インナースーツの確定


「今回の話は、DTや終わりのクロニクルで始まったインナースーツをメインとしたデザイン。これについての考察というか、どのような変遷をしてきたのか。そんな話ですね」


「解ったわ。――フェチの話ね」


「いや、その」


「大丈夫よ。この十数年間、書店の平台で小中学生の性癖を破壊して来たし、十年チョイ前には深夜アニメで小中学生に”見る言い訳”をさせてきたんだから。何でも来いって話よ」


「嫌な自覚がありますね……」


「他人の性癖に指突っ込んで捻るくらい出来なくて、何がコンテンツって話よね」


「どうでもいいですけど、たまにファンレターで”川上捻先生”ってのがありますよね」


「あるある。宛名もそうなってて”コレが届くのは編集部のコンプラ的にどうなのかしら……”って思うけど、私としては”認識が合ってればそれでいいか!”って感じだから、別に構わないわね」


「一番凄いのはどんなのが?」


「高校の時の日本史の先生が方向的ライトサイドの人間だったから、年賀状の宛名に”川上稔烈士”って書かれて”ホンモノや……”って思ったわね……」


「何でそんなネタが即答出来るんですかね……」


「――ともあれ話戻しますが、インナースーツは、しかしどのあたりからの発想なんです?」


「どのあたりの発想というか、いくつかの発想の合成なのよコレ」


「合成?」


「そう。主なアイデアは中学校時代ね。

 あの頃に作っていた設定では、既に、クロニクルとホライゾンの世界には幾つもの企業体(クロニクル)や企業組合(ホライゾン)があって、それが企業間抗争とかしてるのね」


「当時としては珍しい設定では?」


「いや、ファンタジー世界の中、ギルドとか有名なものがあるのに、ブランドが無いってのは変だと思ってたのよね。

 たとえばファンタジーだと”●●の街の野菜”とか”●●匠の武器”みたいなものはあったけど、物語としては戦争とかやってるし英雄はいるしダンジョン攻略はあるし? だとしたらそんな、工房とか街単位の云々じゃ無くて、流通や資金を共有することで規模を巨大化し、他国進出もする総合企業が出来上がると思ったの」


「どういう発想です?」


「あら? 当時の日本だったら、ちょっとテレビとか新聞見れば、ある単語が出てた筈よ」


「…………」


「……アー! 多国籍企業!!」


「そう。今ではフツーにあるし、あったとしてもミニマム化も進んでいて解りにくくなっているけど、多国籍企業って、こういうものよね」



・複数の国を舞台に生産、流通などの拠点をもつ世界企業

・諸国経済の相互依存関係の強化を行い、世界経済のボーダレス化を進める


「まあこんな感じで、80年代後半のファンタジーだと航空艦とか巨大貨物船とかもあるし、鉄道なんかもある場合もあるわよね。

 だから何でこういうのが出ないのかな……→うちにはあってもいいじゃん、って感じ」


「中学校でも、世界史では東インド会社とかハンザ同盟とか習いますからねえ……」


「ハンザはちょっと違うけどね。でも国際的な商業帯が出来て、都市単位でのブランドが出来てたのは確かだわ」


「多国籍企業は結構ファンタジーと相性いいのよね。貿易権や商業権、採掘権や自治権とかのミッションが作りやすいし、何よりも”他国文化が乗り込んでくる”ことでその地域にドラマが生まれるもの。

 そしてキャラクターにとっても、異国の地で”身近なものがある”とか、そういうのによって尚更地域性が出せたりするし」


「キャラによるブランドへの拘りとか、そういうのも作れますよね」


「そうそう。それでまあ、80年代~90年代って、日本の多国籍企業が盛んにいろいろな国や文化に進出して、日本でもそういったものが開催されたりしてね。

 そんな中で、ある文化というか、衣装が注目されるようになった訳」


「それは?」


「キャンペーンガール」


「アー」


「レースクイーンやサーキットクイーンなんかもいろいろ目立つようになってきた時代と、そんな風に観測してるわ。でまあ、その衣装見たとき、ホント衝撃受けたのよね」


「どういう?」


「うん。衣装に企業ロゴがドンと入って、それを含めたデザインになってること」


「当時で言うと、デザイン重視のスポーツジャージが何となく出始めた頃でね。

 何しろロス五輪(1984)で、日本のスポーツ衣料がトレシャツ・トレパンからスポーツジャージに替わっていったような時代だったから」


「メーカーロゴとか入っても、小さいんですよね……」


「そう。だからああいう”企業”の名称って、人のものではなく、別のものだと思ってたのよね」


「別のもの?」


「車やバイク。ほら、レースの」


「アー」


「1983年に三菱がパリダカールラリーにパジェロで出て市販車無改造クラスでいきなり優勝。コレ、プラモとかラジコンも出て、見たことがないようなカラーリングと企業ステッカーを貼った車体を目にしたのよね」


「そういう文化を知らなかったから、驚きでしたよね……」


「そうそう。だから私の中で”強い車”って、ああいう”情報”を外に見せてるイメージが未だにあるのよね。何となくガンプラとかでデカール貼りまくる気質の基礎になってる気がするわ」


「更に言うと、バイクでは先に70年代後半から日本の片山敬済選手達が活躍していて、プラモなどでも”レーサーマシン”の文化を見せていました」


「市販用になったレーサーレプリカが、カラーリングもかなり寄せてる一方で企業ステッカーとかプリントされてないのは、まあ当然なんだけどね。だからこそ逆にレース用のマシンは”別格”よね」


「更に言うと、1988年にはF1でマクラーレン・ホンダが優勝し、これは90年代前半まで続きますね」


「マクラーレンMP4/5は今見ても不類の格好良さよね……。マルボロロゴとか、ああいう情報の置き方や見せ方が、無造作に見えて良いのよね……」


「メカの美しさと無機質性と、デザインというものが合うんでしょうね」


「そう。だからそういったものが”人”に適用されたのはビックリしたのよね」


「ちなみに自分の持論として”女性は戦闘機やF1マシンと同じ格好良さを持つ”というのがあるんだけど、多分、ここら辺に由来してると思うわ」


「男性の場合と、どう違うんです?」


「女性の場合は、脚や腹筋に生じる筋肉の凹凸性が薄く、曲面が多いから、本体に直接情報を配置出来るのよね。

 ロゴを配置すると流れるような立体として読めるわ。

 対して男性の場合、凹凸性が高いから、ロゴを配置すると歪んだように見えるわよね。

 だから男性の場合、本体よりも装甲などの外装に配置した方が外からの認知が容易だと、そう考えてるわ」


「まさか即答来ると思いませんでしたよ……」


「まあそんな感じ感じ。ちなみにこの時代を過ごした人って、たとえばガンプラでアナハイムロゴの大きなデカールがあったりすると”落ち着くわ……”ってタイプだと思うわ」


「アー。今の人達だとどうなんですかね、ああいうの」


「でまあ、キャンペーンガールとか、ああいう感じの”企業ロゴが入った衣装・装備”というのが、私の中では”有り”になったのね。

 武器とか戦闘車両や艦体に企業ロゴが入っていて、それが外から見た強さを示していたり、防護や強化の紋章でもある、というような」


「インナースーツや他の武器、武装なども、ショーをやったり競技をしてる、みたいな?」


「そうそうそう。そういう文化があるだろう、って。ラリーマシンやキャンペーンガールから思ったのね。

 企業はそれぞれに武器や防具を作っていて、規格が違ってもユニバーサルジョイントのオプションを着ければ使える、とかね」


「じゃあ、それがインナースーツに?」


「いや、それとは別のものがあるのよ。ほら、――ASRA」


「アー、Anti Shock React Armor!!」


「そうそう。発案自体はASRAの方が先だったから、まずはASRAにそういうロゴとか入るだろうな、って、そんなアイデアになった訳」


「えーと、ASRAはキャンギャルでいうと全タイ衣装なんですかね……」


「いやそれはあまり考えてないけど?」


「ともあれASRAが各企業体の作るものとなって、インナースーツになって行ったんですか?」


「それがまあ、ビミョーに難しい処あるのよ」


「そうなんです?」


「ええ。だって、ほら、既に混雑してるでしょ?

 そのスーツは”ASRA”なのか”インナースーツ”なのか、って」


「アー、同じものなのに、呼び名が二つ発生してるんですね?」


「そう。それがまた、設定的にちょっと面倒なことを生じてるから、実例を見てみるとするわね」




「これが恐らく、自著で初の”ASRA””インナースーツ”が出た箇所ね」


「OSAKA上巻p184と下巻p153ですね」


「コレ見て、何か解る?」


「同じものなのに、何で表記が違うんですか?」


「コレ、”着こなし”が原因なのよ」


「着こなし?」


「そう。口絵を見てみて」




「アー、何となく解りました……」


「そうね。勝意はASRAを肌着的に身につけて、制服を上から着込んでるわね。

 つまりASRAは”インナー”スーツなの。」


「だけど妙子は、ASRAの上にコートを二重にして着てますが、それだけですね……」


「そう。妙子の場合、ASRAをボディスーツとして着て、その上にコートを着てるだけなの。

 だから二人の着方で表記すると、勝意のASRAはインナースーツとして着られていて、妙子のASRAはボディスーツとして着られているのね」


「何か、前置詞のonとatとか、toとforの違いみたいなアレですね……」


「成程……、と思いましたが、ちょっと疑問があります」


「大体解るけど、聞いてみようかしら」


「はい。OSAKAで出て来たインナースーツは、ボディスーツ型というか全タイ型でASRAのことでした。

 ――じゃあ、ホライゾンで私達が着てるインナースーツって、何です?」




「私達(ホライゾンの世界)の間だと、この胴体部の部分を指して”インナースーツ”って言ってるわね。概念としては脚のタイツ部分も入るときがある感じ?」


「そうですね。インナースーツとタイツが一体型となるタイツもあるので、そういう概念になります。

 でもこのインナースーツ、ボディスーツや全タイ型ではないですよね」


「そうね。コレ、ちょっと設定的に面倒な話になるんだけど、聞く?」


「アー、マア今回そういう話なので……」


「じゃあ話をするけど、私達の世界(ホライゾンの舞台)って、西暦で言うと10000年を超えてるのよね。EDGE時代がクソ長くて、まあ人類寝てた時間も長いんだけど、それだけ文明とか文化が変わったり進歩してるの」


「神様も存在してますからね……」


「EDGE以降は実質何でもあるよねー。……でも、その一方で都市世界って、いろいろ技術は無茶苦茶だけど、年代としたら一回リセット掛かってるから1930~2000あたりなのよね」


「……文明のレベルが、実は思い切り差があるってことですか……」


「ええ。だから私達の服とか、ベースは自然物だったりしても超加工や加護付与なんかによって別モノやえらい機能性を持ってしまうのね」


「つまりASRAの機能は、もはやボディスーツではなく、全ての服に入っていると……?」


「下着なんかは別だし、ASRAとしての専用スーツもあるけどね。でも、日常で着ている普遍的なものをASRA名称で呼ばなくなる程度には、ASRAの技術は普及してるのね」


「ええと、じゃあ、ASRAは普遍化したとして、何で胴体部のコレがインナースーツと呼ばれるようになっているんです?」


「そうね。じゃあ、これの場合、どう呼ばれていたかしら」




「えーと、これらの場合”装甲服”とか”軽装甲服”ですね」


「私達が今着てるコレを”インナースーツ”と呼ぶのとは違うわよね。

 私達のコレだって、機能的には装甲性を持つから、軽装甲服ではあるんだけど」


「三征西班牙とか英国、M,H,R,R,や六護式仏蘭西など、列強の制服は”重量級”ですから、正にそういうものですよね。でも、それらの国でもインナースーツですよね……」


「謎の答えはもう出てるわ。さっきの”勝意”の事を思い出してみなさいって」


「え? ……つまり着こなしですよね……」


「ええ。年代として考えたら、こういうことでもあるのよ?」



・AHEAD:装甲服

・EDGE:不明

・GENESIS:インナースーツ


「こうしてみると解るけど、”装甲服”がAHEADからGENESISの間、何処かで”インナースーツ”って呼ばれるようになったのよね」


「えーと、コレに”着こなし”の話を加味すると……」


「…………」


「装甲服→インナースーツとして、それとは別で”アウタースーツ”?があった!?」


「御名答。私達の制服、基礎部分であるインナースーツは神代の時代に宇宙空間など全環境で活動するためのものだけど、それでは不足する場合、外装としてのアウタースーツを装備していたの。

 それは、EDGE時代には”装甲服”と呼ばれたりするものもあったでしょうね」


「だとすると私達の時代だと……」


「機動殻なんかは、アウタースーツの末裔よ? とはいえ量産されてるものはスカスカでスーツとは言えないし、アデーレの奔獣だと完全に外装化していてスーツじゃないけどね」


「成実さんの”不転百足”あたりがアウタースーツですかね……」


「そうね。でも、あのクラスの機動殻はURクラスのアーティファクトで、”アウタースーツ”と言えるほど普及も量産もされてないわ。

 だから私達の時代では、神代にあったであろうアウタースーツの類いはほとんど無くて、逆に”インナースーツ”という呼び名だけが残ってるの」


「昔にあった”装甲服”という呼び名には戻らないんですね……」


「一応は機動殻とかそういう”装甲としての上位”があるものね」


「まあそんな感じで。

 タイトルとしては都市の頃からインナースーツはあったけど、今、私達が着てるようなものは、デザインとしてはAHEADで基礎が出来て、EDGEでインナースーツ化した、という処ね」


「リアルとして考えた場合、私達のような”インナースーツ”はホライゾンからスタートと、そう考えていいですね」


「感じ感じ。ともあれ今回、名称設定としての部分を語ったから、いずれはデザインとしてのインナースーツを語ってみるのも悪くないわね」


「それ、早めに語らないと忘れてしまう気がするんですよね……」





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