インナースーツのデザイン
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「今回の話は、前回に続いてインナースーツの話ですが、デザイン面や意味などについて語ってみようと。ええ。そんな話ですね」
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「という訳でフェチの話なんですか?」
「いきなりそう振って来たわね……。でもちょっと、真面目な話でもあるわよ?」
「そうなんですか?」
「まあデザインって機能とかあるから。そういう話ね。
じゃあスタート」
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「実はpixivFANBOXで似たような話をしてるんだけど、まあ被ってもいいわね」
「どういう処からスタートします?」
「デザイン面で言うならば、どのあたりから、って話ね。
実際にはASRA(Anti Shock React Armor)がベースとしてあるから、ボディスーツとしてのインナースーツなら中学校時代にデザインがスタートしたことになるわ」
「じゃあ、ワンピース型のインナースーツは何処で?」
「EDGE(旧AHEAD)が出来たときに、パワードスーツとボディスーツ(ASRA)の間に一枚入れる必要があると気付いたから、そこで発生ね。設定的には中学校時代の終わりあたりで出来てることになるわ」
「パワードスーツとボディスーツの間に、一枚挟むんですか?」
「ええ。ボディスーツとしてのASRAは、よく考えると解るけど、凹型のハードポイントパーツは埋め込めても、基本的に、大きめの凸型のパーツは各部に設置出来ないの」
「アー……。凸型パーツは衝撃を受ける箇所になりますからね……」
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「細かい話だけど、たとえば私達の穿いてるタイツのバックシームは、谷型構造じゃなくて山型構造なのね」
「それはどういう?」
「谷型構造だと、刃物や鋭角物が当たった際、シームラインがそのガイドになって割られてしまうからね。
さっきのASRAの話で言うと、これは凸型構造としては背が低く、更にASRAの生地の端材部分で出来てるから問題無い、としてるわ」
「衝撃を受ける箇所であるかどうかより、防御性を優先してる感ですね」
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「つまりASRAには、生地本来が持つ防御性能があるけど、それ以上の性能は求めにくいと考えたの。よくて、データリンクやモーションコントロールなどの素子くらいだろう、と。
だけど他のものとの接続やリンクを行う機能も必要だから、ASRA以外のものを外付けした方がいい、と」
「そこらへんの発想は、何処からなんです?」
「80年代ってね。レジャーとしては各地で遊園地が盛んでね。そんな中でやはりメインと言ったらアレよね」
「アー、絶叫系……」
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「フリーフォールとか懐かしいわね。でまあ、ああいうマシンのシートってシートベルトだけじゃなくて安全バーがあるでしょ? アレの”有る・無し”で身体の固定力って違うじゃない」
「アレを下げないで事故とか、ありましたね……」
「そうそう。体感として、パワードスーツとかで高速に振り回されるならば、ああいうシステムが操縦空間の中に必要だな……、と思った訳ね」
「それが何でインナースーツに?」
「乗る側の体格と密着性を考えたとき、スーツ側にそれを設けるべきだと思ったの。ほら、絶叫マシンの安全バーって、何だかんだで身体との間に隙間あるし、身長制限とかあるでしょ? そしてバーの側で密着させても、人間の身体って結構変形するじゃない。
アンタ巨乳オーナーだから解るわよね」
「要らんこと言われてますが、確かに骨格や筋肉とか、振り回されると簡単に形が変わったり流れたりして、密着してても隙間が出来ますね」
「そうそう。でもバーを可変型にすると耐久度に不安が生じるし、圧迫度を増すと長時間の使用が出来ないわ。だったら接続部をユニバーサル化して、搭乗者側に固定パーツをつければいいと思ったのよ」
「あの、すみません」
「何?」
「ハードポイントパーツって、つまり」
「アラー、今更気付いたの? アレ、元々はそういうのの接続パーツよ。パワードスーツの操縦室とか、背部側に接続ジョイントがあって、そこに接続するの。
同じようにバックパックとかも接続出来るからね。
”ハードポイント”って、私達の時代では主に衣装や装備を接続するけど、旧来の使用法ではパワードスーツや大型バックパックなどを接続するガチの”ハードポイント”だったの」
「私達の間だと、アデーレや成実さんがその使い方ですね」
「武神は合一式多いから、そういう使用法が無いのよね。
機動殻オーナーがやはり主だわ」
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「しかし何で発想がワンピース型に行ったんです?」
「いや、宇宙服みたいな密閉型とか、ベスト型のアイデアもあったわよ?」
「それが何で?」
「ベスト型だと、やはりバンザイ姿勢で上にスッポ抜けるし、宇宙服型って、キャラの個性が出しにくいわよね……」
「アー」
「一応、うちは実家が工房で映画のセットとか作ってたから、高所装備とかツナギとかフツーにあったのね。それで高所用のフルハーネスとか見てると、身体の何処で懸架するか、どこをホールドするといいのかは大体解っていたし、服飾で縫製とか調べてると、服は身体の何処に”吊す・締める”で着ているのかな、ってのも解ってくる訳。
そうするとどういう設計が生まれるか、解る?」
「…………」
「……アー! パーツの分解!!」
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「そう。宇宙服のような密閉スーツを、フルハーネスのハーネス部で分割した訳。
そうすると、こんな分割になるわよね」
・左右肩から先
・左右脚から先
・胴体部上
・胴体部下
「でまあEDGE(旧AHEAD)で宇宙空間が活動環境となるならば、すぐにそういう空間で活動出来るよう、最小限かつ万全に活動可能なパーツはどれかと言ったら、とりあえず胴体部の上下があればいいわね、と思ったの。
それにハードポイントパーツをフルハーネスのライン上に置けばいい、と」
「確かに私達のスーツも上下分割出来るんですが、”あまり意味ないな……?”と思っていたんですよね……」
「そう。EDGE(旧AHEAD)で宇宙空間とかそういう環境での生活をしてる連中が必要に応じて脱着とかするって概念があって、私達はそれを形として受け継いでるのね」
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「――でね? こういうデザインだと、メイン部分は胴体部分となるわけ。ここを外してしまうと、スーツとしての目的と機能が失われるから」
「だからインナースーツの首や腰のハードポイントパーツには情報処理機能やストレージがあるし、更には腰の後ろにはもっと重い処理などをするフォートレスパーツがあるんですね」
「首元のハードポイントパーツから走狗が飛び出す辺り、私達の時代ではEDGEの時代に比べて集積機器がコンパクトになっていて、いろいろ余裕があるってことよね」
「宇宙やら何やらよりも必要環境が小さくなって、求められる機能がコンパクトになったとも考えられますね」
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「……何となく解ってきたのが、クロニクルで用いられていた”装甲服”との差と、同質部分ですね」
「そうね。クロニクルの装甲服は、各Gの多種環境に即座適応出来るよう、胴体部を基礎として、他はスカートやジャケットも”追加装備”になるわ。
だけど戦闘用ということで、普段着化はしていないし、アウタースーツになる装備が発生していないからこれがメインのままで”装甲服”なのよね。
でもこの考え方が、EDGEの宇宙用装備などに受け継がれて、”これを普段着にしていった方がフツー”となって、インナースーツとかになっていった、というのが”設定”になるかしら」
「アレ? じゃあ、私達の世界におけるデザインの歴史として見た場合……」
「ええ。神代(現EDGE)でケッコー変化したインナースーツは、私達ホライゾンの時代に、つまり”地球の歴史上にあったファッションを模した形”に回帰するの。
私達の視点から見たファッション的なデザインとしては、こうなるわね」
・AHEAD:普段着は現実のものだが、装甲服はちょっと未来の装甲服
↓
・EDGE:普段着から、未来や神話など入ったインナースーツ
↓
・GENESIS:普段着から中世~近世のデザインを模したインナースーツ
「つまり人類は地球時代の普段着をAHEAD→EDGE間で捨てた訳。
だけど、私達ホライゾンの世界が、これから歴史を進めて行く中で”インナースーツは地球時代の普段着を模したものへと変わっていく”と考えられるのね」」
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「一方で、CITYは宇宙時代を経ていない……、時代的にはAHEADに近しいから、こういうスーツは”装甲服”のままなんですね」
「戦闘とかいろいろあるので、装備のパーツ分けは進んでるけどね。これもまあ、時代的な過去からの引き継ぎ、ともいえる設定は有るけど、そこまで寄せなくてもいいわ」
「そうなんです?」
「ええ。だって、LINKSがあるから」
「…………」
「……宣伝! 宣伝ですね!?」
「ええ。まだいつ出すか明確じゃないけど、そこらへん集合してるのがLINKSだから、チョイと待ってるといいわ!」
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「でまあ、変に熱くなりましたが、しかし装備というか、スーツの分割アイデアは何処から来たんです?
さっきのハーネスとかは分割の”方法”であって、聴いてみたいのは”発想”の部分の話です」
「アー、80年代~90年代はアウトドア文化が一気に発展してね。いろいろなアウターが出た訳よ。その中でも、特に雨具とか、スキー用ジャケットとかで、袖が分割されるものがあったのよね」
「スキー用は、パンツ側の方でも裾が開いたりとかありましたね……!」
「そうそう。今でもワーカー系で裾を外してクオーターやハーフに出来るものとかあるわよね。だから密閉スーツとフルハーネスのことを考えたとき、分割のアイデアって当時だとフツーに出てくるものだと思うわ」
「時代感というか、それが一周した感じですね……」
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「じゃあちょっとデザインの発想として、アレ行きます。
何で前を隠してないんです?」
「動きやすいから」
「…………」
「いや、ホントホント。80年代からのファンタジーって、女性は横スリットや前垂れ型の衣装が多かったんだけど、あれって、走ったりすると、結局横に流れたり、腿に蹴られてバウンドしたりで、邪魔なのよね」
「アー」
「あと、90年代前半あたりからの女性のファッションで、スカートの前スリットやラップ型のスカートが出てね。
それ穿いてる人が歩いてるの見ると、当然、脚を前に出す際、スリット部が前に来る訳」
「まあ当然、そうなりますよね」
「だとすると前垂れ式って、何のためにあるの?」
「…………」
「……防御と防寒のため?」
「戦闘で股間部が狙われる率ってどのくらいあるかしら……。
近接戦の場合、狙うのは下段正面攻撃しか無いけど、刺突か蹴り上げに属する動作しか狙えない箇所として考えると前垂れが有る方が絡まって巻き込まれたり、掴まれて引き寄せられたりするし、こちらの動作にも邪魔になるんじゃないかって、そう思った訳」
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「あ、ここで”下段からの股間狙う攻撃はこういうのがありますよ知らないんですか”みたいなのは必要としてないから、そういうの言いたくなったらそちらの世界は何にでも前垂れついてる世界と言うことで宜しくね」
「まあそのくらいの話ですよ、という処ですね」
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「話戻しますが、防寒も、よく考えたらASRAを下に着込んでいるんでしたね……」
「既にAHEADの頃から加護的な強化はされてるのよね。防御性能なども、見た目以上のものが付加されている訳で。
だとすると、不要かな……、という判断があったんだけど、ここに別の判断も入ってくるの」
「それはどういう?」
「この”前開き”デザイン、他はやってないわよね、って」
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「アー! 正に”デザイン”が”デザイン”として持つ機能と目的!」
「そうね。デザインとは目的をもって作られるものだから、それ以外の機能を持つ全てのものとの区別を生じるの。
うちのデザインは、他のデザインとは機能や目的が違う。
それを示すために、解りやすい記号があるといいわね、という話」
「どういう反応があったんです?」
「まず野良の方で、自分のサイトではCITYベースの世界観に則って、キャンギャル的なデザインや、以前に出した夕樹のASRAラフとか、そういうのを出していたんだけど、手応えがあったのね。だからDTで軽装甲服として出してみたんだけど」
「だけど?」
「下巻から出したせいか、”オプション装備”的に受け入れられちゃって。
あ、コレ、駄目だと思った一方で、行けると思ったの」
「どういうことです?」
「オプションじゃ駄目なのよ。恒常的に存在している、という風に見て貰わないと。
でもその一方で拒否感は無かったから、行けると思ったのね」
「それでクロニクルでは、表紙から口絵からオープンにしていった訳ですね」
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「あとまあ、他との差別化と言う意味で繋がるけど、インナースーツベースにした意味は、別にも有るの」
「それは?」
「ファッションが作品ベースになるから、時代性を無視出来る」
「アー」
「まあコレはそうよね。純粋にデザインとしての”新しい・古い”の振り分けは受けるけど、”今の流行”はほぼ無関係になるの。
うちが”制服”をベースにしているのもそこらへんあるわ」
「私服の学校が、洗濯やファッションの流行追うのが面倒だから制服に回帰するとか、そういうのありましたね……」
「感じ感じ。そういうものよね」
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「あとまあ、絵的な利点も有るのよ」
「それは?」
「まず、挿画を考えたときね。挿画ってスペースが限られていて、実際のサイズも文庫だと縦15cm程度で小さいじゃない? だから全身像ってほとんど無いわけ」
「アー、多いのは”バストアップ・太腿から上”あたりですね」
「そうそう。――で、問題なのは太腿から上」
「そうなんですか?」
「うん。スカートキャラだと、こうなるわよね」
「何か何処かで見たキャラのラフですが……、まあ、そうですね」
「で、インナースーツというか、うちらの制服だとこうよね」
「あ、ハイ。まあこうなりますね」
「じゃあ、コレ、描きやすいのはどちら?」
「スカートの方では?」
「それが違うのよね。実は描きやすいのはインナースーツの方なの」
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「どういうことなんです?」
「ええ。スカートの方を見ると解るんだけど、スカートって、つまり”立体が解りにくい・伝えにくい”形をしてるのよ。一見は平面だし、プリーツが入ってるとそれを助長するものね」
「アー……」
「だからスカート穿いたキャラでは、”スカートの下の脚や腰がどう動いているかを設計しないといけないし、それによるスカートの皺や陰影をつけてあげないといけないのね。
そしてそれらを丁寧にやっておいた上で”伝わるかどうかは読者次第”なの」
「……だとするとインナースーツの方は……」
「ええ。胴体ラフが出来たら、そのままパーツ付ければいいだけ」
「アー……」
「”胴体ラフが出来たら勝ち”。コレ、友人がうちのインナースーツのデザインを見て言ったんだけど”身体が描ければ誰でも描けるデザインですね”って、そういうこと。
スカートを描くにはスカートをよく観察して、立体表現とかを練習する必要があるけど、インナースーツ型は”身体が描ければ大枠出来てる”から、あとはパーツの比率とか憶えるだけでいいの」
「まあ、確かに、そのキャラがどういう動作をしてるか伝わるのはどっちだって言ったら、確実にスーツの方ですね……」
「そうそう。そういう”情報のダイレクト性”でも、スーツ側の方が高くて、アクションの多いうちのタイトルには向いてるのよね」
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「ちなみにこの発想は、結構昔からある箇所で使われてるわ」
「昔から? ありましたっけ?」
「――手」
「アー……、って、もう、アーしか言ってませんが、確かに……!」
「そう。手は、実際に描くとしたら、結構大変なパーツなのよ。手の甲には骨が浮き出てるし、手首の部分には下腕の骨二本が複雑な角度で接続されてるわ。
そして指は、その付け根部分の”水かき”のお陰で表と裏で長さが違うし、掌の部分もフクザツに変形するじゃない?」
「でも指ぬきグローブ付けておくと、指だけ描けば大体伝わりますね……」
「指ぬきグローブには骨も浮き出ないし、下腕の骨も関係無いし、水かき部分や拳の部分だって無いわ。グローブが複雑なようでいて、本来の手指を描こうとしたらかなり気を遣わないと行けない部分を、全部省略出来るの」
「男女差もかなりの部分で省略出来ますよね……」
「そういうこと。だからうちのデザイン見て”またグローブかよ”とか”スーツ好きねえ”とか言ってるのを観測すると”ヤッター! 楽してるってバレてない!”とか思うのよね……」
「言い方! 言い方!!」
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「あとまあ、リアルな話ね?」
「何です?」
「スカート絵と、スーツ絵だと、どちらの方が”お金を払いたくなる”かしら」
「アー……」
「払うことを前提として、その両方のタイトルを知っているとして、二つを並べた場合、ユーザーはどちらを手に取るかしら」
「好きや嫌いとかはあるとしても、”どちらが得か”みたいなのはありますね」
「そういうこと。私達が作っているのは商品だから、ターゲットとなる層が”これにはお金を払う価値がある”と確信出来るデザインを作らないといけないわ。
挿画は本文のオマケでも飾りでもなくて、そこに描かれる内容やデザインと共に、ユーザーの訴求力にならなければいけないわよね」
「お金を払うというのは重いことですからね」
「まあ、その方法と選択が、うちではこのデザインになっているという訳。
だからうちの作風というか、デザインを含み、いろいろ迷ったときは、こう考えるの」
・どちらが読者にとって”得”なのか。
「倫理とか常識とか無視で考えろ、ってことですよね」
「ええ。読者が”得”だと感じるならば、それは手に取られるし、喜ばれる。そこに倫理や常識で蓋した処で、誰も得にならないし喜ばないのよ」
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「ちなみにこの”ユーザーが得と思う方を選択する”は、ホライゾンのアニメを作るときに小野監督からも同意を得た考え方なのよね。小野監督も”作るからには売らなければならない。良いものを作ったからそれでいい、は駄目”という考えだったから」
「面倒な二人がトップにいたもんですよ……」
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「でも実際、うちみたいなデザインは、うちが初出じゃないのよ。もう1930年代頃の米国のパルプフィクションではワンピース型の宇宙服とか描かれてるし。ゲームなんかでもパイロットスーツとかでは似たような分割あるものね。
でも今、セパレート+タイツで戦闘服みたいなのがあると、うちの範疇と見做されることが多いわよね」
「あれはどうしてです?」
「うちのこのデザインが、クロニクル以降、統一デザインとなっていることと、作中内でも文化や文明の設定と密接になっていて、”オプション装備”とかではない、と認識されているからね」
「……インナースーツのデザインとしての”記号・代表”を、現状ではうちが獲得している訳ですね」
「そう。だから”川上系のデザインではありません”って言うなら、それをメインに据える場合、前開きデザインを超える発想を全面統一にしないといけないし、一方でそうではないならば、結局オプション装備化してしまって、主軸にはなれないわけ。
うちよりもこのデザインの”代表”になるなら、コンテンツに押されるか、デザインを違うものへとしていくしかないけど、結局それは違うものよね……」
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「じゃあ、ちょっと別で質問です。――素足にしないのは何故ですか」
「ASRAがボディスーツ型ってのもあるけど、じゃあ何でASRAがボディスーツ型なんだって話にも繋がるわね。
――アレよ。防疫と防御」
「防疫と防御?」
「そう。たとえば女性だけど、現代日本でも、河川や海で遊んだ際、性器からの感染症があるし、生理時の漏れとか、落下時の水圧、空気圧による局部損傷とか、そういうのがあるのよ」
「感染症や生理は解りますが……、落下による損傷?」
「ええ。水上オートバイからの落下や、高所からの”脚を下にした”飛び込みとかで、直腸や性器に高圧で水が入って損傷するの。
逆転して”噴水のある水場”で遊んでいた子が、噴水の直射を受けて損傷とか、そういうのだってあるわ」
「アー……」
「しかもコレ、水着を着ていて発生してるの。更には男性側でも生じてるわね。
事例にもよるけど、9mくらいの高さから足を下に水に入ったらそうなったとか、ウォータースライダーで勢い付けたらやらかしたとか、そういうのあるから、飛び込み姿勢とかも含め、気をつけたい処よね。
水着を着てる程度では防げない。スパッツでも駄目だったっていうから、うちだとタイツ(ASRA)+インナースーツよね」
「シャレにならないですね……」
「”穴が増えた”って表現も見かけるからホントシャレにならんわ……。
なお、感染症はいろいろあるので細菌性膣症という名でまとめられていたりするわね」
「コンプレッサーによる悪ふざけで大腸損傷から死亡とかも、ありますね……」
「そう。うちは実家が山に近くて川とかも身近だったけど、東京の上流の方でも、水遊びしてしばらくすると”ン? 川スメル?”みたいになるのよね。虫もいるし。
だからファンタジーとかで素足見ると、加護とかいろいろあるんだろうけど”不用心では……”って何か思っちゃって」
「変な処で一線引いてますね……」
「まあ生活環境のアレよね」
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「あと重ねて質問です。――何で男性側は、インナースーツがワンピース型じゃなくて、上半身側とトランクス型がフツーなんですか」
「男性器ってケッコー長いから、鼠径部カットのインナースーツだとハミ出るのよね。それは避けたい感じよね」
「コレ昔の話で、今はどうか知りませんが、スポーツ用の男性スパッツに”R・L”の区分けがあって、何かと思ったら男性器を”どちらに逃がすか”で脚の部分の径がちょっと違う、なんてのもありましたね……」
「男性の水着とかもね……。
で、タイトな押さえ込みをASRAの上からやると、身体(主に太腿)の動きに性器が押し潰されたり、伸ばされたりするのよね。ここで通気のあるASRAならともかく、インナースーツでも押さえ込まれると、動いた時に性器と腿のあいだに真空が生じたりして、損傷するわよ?」
「コスプレなどされる方は密着する衣装の内側にパウダー叩いたりして発汗や密着を避けますが、それを毎回やる”普段着”は無いんじゃないかと考えてます」
「そしてまた、逆に、女性をトランクス型にすると、さっき言った事故とかに対して無防備だからそれも駄目ね。身体の真下に穴があるって、結構な弱点だから、そこに隙間を作れない、という処ね」
「マーいろいろありますね……」
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「まあ大体こんな感じで生まれたデザインね。前回で語ったキャンペーンガールとかラリーカーの企業ステッカーみたいに、各部にロゴとか入っていたり、各企業のシンボルデザインが入っているのが特徴でもあるわ」
「本来ならもっと大きめのロゴとか入れたい処ですが……」
「作画コストがマジでハネ上がるから、そこは難しいのよねー……。だから武蔵の場合は、先端楔形のデザインを各所に配したりして、”所属”感を出してるわ」
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「やはり思った以上に語れますね。まだ何か見落としある気もします」
「まあそれは追々というところね。ともあれ、解った?」
「何がですか?」
「小中学生の性癖を書店の初見一発で破壊するには、これだけの作り込みが必要なのよ……。まさに目的と機能を叶えるデザイン……!」
「本気にする人がいるからそれやめましょうね!!」
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