもう少し楽しみたいところだが、今日は時間があまりない。本題に入らせてもらうよ?」
「はぁ、はいはい。今度はどんな面倒ごとですか? どうせまたこのキモデブみたいなクズがいるんでしょ?」
「おぉ、最初はわたしに対して『どんなご用件ですか?』なんて言うくらい超低姿勢だったくせに、今やタメ口かいw」
「まぁそれは今はどうでもいい。今回君たちに頼みたいのは、実は面倒ごとではない」
「面倒ごとじゃないって……じゃ、なんで俺ら呼ばれたんすか」
「実はね、うちの学校に……
「援交!? それって金払ってヤるヤツっすよね!」
「食い付きすげぇなお前」
目ぇキラキラしてんじゃん。童貞こじらせすぎだろ。
しかし援交をしている人間が近くにいるという事実に少し浮ついた気分になってしまうのも分からんではない。
正式には援助交際、別名ウリ。いわゆる売春と呼ばれる類のものだ。つまり性行為……セックスをするわけで。
多感な男子高校生が反応しないわけがないのだ。
「そこで、今回はその子が援交をしている確実な証拠、つまり写真を撮って来て欲しいんだ! 是非よろしく頼んだよぉ!」
何故だか知らんが、
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