第6話私の宝石

あなたの病室を訪れると、そこには1本の木がそびえ立っていた。

その、真ん中には緑のあの石があった。

今すぐ抱きしめに行きたかった。

けれども私にも時間が無いみたいだ。

せめて、あの人のそばで…。

私は逝きたい。

もし、死後の世界があるならそこで会いましょう。

二人で一緒にお茶しましょう

ああ、あと、もう少し。

お願い、私をそこに…





医者は2人の姿を見た時に涙を流した。

2人はとても美しい姿になっていた。

緑色に透き通るからだを持つ少女を抱きしめ、キスをする様な姿で固まっている木の形をした男が、無機物としてそこに居た。

こんなに残虐な病気はあるのか?

美しくなる病気以上に美しい彼らをもう少し研究して、治したかった。

この世で結ばれて欲しかった。

そんな願いが医者や親達の心を苦しくさせた。

2人は燃やされることは無かった。

ただ静かにとある森の片隅に祀られるように置かれていた。

ここには彼ら以外来ることは無い。

だからここは彼らの楽園だ。

どうかあの世でも二人でにこやかに過ごしていることを誰もが祈った。


彼らは今でもこの世界のどこかで眠っているらしい。

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高嶺の花より洞窟の宝石の方が美しい 五月雨 @MaizakuraINARI

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