『OBSTACLE OVERTURE』オブスタの発案について


「今回の話は、オブスタクルシリーズの発案というか原点についてです。何でも突っ込める便利枠。世界は滅びるけど受け継がれもする。そんな変わった世界観は何処から生まれたんでしょうか。そんな話ですね」


「……前口上述べながら思ったんですけど、オブスタってCITYが出来たときに、間を埋めるように生まれたんじゃないんですか?」


「それがまあ、複雑な処があるのよ。昔の資料とか見つつ、流れを確認していくから宜しく頼むわ」


「何か、思ったよりもテキトーな始まりですね今回……」


「いやあ、実は別に昔のいろいろについて語ろうとしたら資料が足りなくて”アーコリャこのネタ保留だわ”って感じになったんだけど、ノルマはあるから急ぎでコレ書いてんのよね。

 二十五周年とか随分テキトーだけど、まあこんなものだから後続の作家陣も気楽に行くといいと思うわ」


「言い方! 言い方!!」


「――で、オブスタって、いつ頃にシリーズが出来たんです?」


「いや、中学二年の時、クロニクルとホライゾンの原盤作りつつ、他の世界も大体の案は出来てた訳ね」



・FORTH

 :現代(中学二年次の自分としての現代)

・旧EDGE

 :近未来。”クロニクル”。後にAHEAD

・旧AHEAD

 :遠未来。外宇宙。”神々”。GENESISにおける神代。後にEDGE

・GENESIS

 :超遠未来。ホライゾン



「このあたりまでは確定していたの」


「元々はCITYが無かったので、OBSTACLEも無かった訳ですか」


「そうね。でも、それがまあ、高校時代にオブスタ枠が入るのよ」


「? CITYが無いのに? どういうことなんです?」


「自作ゲーム」


「怨念帳が作られる前に、ノートじゃなくてルーズリーフ派だったのね。それでGENESIS-TRPGのルールやアイデアとかを書いたり、またはワープロでルーズリーフにデータを印刷していろいろ作っていたわけ。

 それで高校の時、X68000を所有して、自作ゲームとかの道が開けたの。

 更にそこにメガドラも所有したから、それまで自作小説や自作TRPGルール専みたいな活動してた処に、一気に”ゲーム企画・作成”みたいなものが入ったのね。元々、ゲーム企画志望だったから、そっちの比重が一気に跳ね上がった感じ」


「なかなか濃いですね……!」


「でまあ、当時のゲームって、”家庭用・パソコン・アーケード”の三本柱だと思うんだけど、そこで自分の方としても、いろいろ企画とか立てる訳。

 だけど、やはり当時のゲームだとこっちが考えてるような世界観を全部突っ込むようなことが出来ないのよね」


「言いたいことが段々見えてきました」


「そう。つまり”使い切り”の設定や、アーケードゲームクラスの短いストーリーがどんどん出来ていったの」


「――で? そこでオブスタ枠が出来たんですか?」


「いや、まだまだ」


「? どういう?」


「ええ。さっきも言ったように、高校入った後、うちにはX68000とメガドラがやってきて、マー一年くらいは基本的に遊んでた訳ね。

 物語を作ったり、GENESISのTRPGシステムの方は延々と続けながら、ゲームの方は日々進化するゲームのムーブメントに溺れたような感じになってた訳よ」


「そうなんです?」


「当時は1990年? 神々読んでる人だと何となく解ると思うけど、メガドラはゲームの供給が安定して、十一月にはスーファミが出るのよ。ゲーセンに行くとファイナルファイトや雷電が稼働していて、次から次へと激しい変化が生じてたの」


「…………」


「……よく考えたら、翌年にスト2が稼働始める訳だけど、あのときに高校二年だったってのは凄まじい幸運だったかもね。三年生だったら受験期直撃だし、一年だとゲーセンでは気を遣う学年だし」


「幸運というか、ある意味”運の尽き”な感ありますね」


「ええ。でも私は餓狼伝説やキングオブドラゴンをやっていたわ……」


「何でそうヒネってるんですかね……」


「ハイ話戻しましょう」


「何か巻くわね今回」


「いや、さっきオンライン会議とか言って、担当さん達と4/5くらい関係ない話してたじゃないですか」


「潤滑剤! 潤滑剤!」


「まあそんな感じで、ゲームの方で一年遊んだとして、それが小説の方のオブスタにどう影響を与えてたんです?」


「うん。ゲームで遊びつつ、企画の方は立てて行ってたのね。それで一年が経過した頃、”これは一つ、何か作らないと駄目だな”と、思考が切り替わったの」


「アー、真面目にやる気になったんですね」


「感じ感じ。だから夏休み、うちの実家の工房の空き室借りてね。そこに68持ち込んで、泊まり込みで作業したの。

 とにかく無理なものは作らないように、ってことで、ドットイートというか、塗りつぶしゲーム? そういうのを作って」


「出来たんです?」


「音楽無いけど動くのは出来たわ。敵も単調なもので、4面1ループみたいな」


「おおー……」


「いや、自分の実力に合わせて計画がガンガン”下がっていく”のは、かなりヤレるわね。元々はサイドビューでやろうとしてたんだけど、ジャンプ軌道を”どのようにしたら正解か”が解らなくなって、ここで迷ってると駄目だな、という処から、トップビューに変更してジャンプ自体を無くしたり」


「初期に検証しておかないと駄目な処ですね。でも、どんな内容だったんです?」


「ええ。――世界を塗り替える、ってネタ」





「アイデアラフでも、とっておくものねー……。何枚か出てきたけど、日に当たってた時間が長くて大半はボロボロね。

 タイトルは”ボムビュー”。現物は残ってないけど、これで思い出せる部分もあるわ」



・男女二人のキャラは、点対称に動く。 

・フィールドを移動すると、フィールドが塗り替えられていく。

・塗り替えていくと、古いフィールドのゴミがカウントされ、10カウントごとにボム一発。

・ボムをぶつけると敵を倒せる。

・フィールドを塗り替えていくと、色を失った精霊が復帰していく。



「こういう感じ。クリアすると精霊が喜んで、ボムを大量に降らせることと、世界が変わる=viewってのを合わせて”ボムビュー”ね」


「何となくゲームになってるっぽいですね」


「いや、ぶっちゃけあまり面白くないのよね。課題で作った感というか。一画面アクションって、ホント難しいわ。

 でもまあ、バグもありつつ動いた時は嬉しかったし、出来た、っていうのは大事なことよね」


「――で、このネタが、どうなったんです?」


「うん。夏休みも終わりに近くなって、ついでって感じで気楽なゲームを何本か作りながら、友人らとドラゴンスピリットやパロディウスをクリアしたりでね。いやあ、上手いヤツってのはホントに上手いわよね」


「誰が遊べと」


「いやまあボーナスタイム。でもプログラムはしてたのよ?

 ラスタースクロールのやり方解らないけど、68のLINE文やPAINTとかはほぼ瞬間表示だからね。

 それ利用してコース書いて、短パンTシャツの兄貴がレースする=アクセルはボタン連射とかいう、体育会系レースゲームとか作ってたし」


「ウケ狙いは当時から好きだったんですね」


「まあそんな処。でも、このボムビューの主人公二人が、何か気に掛かってたのよね」


「そうなんです?」


「ボムビューのゲームはフツーの塗り潰しゲームだったんだけど、塗り替えていく世界が、


・草原

・森

・河原

・街


 って感じだったの。でまあ、ゲーム中の設定間違えてね」


「間違え?」


「うん。――綺麗な世界を、枯れた世界に塗り替えるゲームになっちゃったのよ」


「バグですよね?」


「ええ。もう、早期に解ったバグ。塗り替えルーチン入れて動かしたとき、緑の草原が茶色くなって”あ!”って、そこで初めて気付いたのよねー」


「気付かないものなんですか?」


「いや、ドットで背景チップ描くじゃない? そのとき、綺麗な草原と枯れた草原、描く順番はどういう風?」


「そりゃあ、綺麗な草原を先に描いて、その後で枯れた草原です」


「…………」


「その順番で組み込んじゃったんですね?」


「そういうこと。”初めに汚い方を表示する”って、何か思考に入ってなかったのよね、それが。――で、直そうかと思ったけど、意外に大工事で」


「そうなんです?」


「元々、塗り替えはBGのパレット変換で出来るかな、って思ってたんだけど、勘違いで、”塗り替えたBG”だけのパレット変換が出来なくて。だからBGを枯れたものに交換するようにしてたのね。でまあ、変に凝ってBGパターン幾つも作ったもんだから……。草原とか揺らさなければ良かったな的な」


「アー……」


「だからこう考えたのよ。

 ――4面ループするゲームにすれば、実は枯らしているんじゃなくて、四季のようなものを回して”流転”させていることになる、って」


「…………」


「……バグの言い訳ですね!」


「言い方。言い方」


「マーしかし”解釈”ですよね」


「そう。主人公達は枯らしているようでいて、実は世界を正常に回して新しいものにしている。――何となく神道とかの、ケがハレになる理論よね」


「一周転じて、ってヤツですね」


「そういうこと。でも、ループゲームにして、一周で何となくエンドをつけたけど、逆に言うとこのゲーム、設定的には”終わりが無くなった”訳」


「アー……」


「だからこの主人公二人について、物語としたら決着が無くなってしまったのね」


「何となく話が見えてきました」


「まあ聞きなさいって。――それで夏休み終わって、またいつものような企画やアイデア書きためたり、ワープロに小説やTRPGのシステムを打ち込んでは修正する、と、そんなことをやっていたんだけど、あるとき、不意に物語のプロットみたいなのが頭に浮かんだのね」


「それは一体?」


「うん。ボムビューの主人公二人が、世界の端から逆端まで旅していく話」



・世界は急激に壊れていく

・世界の中に唯一の個性を持っているホンモノと、そうではないニセモノがいる

・ニセモノは世界が壊れていくのに気付かない

・”無”はニセモノから食っていく

・世界には、脈絡無く森や街、渓谷などがあり、場所に応じたホンモノが住んでいる

・ホンモノを集め、世界の逆端に行け

・世界の逆端では”世界の存続を決めるホンモノ”がいる

・しかし世界の崩壊を望むホンモノが、逆端を守り、主人公達を狙う



「主人公の男側、名前は”ヒノマル”。女の方は”サーナ”。

 最初のチェックポイントは世界の時間を扱う”時館”がある”時町”で、時間を管理する”時王”を倒すと、時間が”無”に食われてしまうけど、ニセモノは世界から時間が失われたことにも気付かない。

 ホンモノの面々はそこから先に進み……、と、次の渓谷抜ける辺りまでは書いたわね」


「何か無茶苦茶に、後に書いたもののネタが含まれてません!?」


「箇条書きマジックも入ってると思うけど、コレ、かなり面白そうよね。ネバーエンディングストーリーと飛んでもネズミの大冒険の影響強い気がするけど」


「言い方! 言い方!」


「しかし、ホンモノとニセモノの要素って、ここで出てたんですか?」


「いや、基礎的なアイデアは、EDGE(クロニクル)の原盤で、何となく出てたの。異世界側の方で戦闘すると時、無関係な人々が戦闘に気付かなくなるのと同時に、戦闘の影響を受けなくなる、という設定にしてたのね」


「概念空間が個人単位で適用されてる? みたいな?」


「そんな感じ。このとき、時間などもかなり無視されるマクー空間状態になってる、って感じで、その状態になってるのを、この”無”に食われるのと併せると、世界が崩壊していく恐怖感が出るかなって」


「気付かないのに消えていく訳ですね……」


「…………」


「末世!!」


「アー、今頃気付いたわね。ええ。私の中の”世界が滅びていく”のは、世界が”無”に浸食されていくパターンが基本なんだけど、その発想って、この時期に自分の中で組み上がっていったものなのよね」


「パターンで言うと、こんなバリエですか」



・世界が無に浸食されていくのが誰にも知覚出来ない=末世型

・世界が無に浸食されていくのを知覚出来る者がいる=ホンモノ、ニセモノ型



「大体そんな感じね。”知覚不能な滅び”は、やはり”新しい”と思ったし、ホンモノニセモノ型も、やはり新しいわよね。特にホンモノニセモノは表現が美味しいから、この後に書かれるTOKYOでも踏襲されるの」


「TOKYOの発想って、積み重ねがあったんですね……」


「”時館”も、ここで出して、面白いネタだと思ったのよね」


「あ、でも、疑問があります」


「何かしら?」


「これ、未完ですよね? さっきの話だと。どうしてです?」


「そうね。私の、それまでのシリーズ外としての初オリジナルであるTOKYOは書き上がったけど、コレは書き上がらず、途中で止めてるわ」


「それは……」


「理由は簡単。昔、中学校時代に勢いでクロニクルを書き上げた頃とは違って、今の自分にとって、書く内容に対する準備やいろいろが足りないと、そう思ったの」


「アー……」


「やっぱり、企画とか、ゲーム用のミニストーリーでも、それなりに経験になっていたのね。

 何となく始めてしまったけど、設定とかが全く足りないって”解った”訳。ホライゾンに挑んで挫折した頃よりも成長したもんだわ」


「じゃあ、設定を?」


「ええ。今は未完だとしても将来、これはゲームに出来たら面白そうだし、ちょっとキャラ設定ってのを真面目にやってみようってことで、世界各地のホンモノを設定立てて行ったのね」



・親父:サキマル

・ヒノマルの相棒で喋る頭骨:ヒグラシ

・サーナの相棒で喋る犬:イス

・主人公らの道筋を決める占い師:シン

・探検家:オルタード

・オルタードの助手で優れた計算手:ヒメ

・機械屋老夫婦:ロックとロール

・女海賊と参謀:ラップとグンシ

・空賊:フライト

・剣聖:景昇

・神機兵:バッシュ

・世界の真相に気付いているリングマスター:エン

・何故かホンモノなのに敵側につく:クルス



「他、敵とかいろいろ」


「CP率高いですね!」


「ぶっちゃけ、結構、後々に影響与えてるのよね……。オルタードとヒメの関係とか、ベルガーとヘイゼルに近かったりだし」


「というか、”濃いめの仲間を集めて、滅びていく世界を救う”なら、私達にも根本的な処で同じですね……」


「どちらかというと、クロニクルも同じだから、何となく自分の中にある基本テーマだったと思うのよね、そのあたり」


「――で、これの設定を作りながら、タイトルを考えよう、って思った訳」


「流石にボムビューじゃ駄目ですよね」


「そう。それでタイトルを考えたとき、元々が”面”クリアのゲームで、幾つもの要衝を超えていくことから、”Obstacle”って名付けた訳」




「エンの設定の一部ですが、……サインありますね」


「世界は流転するから、タイトルを円で囲もう、ってアイデアね。

 設定を見ていると、エンの前あたりでObstacleの名称を使い始めていて、エンのときに”円で囲む”……、ってシャレか!」


「落ち着いて。落ち着いて」


「ちなみにこのエン、リングマスターとして九元素を操るけど、キーボード叩くように指輪を動かして森羅万象をプログラムするのね。

 そしてこのエン、ホライゾンのあるキャラに、その術式イメージとビジュアルが引き継がれてるの」


「…………」


「アー! 竹中!!」


「まさかえろえろになるとはねえ」


「――で、この後しばらくしてから、”これまでのものを無視して、オリジナルで一作書こう”ってことでTOKYOを書くんだけど、世界観としては中学の頃に書いた不思議短編をベースとして、仕掛けとしては、未完で終わったこのObstacleのアイデアがかなり頭にあってね。いろいろ転用となった訳」


「……ある意味、未完な一方で、TOKYOの親ですね……」


「そうとも言えるわね。長編TOKYOは”時館”の事変だけど、それはObstacleで”時館”のある”時町”を超えた処までは書けていたから、だったら”そこまで”は書き切れると、そんな自覚でもあったの」


「――でまあ、後々、世界観とか仕切り直そうってなったとき、CITYとGENESISまでをつなげるのはどうしようって思ったら、もう、決まりでしょ?」


「Obstacleが、一作のタイトルから、シリーズ名に格上げした訳ですね?」


「そう。あの当時、怨念帳よりも昔の時代に作ったいろいろなゲーム企画や、そのためのミニストーリーを詰め込む枠としても相応しいわよね。これからのものだけじゃなく、ともすれば無駄にもなったかもしれない、夏休みのいろいろとかを詰め込んで持って行けるのはコレしか無いと、そういうこと」


「内容的にも、未完でしたが、クロニクルやホライゾンが新しいものへ変わるための道筋感ありますね……。

 あとまあ、何となく世界観につきまとう”滅びのシステム”も、ここで出来上がってた訳で」


「オブスタのOvertureが、世界観も登場人物も違うけど、流れとしてはコレがベースなのよね。世界各地の個性を連れて世界の端へ行く、みたいな」


「アー、成程。というか汎用効くベースみたいな内容ですよね。何でもありが基礎なだけあって」


「TOKYOも生んだものね。だからTOKYOが出来たとき、いずれホライゾンも出来るだろうって、そんな確信はあったのよ。でもまあ……」


「? 何です?」


「OBSTACLEって名前をつけた理由の一つがね。未完箇所が”大渓谷”を抜けたところだったんだけど……」


「アー、大渓谷=OBSTACLE!」


「まあそんなものよね。――こういうの見てると、現国のテストで”この部分は何故こうなってるのですか”みたいな設問、無意味よねー、って思うわ」


「何かよく解らんレベルで、ありとあらゆる処がナラティブ殺しになってますよね……」

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