ホライゾンに至るテーマの変遷:完結編

「今回の話は、ホライゾンに至る作品のテーマの遷移と、作品のテーマとは何だろうね的なことを……、って何度言ってるんですかねコレ。ともあれテーマ編最終回? そんな話ですね」


「さて前回、何処まで行きましたっけ」


「アンタが言うんか……」


「いや、たまにはそういう振りを」


「じゃあ前回は武蔵村山の高校で吉野家研の中井・潔と律・昌が松屋に入るかどうかで揉めてる上空120キロの位置で残虐ウッカリ星人エリエールとアリエールのコンビが宇宙花粉にやられてウッカリ地球破壊爆弾の投下スイッチを押してしまって国連代表が発射台に乗った処まで」


「それ多分間違い無くつまらないと思うんだけど作画だけは良いヤツですよね」


「凄くそんな気がするわね」


「じゃあ前回の続きです」


「振りだけやって行くのね? そうなのね?」


「まあそんな感じで、前回、都市を書いていたら都市用のテーマに満足してしまい? ちょっと書くモチベーションがズレたとか、そんな話でした」


「そうそう。自分がいろいろ抱いていた疑問が解消されたのに、そのテーマを引き続き書くのってどうなのよ、ってそういう話」


「で? どうしたんです?」


「ええ。これはもう、他の諸要素含みで、都市を一区切りするべきだと思ったの」


「担当さんはどう判断したんです?」


「担当さんとしては、もう少し都市を行きたかったらしいのね。実際、紐育とか企画は出していたものね。

 だけどモチベーション的な理由を話して、次に書こうとしてるネタの企画書とか話をしたら俄然”良いですねソレ!”ってなって」


「アー、それがつまり……」


「そう、クロニクル」


「えーと、いろいろあると思いますが、テーマに話を絞っていきましょう」


「そうね。都市はとりあえずSfとTOKYOを走らせると言うことで、並行してクロニクルをスタートすることとしたのね」


「とりあえずいつでも都市に戻れる感ありますね」


「保険も含めて、という感覚あるわよね。

 ――で、クロニクルのテーマだけど」


「ハイ、何でしょう」


「――初心に戻る」


「ンンン!? いきなりどういう?」


「いや、ぶっちゃけ数年いろいろ書いてきて、特に都市は文体とかギミックとかいろいろ仕込んで遊んだ一方で、”そっちの作家”って見られ始めて、チョイ思案だったのね」


「アー、そうなってしまうと、それ以外を書くと何故か評価低くされますよね……」


「読者の期待値評価と、作品の絶対的評価は別なんだけど、読者は自分の期待値評価で見るものね。

 だからいろいろ覚悟を決めようと、そう思ったの」


「それは一体?」


「これまでの読者を全部捨てるつもりで書く」


「初心に戻るってのは、まずそういうことよね。実際はそうならないのは確かだけど、そのくらいのつもりでやらなければゼロスタートだった頃の自分は取り戻せないわ」


「ええと? だとすると……」


「ええ。つまりテーマも初期に戻す訳。アクティブなテーマとして、主人公は連射王と同様に”本気”に関するものとする」


「連射王なんですね……!」


「うん。

 連射王を書いた頃は自分の基礎が長編TOKYOにあったんだけど、都市をいろいろ書いていると、やはり自分の”今に直結する自覚”の部分は連射王で揃った感あったのね。

 それとTOKYOは並行連載していたから、そうなると連射王。

 クロニクルは原版が出来ているし、失敗しないための防御策をとったとも言えるわ」


「保守的になりました?」


「その恐れもあるから、”本気”についての扱いを連射王よりも一歩進ませたの」



・連射王:自分は本気になれる人間だろうか

・クロニクル:自分が本気になれるものはあるのだろうか


「アー……。テーマ的には、クロニクルは連射王の”次”なんですね……」


「そう。クロニクルの佐山は”本気になれる人間”で、しかし負傷などによって、その行き先を失ってるの。

 連射王の高村の、ひょっとしたら未来の姿かもしれないのね」


「あと、都市を経たからこそ、やはりいくつかの疑問も出てきたから、それについてもテーマとして考えよう、と思ったの」


「? 何です?」


「うん。困難に対し、人間は可能性をもって諦めず、抵抗するとした場合、じゃあ、そこの原動力って何なの?」


「ンンンン? いきなり難しくなりました?」


「ええ。”都市を経た”ものね。登山で言えば麓から山道に入ったようなものよ」


「アー、確かに」


「だけどまあ、都市であれだけ”可能性”の物語をやってきて、それを信じられるようになった訳だけど、”可能性”があればいい訳じゃないのよね。

 何故、人は、行動するのかしら。

 それも善であったり悪であったり、賢かったり愚かしかったり様々じゃない?

 色々書いていて、各キャラクターが自分なりの”可能性”として、出来る事を果たして来たけど、その決断と行動を決めたのは何かしら?」


「まあ、先に結論を言ってしまうと、”理性と感情”があり、そこから行動が生まれるが、それらを統御するのが”意思”であると、そういうことね」


「アー、作中でもありましたね」


「そう。感情をもって行動する相手に対し、理性では抑え込めないとして、だからその両方を受け入れたものを意思とする。

 それを、数多くあった争いや衝突の”答え”として、全竜交渉はその方向性を確かにするの」


「……テーマという意味では、クロニクルは完走した感あります?」


「アー、細かい部分はまた別で書くけど、いろいろ問題も出て来て、かなり自分の作り方とか見直すことになったわね」


「大長編と言って良いスケールでしたからね……」


「ちなみにここらへん、以前に作った同人誌でチョイ語ったけど、いやホント、今書き直したらいろいろ変わる箇所あるわよ。方法論が先に立ってる処がかなりあるし。

 そこらへんも、いずれ話していきたい処ね」


「さて、クロニクルが終わった後、連射王が来ましたね」


「テーマとしては先に語った通りよね。でも都市やクロニクルを通したお陰で、”本気”の書き方もかなり解ったから、大体において全面改稿してんのよね」


「久し振りの連射王はどうでしたか」


「何かもう、抜き身の刃物みたいなものだから、敢えてそれを隠さずに仕上げてみたわ。テーマもアクティブなものを表に出してね。

 刀身がギラついてるな、と思ったら刺さって抜けなくなってる、みたいな作りにしてあるのよね」


「元々は電撃の一般文芸(ハードカバー)用の作品ですからね」


「でもこのタイミングで連射王を出せたのは良かったわ。自分のテーマを自覚したタイトルを見直すことで、大きなリセットというか、区切りがついたから」


「区切り?」


「ええ。都市を経て、クロニクルを経て、”可能性”と”感情と理性・意思”に、自分なりの答えを見たのよね」


「つまり人間の”可能性”を確信した上で、”可能性を果たす行動に至る理由”を見つけた訳ですよね?」


「まあ、自分の作品通してだから、現実はどうだとか、そういうのあるけどね。でもそれも、やったヤツじゃないと言えない事だから、やった私としては問題ないの。

 他の誰かに”オマエのやったことは自己満足だ”って言われても、アンタの人生は私がここまで使った時間と書いたページ数を上回れるの? って、そういう話」


「まあホントに無駄な時間を費やしてきましたもんね」


「無駄とか言わない……!」


「ですけど、何が”区切り”なんです?」


「うん。大長編と言って良いクロニクルを書いたあとで、長編としての連射王を書いたことで、解った技術があったの」


「それは?」


「私が持っている一部のテーマは、長編に向いているが、大長編には向いていない」


「ンンン? どういうことです?」


「簡単な事よ。”何かになる”というテーマがあったとして、じゃあそれを主人公に与えた場合、大長編の中、どこまで引っ張れるの?」


「アー……」


「そう。つまり”答えを出す”タイプのテーマや”何かになる”タイプのテーマは、大長編においてそのまま使うと間延びしてしまうの」


「クロニクルを書いていて”あ”と思ったことが、連射王を書いたときには生じなかったのね。

 つまり私のテーマには、用途に応じては向き不向きがある。

 そのことが解ったならば、次の大物に対してどうするか、という話よ」


「アー、遂に来ますねホライゾン!」


「そういうこと。

 要するに、ホライゾンの準備に必要なのは、設定とプロットだけじゃなかったのね」



・テーマを、大長編用に再構築しなければならない。


「何かどうしようもない自己満足の作業なのに、大きく出ましたね!」


「でもコレやっとかないと、途中でマンネリとかワンパとか言われるものね」


「じゃあ、どのようにしたんです?」


「ええ。テーマを単独的、複合的、階層的、また可変的かつ無限性を考えることにしたの」


「単独的、複合的、階層的、可変的に、無限性……?」


「こういうことだと思っていいわよ?」



・単独的

 :これまでのように、1キャラ1テーマを置く。

・複合的

 :複数キャラで一つのテーマを作り上げるようにする。

 :1キャラが複数テーマを持つことも有るものとする。

・階層的

 :全てのテーマを並列にするのではなく、あるテーマの原動力となるテーマを深層に置き、複数キャラや世界の統一テーマとする。

・可変的

 :全てのテーマは結論を出したとしてもまた次の疑問、課題が発生するようにする。

・無限性

 :階層的テーマに置いて、深層のテーマは全世代共通の無限性あるテーマとする。


「結構ありますね……!」


「そうね。

 連射王や都市は基本的に単独的テーマ。

 クロニクルは単独的テーマの他、一階層下に”理性と感情・意思”があったのね。

 だからクロニクルを書いて連射王を書いた際、テーマの差が持つ意味を理解したんだけど、ホライゾンではそこを自覚的に組んでみた訳」


「どれが大事ですか?」


「全部大事と言いたいけど、”可変的テーマ”を提示したのは、恐らく私が初じゃないかしら。テーマが作中で変化するなんて、新展開とかで路線変更したりしない限り、後天的にしか発生しないものね。そして――」


「そして?」


「可変的テーマという概念を持ったからこそ、ホライゾンは大長編でもマンネリにならず、しかしそれ以外のテーマによって骨太の空気感が入った作りになってるの」


「言い切りますね!」


「いや、だって、そうなるように作ってあるもの。あとは読者の好みに合うかどうかだけよね」


「ともあれちょっとホライゾンのテーマとして、何が何なのか、解説を」


「まあ大体こんな感じよね」



・単独的

 :それこそキャラの数だけ持っている。

  :”何かになる”ことや”何かを為そう”というものが主。

・複合的

 :トーリとホライゾンを核とした他キャラクターとの関係。

  :トーリとホライゾンは他者の単独テーマによって王になり、感情を戻す。

  :トーリとホライゾンは、他の単独テーマの中心でもある。

 :各国、組織、世界自体も、多くの人々や組織の複合テーマによる目標を持つ。

・階層的

 :”可能性”と”感情と理性・意思”。

  ”人”がこれらを行い、果たすという、その事実が表層のテーマ。

 :深層において、では”人”とは、何によって”人”として作られ、生まれるか。

 ※無限性の項目で解説

・可変性

 :全てのテーマは、それを超えた処で次の状況に”入る”。


「……と、無限性について語る前に、ここまででも結構面白いでしょ」


「トーリ君とホライゾンが”何もしない”のに主人公であって、それでいて皆の中心にいるのは、”複合的テーマ”の中心だからなんですね!?」


「そう。これまでの作品では、”何かになる”主人公が、自分でその問題をクリアして行ったの。でもこれでは、長編は書けても大長編は書けないのよね。

 だからホライゾンでは、主人公が”何かになる”けれども”しかし自分ではそれをしない”のね。

 主人公がするのは、皆を率いるための意思を見せることで、ソレによって皆が自分のテーマを着々と果たしていき、結果、主人公は王になり、ホライゾンは感情を取り戻してアッパーになっていく、と」


「説明の後半ホントにそうなんですけどね……」


「アンタなんかは、トーリを中心とした人間関係のテーマを固めた複合役の一人でもあるの。だからこんな風に言えるわ」



・複合的テーマ

 :一つのテーマを複数人で分担して果たす

  :トーリの”王になる”

 :一つのテーマを分化、回収して果たす

  :ホライゾンの感情


「主人公達だけではなく、多くのキャラが複合テーマを持っていて、他のキャラのテーマを介してそれを解決するようになってるわ。だからホライゾンは常にいろいろな処で事件や推移が発生していて、次から次へと展開が移って行くの」


「ホントにろくでもないことが次から次へと発生しますよね……」


「そうね。それでいて、クリアすると、それで終わりじゃなくて、そこから先があるの。――可変して、終わらないのよ」


「ちょっと話がずれますが、可変的テーマを”終わらない”ために用いてますね。話を終了まで飽きさせないためではなく”終わらせない”のは何故ですか」


「アー、まあこりゃ簡単な話なんだけどね? クロニクルを終了したとき、思い切りロス入ったのよ」


「アー」


「だって中学校の時から書いて”いずれ世に出す”と思っていたタイトルの一つよ? テーマは完遂しているから、今後、同じテーマによる続きは書けないし、しかもその後のテーマを用意していなかったから、ホントに完結してしまったの」


「手が出せなくなってしまった訳ですね」


「そうね。だからホライゾンを書くとき、ロスが生じないようにしよう、というのがまずあったの。これは担当さんも同意でね。

 何しろ担当さん、こっちがクロニクルを終えて思い切りロス状態になったの知ってて”次にああなったら作家生命に関わるので、ロスが生じない作りは全面的に支持します”って言ってくれて」


「担当さん有能ですよね……」


「ホントそう。だからもう、クロニクルを書くときにもっと実力あればなあ、と今でも思うんだけど、しかしクロニクルがあったから、ホライゾンではそうならずに済んだ訳でね。

 ホライゾンが設定とプロットだけだったら空中分解していたろうに、そうならず今でも続いて読者の皆と騒いでられるのは、都市やクロニクルがあったからこそなのよね」


「なお、ホライゾン以降、神々や、まだ未発表のLINKSなんかもこのタイプの重層テーマで作ってるから、例えば完結したとしてもロスなく続きに行ける作りね」


「やはり一回技術が手に入ったら、使って行きたい感ですねー」


「じゃあ話を戻そうかしら」


「階層的と無限性についての説明ですね」


「階層的テーマだけど、これは下にあるものが根源で、そこから生まれる巨大なテーマがあり、その上に表層的なテーマがある、という考え方なの」


「???? どういうことです?」


「テーマというものを、三次元的に考えたのよ。

 まず一番上に単独テーマと複合テーマのレイヤーがあり、複合テーマの核を単独テーマがくっついたり離れたりしてる、と考えたの」


「アー、レイヤー構造なんですね」


「感じ感じ。そして表層テーマの下に、第二、第三深層の巨大なテーマがあるの」


「それはどういう?」


「ええ。表層テーマは可能性や意思だけど、第二テーマはそれらを生むもの。

 つまり”人”が”人”として行動するには、何があるのか。

 そしてそれが物語のテーマとなるならば、どんなものかを考えたのね」


「聞きましょう」


「――”関係”よ」


「アー、……末世のロジックが問題になったのは、正にそこですね……!」


「ええ。幾ら能力があって、可能性を有していて、感情も理性も、そこからの意思があったとしても、何も無い処に一人でいたら、それらは発揮されないの」


「いや自分を鍛えるために、とか、そういう話ではないので御了承下さい」


「物語というもの自体が”関係”から生じるのよね。これは、群像劇のあたりでも言ったことだけど」


「つまりそれを深層テーマとしたわけですね? あらゆるキャラクターが行動し、自分を果たしていくのは、それぞれの関係から生じるのだと」


「そう。

 人と人の関係は、記録や手紙などによって時間すらも超えるでしょ?

 だとすれば、人の関係とは、どういうものがあるのだろうか、って。

 そしてこの”関係”というのは、それ自体がもう可変的テーマでもあるの」


「人それぞれというか、人がいればそれだけ”関係”は生じますから、それを追って見て行くのだとすれば、無限増殖する可変的テーマですね……!」


「そして私は、この”関係”っていうものが、ケッコー好きらしいのね。CP祭とか、そういうのもだけど、人と人が何故くっついたり離れたり、出会ったり去って行ったりと、そういうものをどうしてなんだろうって思いながら、ずっと見ていたいって、どうかしら」


「うちの物語の語り方だと、確かにそれは向いています。

 無限に増えるので、無限性もありますから。でもですね?」


「? 何かしら?」


「”関係”は第二層目ですよね。じゃあ、一番深い第三層目は?」


「ええ。第三層目にあるのは、最も根源的なもの。まあ私がホライゾンでそう規定しているだけだけどね。

 でもそれこそが、人間の関係や、意思や、可能性に繋がるものだと思ってるの」


「それは何です?」


「――死生観よ」


「如何に生き、如何に死ぬか。

 万物は全てそこに行き着き、だからこそ行動をするわ。

 ”行動しない”ということをも含めてね」


「なお”そうじゃない”という方は、それはそれでいいと思うので、そちらの方で宜しく御願い致します」


「誰だって、子供の頃、意味も無く”死”が怖かったりするじゃない?

 その自覚があるか無しかの差はあるだろうけど、何もかもがそれからは逃れ得ないの。

 だからこそ”如何に”と。

 それは人の関係を生み、人を動かし、また去っては新しく結びつくのよね」


「無限性そのものですね」


「ええ。だからこそ、その無限性を断ち切りかねない末世は大問題だったし、それはNB英国編でもあったわよね」


「ありましたありました」


「ホライゾンやトーリは、そのライン上に身を置いたことがあり、義頼やアンヌ、天竜達の示唆などを経て、自分達の”関係”に気づき、そして死生観を育んで行くの。

 そして”如何に生き、如何に死ぬか”を無駄にしようとする流れがあれば止めるのね」


「そうやって、人に出会い、関係し、行動するたびに死生観もアップデートされる訳ですね」


「そう。ゆえにホライゾンは、ずっと続けていける訳。馬鹿やって騒いだりしながら、自分達をアップデートし続けていくからね」


「しかし、どうやってこういう考えに?」


「あら? 既に伏線はあったわよ?」


「? 何です一体」


「ウルティマⅤ。実際はウルティマⅣだけどね」


「ンンンン? どういうことです?」


「ええ、ウルティマⅣは、ウルティマⅤの前身となる作品なの。

 そしてⅣは、ゲームの目的が”世界を導く聖者になること”なのね。

 魔王を倒すとか世界の危機を救うんじゃなくて」


「……どういう方法で?」


「うん。世界には”八つの徳”があって、対応した神殿と試練のダンジョンがあるわけ。だから世界を旅して情報を集め、徳に応じた行動をとることで”徳”のパラメータを上げて、試練をクリアの上で神殿にて祈りを捧げると、その徳が獲得。

 でも徳に反した行動獲ると一発で剥奪されるから大変なのよね」


「正しく”苦行”ゲームですね……」


「ただそこには浪漫があったのよね。そして八徳の他、三つの原理”真実・愛・勇気”を納めて最終試練のダンジョンに行くと、一番底でこんな問いかけを受けるの」



『もし聖者の8つの徳が一つとなって

 真実と、愛と、勇気の3つの原理から

 その一つのものが導きだされるなら

 この一つ、すなわち

 明白なる真実と

 終わることのない愛と

 屈服することなき勇気

 この3つによって取り囲まれ

 そして

 その全てでもある

 一つのものとは何か?』


「かなり濃いのが来ましたね!?」


「いやー、今見ても格好いいわー。

 八徳の”誠実・慈悲・勇敢・正義・献身・名誉・崇高・謙譲”、そして3原理の全てによって成り立ちながら、それら全てでもあるものは何か?」


「答えは何なんです?」


「――INFINITY。無限、よ」


「八徳は実際の八大罪や枢要徳とは別ですが……、かなり影響受けてません?」


「ゲームとしてインパクト食らったのはⅤの方なんだけど、考え方なんかはⅣの方が食らったかもね。

 あ、以前、Ⅴの話をしたとき、Ⅳのコレを想起した人はいなかったから(当社エゴサ参考)、当時を知る人がいたとして”そうだと思ってた”とか言うのは無しね。見栄を張ってもどうなるものでもないから」


「しかしここで”無限”が出るとは……」


「当時、この問いかけを見たとき、無茶苦茶格好良くてねえ。今でも凄い問いだと思うわ。だから何か、究極的なもの、と言われた場合”無限性”って言葉が出るのよね」


「よく考えたらホライゾンの”嫉妬”も”全ての大罪の~”でしたから、同じような物言いですね」


「感じ感じ。佐山の”意思を導く問いかけ”もそうだし、ホライゾンでも大フアナが”絶望、裏切り、後悔、それら全てであり――”とかやってるのよね」


「というかホント、昔の貯金で生きてますね……!」


「口座はパンパンよー」


「しあkしそういう意味では、ホライゾンはホントに作り手としての総力戦な感じがありますね……」


「そうね。都市やクロニクルを経て、ボードRPGの頃からの全てを叩き込んで作ってるものね。

 テーマ的に見ると、都市やクロニクルは一気に楽しませる”傑作”傾向。

 ホライゾンは長い付き合いを想定した”名作”傾向。

 そんな差だと思って作っているわ」


「確かに、違うものを作っている訳ですからね。同じ尺度で測れません」


「それでいいのよ。テーマですら、違う作品達ばかり。

 うちはバリエが幅あるし、今後もいろいろ考えながらやっていきたいわね」


「というか、新シリーズの”LINKS”って、シリーズ名自体が”関係”なんですが……」


「ええ。有りでしょう? 都市とクロニクルを経て、ホライゾンが到達したテーマの一つが、既に表層テーマって。贅沢な話よね」


「そんな感じでテーマ編、ようやく終了です。皆様お疲れ様でした……!」


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