『奏(騒)楽都市 OSAKA』MDってあったよね!(技術の革新)
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「今回の話は、OSAKAネタでちょっと懐かしいMDについてです。ちょっとじゃない? 知らない? まあそんなことも含みつつ、今は見かけなくなったガジェットについて、どういう風に考えるのか。そんな話ですね」
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「ぶっちゃけ、今の読者にMDって言って通じないわよね」
「よくてメガドライブですかね」
「メガドラよりもミニディスクの方が新しいんだけどね。あと、実はメガドラは海外でまだ現役だし、ミニディスクも今でも媒体が生産されてるわ」
「…………」
「MDよりもMDの方が新しいんだけどね。あと、実はMDは海外でまだ現役だし、MDも今でも媒体が生産されてるわ」
「解りにくい! 解りにくい!!」
「こういう阿呆なネタは押さえておきたい処ね……」
「まあ御約束ですね。しかし、――”そう”なんですか?」
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「ええ。
メガドラの発売は1988年。
ミニディスクの発売は1992年だから、実はミニディスクの方が年下」
「年下」
「媒体としては三十年って処よね。
そしてメガドラの方は今でもブラジルなどでライセンス商品が現役。日本でも新作ゲームがインディーズ的に発売されてるわ。
そしてミニディスクの媒体は2022年現在、SONYがオフィシャルサイトでの通販で対応しているのね」
「解りやすく現役ですがメガドラの比重が高くなってません?」
「まあ、好きだし」
「アーハイ」
「とはいえ、メガドラは日本だと既に本体が発売されてないし、ミニディスクもプレイヤーは2020にTEACが最後の機体を生産終了しているわ。
そういう意味では半現役って処ね」
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「成程……、メガドラについて、要らん知識が入った気がしますが、じゃあOSAKAでは、何でMDだったんですか?」
「そりゃもう解りやすく、当時市販されていた、加工可能なデジタル音源だったからよ」
「? 加工可能? デジタル?」
「ええ。MDの録音データは圧縮されたデジタルデータで、一般に市販されていた録音可能なMDでは、そのデータを編集、加工出来たの」
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「なお、デジタル音源データとして考えると、wav形式は1991年からスタート、mp3は1995年からスタートしてるわ。どっちもOSAKAを書く頃には使われていて、うちもPCの中にはそれなりにライブラリを持っていたわね。
なお、wmvやwma形式は1999年以降だからちょっと外れるわ」
「アー、何となく憶えてます。mp3とか、初期は違法データ形式の扱いとかされてましたね……」
「圧縮率が高すぎて、違法コピーのデータがネットの各所に溢れたもんねー……。”もせあ”(PCのキー配列で”M・P・3”キーの平仮名押しでそうなる)とか、そういうもんよ。
でもMP3プレイヤーのWinampはスキン変更が出来るから、うちもOSAKAのスキン作って出したりしてたのよね」
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「何でMP3とか使ってなかったんです?」
「それはもう簡単な話で、――一般的に使える携帯型のプレイヤーが当時無かったのよ」
「そうなんです?」
「今からだと信じられない話だと思うけど、携帯型のメモリオーディオで、手軽にリッピングなど出来る機種がなかったの。
参考までに言うと、携帯型メモリオーディオのスタートは韓国のmpman(1998/2)なんだけど、これはMP3の著作権問題や特許ライセンスの問題でリッピングなどは自前でいろいろ揃えて行う必要があってね。
当時、デジタル系の情報雑誌では話題になったけど、一般が扱えるものじゃなかったわ」
「過渡期の製品ならではですね……!」
「日本だと、98年末に米国からのMP3再生機であるrioシリーズが、リッピングなども出来るソフトを付属して発売。PCが必要である、という機器だったから、一般への普及は弱かったけど、このあたりからメモリオーディオの需要が出て来たのね。
ちなみにこの時期のメモリオーディオは32MBが基本」
「少ないですね……!」
「そうね。でも、メモリが安価になれば化ける……、という予感が皆の中にあって、さてどうなるか、と思っていたらアレが出たの」
「アレ?」
「iPod(2001)メモリオーディオの進化を待っていたらHDDで来るとか、いきなり豪快なひっくり返しを感じたもんだけど、でも時代は”大容量デジタルオーディオ”になっていった訳ね」
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「えーと、ではOSAKAは……」
「上巻が1999/2、下巻が1999/3。しかも劇中は1996年だから、メモリオーディオは存在してないわね」
「そのあたりもあって、MDだったんですか?」
「実際の部分は後で少し面白いネタを聞かせるけど、前に述べた通り、MDは編集、加工が行える媒体だったの。
つまり、曲に対してのカットやペースト、一定箇所への高速アクセスとか、そういうものが可能で、”自分の好きな形に出来る・即座にアクセス”という意味では、今のメモリオーディオと変わらないのよね」
「ディスク媒体なのに、その上でトラックの加工が出来るとか、……ちょっと不思議な感ありますね」
「また、圧縮率が高いデータ形式のATRACを使用していたから、携帯プレイヤーでも内部にメモリを持っていて、十秒から三十秒くらいの”先読み”データを保管していたの」
「? 何に使っていたんです? それ」
「音飛び防止」
「アー……」
「携帯プレイヤーでディスク回してるから、当然、音飛びは起きやすいのよ。それを先読みデータを構えることで、無くしていたのね。だからMDユーザーは、音飛び経験ほとんど無い”頑丈なメディア”ってイメージがあると思うわ。
実際、MDについては、現状でも”劣化がなく、ほぼ永久保存可能”って公式が明言してるわね」
「凄い媒体なんですね……」
「物理媒体として、一種、究極に近い進化してたと思ってるわ。
一方で、圧縮率が高いから、CDに比べても音質が悪いと、そういう意見もあるわね。
そういうタフで使いやすいけど、ちょっと解りにくい程度に下がる? みたいなメディアだった訳」
「何となく思いましたけど、OSAKAでMDを使っていたのって……」
「格闘とか、派手にやっても音飛びしないし、磁力や電気食らっても大概大丈夫だものねー。ホント、頑丈メディアだったわ、MD」
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「――で、何かさっき、面白いネタとか言ってましたけど、何です?」
「ええ。実はMDがMDになっていたかもしれないって、そういう話」
「ンンン?」
「そう、つまりメガドライブ……、って訳じゃないけど、”ROM音源”になっていたかもしれないの」
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「??? どういう事なんです? メモリオーディオがまだどういうものかもよく解ってなかったような時代に、想定していたって事なんですか?」
「いや、メモリオーディオじゃなくて、ROM。解る?」
「…………」
「……アー! 基本、CDみたいに書き込み一回だけ、みたいな」
「そういうこと。焼いたら基本、焼き直しはないのよね的なROM」
「……何でそういうアイデアが?」
「ええ。実は未来をかなり先読みした情報がね? 遙か昔にあったの」
「それは――」
「旧アスキーが出していたパソコン雑誌LOGIN、1988年1月号ね」
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「また凄くピンポイントな処に来ましたね……」
「そうね。でもこの新年号の特集の一つは”国際科学技術娯楽年間 1988-1999”。マー漢字が難しそうだけど今後十年の科学技術やゲームとかがどう進化していくか、予想して遊ぼうよ、ってネタだったのね」
「どんな内容だったんです?」
「まず、LOGINでは、連載記事としてサイエンスライター鹿野司さんによる”オールザットウルトラ科学”というものがあったんだけど、その鹿野さんが、序盤数ページを使って、超伝導やLSIの集積技術の進化について語ったの。
その中に、メモリについての一節があってね。こう話されていたわ」
――自分用のデータやプログラムは、ギガビットRAMを使用したメモリーカードに入れて持ち歩くだけでいい。
――ディスプレイに関しては、(中略)ヘッドセット型で、網膜(あるいは目のレンズ上)に直接、映像を再生するシステムが開発されるかもしれない。
――たとえば録音(中略、ギガビットメモリの話を経た上で)キャッシュカードのサイズの中に、スピーカーと録音再生機能をつけてることだってできるだろう。
「予言が的中してる感ありますね……!」
「まあちょっと箇条書きマジックあるけどね。ギガバイトじゃなくギガビット(128メガバイト)だったり、鹿野さんはデータ圧縮についての予測が無かったから、ギガビットメモリの中に動画データはMURIだろう、って見ていたし。
――でも、88年1月号。詰まり発刊日は87年末の自分にとって、これはスゴくショックな内容だったの」
「記憶媒体がメモリに変わるって、ちょっと信じられないですよね……」
「87年末って言ったら、まだメガドラも発表になってないわ」
「……興味本位で聞きますが、ゲームとかの歴史的に見て、どんな時代です?」
「1987年末って言うと、ファミコンだとこんなのが有名処ね」
・ファミリーテニス
・銀河の三人
・カルノフ
・ファイナルファンタジー
・ウィザードリィ
・メタルギア
「……ビミョーに歪んだチョイスですね」
「まあそんな処よ。
あと、1988年2月にはドラクエⅢね。
ちなみにPCエンジンは1987/10に出たばかり。
パソコンで言うと、X68000が1987/3でスタート。
そういう時代ね」
「えーと、この頃のゲームの容量というと……?」
「ドラクエⅢが4Mビット。ギガビットだと、その250倍(256倍)ね。
つまりドラクエⅢが250本分、一つのチップに入る時代が来る、と予測されたの」
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「今だと”成程-”ですけど、そういうものが無い時代に”十年後にはこうなっている”はシャレにならんインパクトありますね……」
「そう。コレは凄く記憶に強くてね。だから十年後が迫る時期、読み直したりして、確認したもんだわ。当然、OSAKAを書く前も見て、そこで思案が分かれたの」
「ROMのオーディオに行くか、現行ベストのMDで行くか、ですね」
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「まあ結論としてはMDになったんだけど、これはまた、98年前後がどういう時代だったか、って言う話になるのよね」
「アー、確かに」
「98年だと、PCのハードディスクは平均容量4.3GB。バイトだから、ギガビットRAMの40倍弱? 88年の予想を遙かに超えてるわね」
「最大容量で40Gくらいとか、そんな時代でしたね……。でも、88年の予想を大きく上回ったんですね」
「そう。でも、RAMはそうじゃなかったの。USB規格自体は96年にスタートしたけど、USBメモリは2000年にスタートで最大64MB。
メモリーカードはPC用じゃなくてカメラ用が主で、たとえばSONYのメモリースティックは1998/9からスタートだけど、これは4MB、8MBと言った処ね。
つまり”メモリーとしては、88年の予想に満たなかった”のよ」
「難しいですね……!」
「小型ハードディスクを使おうか、ってのもあったけど、それやったらiPodの予言者になってたかもねー。
でも舞台が96年となると、ちょっと無理があったわ。
ROMカセットに入った音楽を、というのは、読者の理解の外にあると、そう判断した訳」
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「……未来予想の難しさですね!」
「そうね。現実と追い付き追い越したり、方向が変わってみたりといろいろよ。
だから昔は、OSAKAを読んだときにMD使ってるのを見て”先が読めて無かったなあ”と思ってたもんだけど、今になってみると”コレはコレで格好いいよね”って思うし、いろいろと考えてみたくなるわ」
「円盤メディアですからね。ちょっとそれだけで雰囲気いいですよね」
「――でも、そのLOGIN、ホントに先見性高かったのよ。他の記事では、未来のゲームとして、
――ゲームディスクには世界中のマップが入っている
という、リアルタイムで世界が常に動き、プレイヤーがその中で生活していくネバーエンディングなゲームについて語られてるの」
「今で言うオープンワールドだと思いますが、それでさえも”世界全部”は出来てないですね……」
「そう。そしてこういう知識や未来予想が、1987年、つまり12歳の私にとって”未来はこうなるもの”と示してくれていたの。
――解る?
私がホライゾンで”世界を作ろうとした”のって、つまり大人になったとき、ゲームとはそうなっているものだろうから、準備しておこうって、そういう意味でもあったのよ」
「今、実際、オープンワールドなゲームが、普通にありますよね……」
「見事に予言は当たっていた訳と、そう思うわ」
「MD話から、思わぬ過去話に行きましたねえ……」
「そうそう。何から何まで理由があって、繋がってるのよね。
誰でもそうだと思うわ」
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