本編 ――ワタシの書き方――

カクヨムの書き方


 小説なり、詩でも創作論でも、何かを書こうとするとき、多くの方は「こんなことを書きたい!」という思いがあって書き始めるのではないでしょうか。

「異世界でチートする話を書こう!」

「学園モノでキュンキュンする恋愛がいいかな」

「バトルシーン満載の格闘系でいってみよう」などなど。


 そういう積極的な思いがなく、何か「あっ、これは」と感性に触れたときに書き始める、というのが私の書き方です。

 作家になりたい、という強い思いがあるわけではなく、受け身でありながら書くことを楽しんでいるので(^^;)、ほとんどの作品が自主企画への参加により生まれたもの。与えられたテーマに対し、インスピレーションが湧いたなら、次のステップ、実際に書く作業に移ります。



 おおまかなプロットとオチ(というかエンディング)だけは書く前に頭の中で整理。電車に乗っていても、ランチに行って待っている時間でも、考えることはいつでもできるから、有効に使っています。

 ノートに書いたりメモしたりという作業は行わないことがほとんどですが、長編の場合は思いついたことを忘れないように、カクヨムでメモページ(下書きのまま公開しない)を作りそこに書き留めておきます。そうすれば、全体を見直さなくても話の齟齬が生じないようにできると思います。


 常に意識しているのは「何を伝えたいのか」ということ。

 当たり前かもしれませんが、それがブレてしまって、話が散逸している作品も見受けられます。「展開が読めない、予測不能の面白さ」と評価される方もいるけれど、そこは好みの問題で、私はあまり……。

 「読み手によって色々な解釈ができる」を目指すならば、いくつかの意味にとれる語句を用いる、あいまいな表現を多用する、ミスリードする(限定的な表現で、読み手の意識を誘導する。例えば、文中で「俺」と自称していた主人公が実は女性だったとか)など、それなりの書き方があるはずです。


 導入部には気を使いますが、書いている間は起承転結をほとんど意識せず、伝えたいことと「どのようにエンディングへもっていくか」に注力しています。

 「エタる」という言葉を最近知りましたが(^^;)、勢いで書き始めると未完のまま終わってしまうことが多いのかもしれません。

 一つの作品としてまとめ上げる、ということはとても大切だと思います。たとえ途中で横道にそれたとしても、エンディングを早い段階で考えておくことは完結させる方法として非常に有効です。


 もちろん、書いている途中で「こんな風に変えよう」とエンディングを変更する案が生まれてくることもあるでしょう。それでも、終わりを意識して書く場合と、そうでない場合では、作品のとして違いが表れます。

 目的地が決まっていれば、途中はどんなルートを通ったとしても、そこへ向かって進んで行けばいいわけですから。

 がはっきりとした作品は、そのを好む読者へアピールすることにもなるはずです。

「書き始めても、いつも途中でやめてしまう」

「一、二話はPVも多いけれど、三話以降は急激に減っちゃう」

 といった方は、ぜひエンディングを意識して書いてみてはいかがでしょうか。



 ミスリードを意識しながらエンディングを途中で変えたものとして、(あまり良い例ではありませんが)「父への土産(みやげ)」という作品があります。https://kakuyomu.jp/works/1177354054884906827/episodes/1177354054884907343

 異世界ものが流行っているので、異世界転生の導入……と思わせておいて、「伊勢かいっ!」というオチを考えていた話です。



 偉そうなことを言っていますが、カクヨムでは新参者なので自分への戒めも含めて書いてみました。

 実は、このような書き方は小説ではなく、主に講演やプレゼンテーションで使ってきた手法です。プレゼンでは相手に対して「何を伝えるのか」「どうやって伝えるか」が問われます。

 受け手の全てに思いが届くことはなくても、誰かに響くことが評価に繋がるのです。

 いくら話の掴みが面白くても、何を言いたいのかが伝わらなければ評価されません。掴みがダメだと、話すらまともに聞いてもらえない、ということもありますけどね。


 そこで、最も大切だと思うのは推敲です。

 一度書き上げた文章を、読む立場になって何度も目を通す。書いているときには当たり前だと思っていることも、読む立場では何のことだか分からない、なんてことも少なくありません。

 誤字はもちろんのこと、「てにおは」や「はがも」の使い分け、重複表現のチェックや「この表現で相手に伝わるのか?」といった自問は、文章力を高める上でも効果的なはずです。


 また、横書きのWEB小説ならではのポイントとして、行間の取り方も意識しています。改行するか否か、一行空けるのか二行にするのか、推敲の際には何案か試しながら、読みやすさや話の展開などを考慮して決めています。

 ちなみに、私は書き上げた後に数日おいてから公開するようにしています。その間に何回か読み直して、表現の修正や加筆などを行います。それであの程度か、と言われるとお恥ずかしい限りですが(^^;)。


 最初の読者は自分自身です。

 書き手としてだけではなく、読み手としても作品に向き合うことで、書いた時には気づかないことも、時間をおいて気づくことが多くあります。

 自分の作品に対し、優しくも厳しい読者になってみてください。

 


 そう言っておきながら、書いたその日のうちに公開しちゃいました。

(というオチでした。推敲は時間を空けて三回しましたが)

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