『エアリアルシティ』「やたらと濃いキャラクターのバックボーン」
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「今回の話は、”整合性をもって動くキャラを作るには?”ということから深掘りして、チャート式のキャラ作成を紹介します。
こういう方法もあるんだ的に、どんなもんでしょうか、という話ですね」
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「最初に言っておくけど、今回、キャラの関係を深くするのにはキャラの過去を掘り下げる的な話をするのね。でも”それをやれ”っていう話じゃないから御注意。
一応、いずれ語る”キャラの設定の作り方”みたいなものにつながるけど、今回言ってることは自分の作り方の話でしかないから」
「他人にとっては見てヒントになれば良いというくらいで、”こうするといい”なんて、そういう話じゃないので……!」
「……と、先に言っておかないと、”川上稔が創作論でこう言ってる”みたいなのを食らいかねないものねー……」
「なかなか面倒ですね……」
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「さて、倫敦と言えば、敵側のキャラの深掘りというか、関係性が濃いのが特徴ですよね」
「ぶっちゃけ、ダーク系の話って、ダーク系ってだけで”キャラの深掘り・関係性が濃い”って読者が自分にバイアス掛けてる感無い?」
「言い方! 言い方!!」
「いや実際、キャラの作り方としては、35も倫敦も変わらないのよ。それが倫敦で急にそこらへんの注目がされるとなると、やはり倫敦の”カラー”が、まずそう思わせているとか、そんな感あるわね」
「身も蓋もない話が初手から来ましたね……」
「そう? でもジャンル効果ってそういうものだし、それを望んで読む人も多いからそうなっているのだろうから、悪いことじゃないわ。あとまあ、一応、倫敦では敵も味方もそれぞれの陣営で昔馴染みだったりいろいろと関係作ってるのは確かだし」
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「えーと、どういうことなんです?」
「それは実際? 方法?」
「どっちもで」
「じゃあ実際で言うと、自分の書く物語は”事件の進行”と”キャラクターの成長”がシンクロするものなんだけど、このどちらも、”キャラクターの関わり合い”で進行するというのが解っていたから。
そしてそれを深く、やりやすくするのは、キャラの過去の深化だと解っていたから」
「…………」
「……ええと?」
「解りにくかったかしら? つまりこんな感じ?」
・事件の進行
:誰かが起こすことで発生し、進行を開始し、誰かが加わったり、減ることで変化する。
・キャラクターの成長
:キャラクターの”現在の不足への気づき”が、他者との比較で生じ、何かを超えることで成長の自己承認が成される。
「つまりどちらにおいても、キャラクター同士の関係、接近や離脱が影響を与えるのよね。でもただキャラが近くなったり遠くなったりだと、意味が無いじゃない?
――影響を与え合うって、どういうことだと思う?」
「ええと、キャラの主張がぶつかったり、避けあったりすることです」
「ちょっと暑苦しいけど、まあそういうことよね。
キャラクターの主張、心情、本性があって、それがお互いぶつかって、影響し合うわけ。
良くも悪くもリスペクトし合う、って言ったらいいのかしら」
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「――で、それを深く、やりやすくするのが、キャラの過去の深化なんです?」
「何か疑問ある?」
「えーと、……キャラの過去を深化すると、どうしてキャラ同士の関係構築? それがやりやすくなるのか、と。
だって、各キャラの過去を深くしても、キャラ達全員の関係が深くなることになりませんよね?」
「そうね。各キャラの過去は、当然、そのキャラのものだもの。キャラ達全員の関係が深くなることにはならないわ。でも――」
「でも?」
「それって、スペックだけで話してるようなものなのよね」
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「じゃあとりあえずキャラの実態を見てみましょう。
これ、倫敦を書くときに使った主人公アモンのキャラ設定ね」
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名前:アモン
種族:魔神
職業:酒屋店員、バーテンダー
年齢:二十歳前後(詳細不明)
身体的特徴:
前髪に金メッシュの黒髪。髪は前髪以外後ろに流している。
翼は生えていない。
やや下向きに伸びた整った鼻筋と鋭い目付き。野生的な感じの美形。
ボクサータイプの筋肉質。
服装的特徴:
黒のジャケットと同じ色のトルーザー。インナーは白のシャツをラフに着込む。
トルーザーはサスペンダー吊り、戦闘前にサスペンダーを鳴らす癖がある。
表情的特徴:
常に不満気な表情。良く見せる表情は激昂と怒り。
笑い声の描写は無いキャラクター。
ときたま、はっとしたように焦りや驚きの顔を見せる。
また、クラウゼルといるときだけ嫌味な物言いをしたりする。
性格:
激しやすいが、重大事件でなければ固執しない。激して、はっと覚めるような感じ。よほど非常識なことがないとピーピーさわがない(クラウゼルを相手にしているときとか)大きな事に関わると、激情が腹の中に居座ったままになる。その激情の爆発力は「暴走」に近い。死んでもいいから任務を果たそうとするタイプ。
行動理念は「他人」。自分から首を突っ込むような性分ではない。自分と親しいものが、何らかの形で害を受けたとき、その無念を晴らそうとする。また、自分の存在が否定されようとしたとき、抵抗という形で行動する。
善良ではあるが、表立って行動しようとしない。人に誉められるのを嫌う。自分から人を遠ざけていく癖がある。親しい友人、もしくはちゃんとした大人でなければそのあたりをわからないため、倫敦での評判はさほどよくない。
「すまない」
が口癖である。
経歴:
・1913:神魔戦争において父親(魔神侯爵アモン)戦死、母親は幼児のアモンをかばって殺害される。アモン自身は最高神(後の警部)によって保護。このあたりの記憶はおぼろげ。
・幼少時「戦災難民地区」であった倫敦に何が何だかわからないまま降ろされる。自分と同じような境遇の者達と出会うが「自分が生き残るために母親を死なせた」という思いが強くなる。戦争の被害者であり、加害者でもある。自己否定。ゆえに、魔神族であるようだが、翼も生えず、契約能力も持たない。
このあたりから無鉄砲な喧嘩屋気質が出てくる。大人相手でもムキになる可愛げの無いガキといったところか。
・1923:十歳前後でフィルの率いるストリートチルドレン「HI-WIND」と合流。自己否定がさらに強くなっている。身体的欠陥の指摘による激怒で、喧嘩をすぐに起こす。ストリートチルドレンの中でも、少し浮いた存在となっている。喧嘩屋としての才能開花。
・1928:十五歳前後~。倫敦のストリートチルドレン四派が統合戦争を始める。アモンの重要性が注視されるようになる。大人相手でも怪我や痛みなどかまわずに殴りかかる姿勢はたしかに魔神か。
段々と周囲に人が集まってくるようになる。闘い方を教えたりすることによって、人付き合いの輪が広くなる。
ただし、戦場においては単騎特攻、誰にもついていくことができないほど、闘いの中心を求める。仲間の何人かは死亡しているが、アモンだけは生き残る。「ニア・デス・ジ・アモン(死にたがりのアモン)」の呼び名が囁かれる。魔神というよりも死神か。
・1930:十七歳前後~、「HI-WIND」の中ではフィルの右腕的存在になっている。他の団員の大半は「近寄りがたいけど頼れる男」としてアモンを見ている。ストリートチルドレンの抗争激化。警部達が出張るようになるが、派手な接触は無い。
アモンに惚れている娘の存在、ドリアッドの少女アイレン。「HI-WIND」内の女性メンバーの間では評判の手弱女(古いな)。アモンはその存在をやや気に留めている。
アモン、最終戦の直前、「HI-WIND」を抜ける。誰も自分についてくることなどできず、死を撒き散らしているような感覚を恐れた。人のしがらみが必要以上に大きくなってしまった今、自分が死ぬならいいが、他人が死ぬことには耐えられなくなっている。
・同時期:抗争最終戦前夜、マフィアと組んだ相手側の謀略によって「HI-WIND」壊滅。フィル達主力は逃亡するが、アイレン「アモンの女」と思われ、惨殺、死体はアモンの家に投げ込まれる。
一人で戦争を起こすアモン、マフィアおよび敵チームの主力を叩き潰した時点でスコットランドヤードに捕縛される。銃弾を数発受けていたが、やはりその程度で死ぬような魔神族ではない。警部は彼を幽閉しようかと考えるが、今回の戦闘理由、相手方の動きや正体、フィル達との駆け引きによってそれを中止する。
アモンは自分が許された理由を知らない。
・現在:保護観察という形でアモンはジョナサンの酒屋へ預けられる。自己否定の考えは、じっと体の中に根づいてしまっている。自分のことを死神と自覚。
周囲に何事も起きないため、表向きは平和に暮らしている。
主な疑問点:
1:アモンの精神的欠陥
死にたがってるようでいて自殺しないのは、結局自分に甘えているからだと断言する。
アモンの自己否定は、「強くはあるが完全ではない」のである。「人が死んだからといって悩むことなく生きていけんのか?」という問いかけの答えがそこに存在する。自殺などしたら、彼らの死を無駄にすることになる。
誰かに必要とされ、その者が失われることなく自分に付いてくることができるならば、また、それを恐れずに求めることができるならば、アモンの精神的弱さは克服される。
2:なぜに死地を探す?
自殺ではなく、他人の手にかかるべきだという考えは、アモンが今まで関わってきた人間たちへの義理に近い。まっとうな死に方が許される生き方をしておらず、それでいて自殺もできない。
「自分が、彼らのことを忘れて平和で生きることなど許されない」
という思いがある。ゆえに、彼らと同じようになることを望み、死地を求める。これは他人に自分を預けているということで自立していない。
その思いを忘れるのではなく、離れることさえできれば良いのだろう。
3:他の人から見たならば?
他人はアモンから離れている。「近寄りがたい」し「近寄らせてくれない」のである。かなり強引な性格の者でなければ、傍においておこうとも思わない。
そして、近くにいる者達でさえ、アモンには同情する以外のものを感じていない。前述までの理由を理解しても、
「それならば仕方ないか」
と、アモンの内部に踏み込んでこなかったのである。唯一、その鍵となりえたアイレンさえ、己が闘いを求めるのをやめようとした矢先に失っている。
他人から見れば、アモンは悲劇的な存在であり、同情することはできても、叱り付けたりすることなどできないのである。だから、彼は、同情されることに対して「すまない」としか言えない。
4:解決策は?
クラウゼルが鍵だろう。但し、幾つかの死線を越えない限りは無意味。
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「長――!? 馬鹿ですか!?」
「そう言われると馬鹿かもね……、って思うけど、大事なのは”長い”ことではなく、物語に必要な要点と、作り手側として”キャラを把握していく段階”がこのキャラ設定にはあるということなの」
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「どういうことです?」
「このキャラ表、グダグダ書いてるけど、各要素を抜き出して見ると、こういうことよね」
1:名前
2:種族
3:職業
4:年齢
5:身体的特徴
6:服装的特徴
7:表情的特徴
8:性格
9:経歴
10:疑問点
「項目としては10個なんですね」
「あまり多くてもよく解らなくなるものねー」
「――で、段階的というのは?」
「ぶっちゃけここらへん、後で”キャラ設定の作り方”か何かでまとめたいんだけど、まあ前哨戦として聞いておいて頂戴。
――じゃあ、段階として考えるけど、この10項目、このようなグループに分けられるの。
・1~6
・7
・8
・9
・10
「グループって言ってる割に、最初の1~6以外がグループになってないですね」
「言ってみたところでそんなものよ。でも、なんで1~6が一つにまとまるか、解る?」
「えーと……?」
「――あ、さっき言った内容です。1~6までは、そのキャラの外見を含むスペックです。つまり、見た目や、数値とかで表せるものですね」
●
「そうね。1~6まではそのキャラの第一印象を作るもの。骨組みとも言えるわ。
履歴書的、能力的な要素でもあるわね。
じゃあ、この”骨組み”が出た上で、7以降がどのようなものかを考えてみて」
「”骨組み”が出来た上で……?」
「ええ、外見的要素が出来たわけでしょう? じゃあ、7からはどういうことになるの?」
「ええと……? 外見が決まったから……」
「…………」
「アー! 7の表情的特徴って、外見が決まってないと想像出来ないんですね!」
●
「そう。1~6の並びもだけど、基本的には外見が決まったからこそ、その応用とも言える表情の特徴の話が出来るわけ」
「表情の特徴って、どんなものです?」
「1~6までの項目が埋まっていれば、そこにキャラが立ってるでしょ? だったら、作中でそのキャラが喜怒哀楽や、何かトリガーが入ったときにどんな表情するか、メモしていくわけ。
”笑うときにキシシって言う”とか、”泣くときはマジ泣きする”とか、そういうの」
「つまり外見から、演技のイメージを作る訳ですね?」
「そうそう。それで印象的なものや代表的なものが出来たら、次はその表情から性格を逆算する訳」
●
「表情から性格を逆算……!? 性格を先に考えて表情をイメージした方がいいんじゃないですか?」
「じゃあアンタ、”性格”の語彙ってどのくらいあるかしら?」
「え? ええっと?」
「あのね? 性格を示す語意って、言葉を連ねるので無ければかなり少ないの。いや多い、って言う人はそれで問題ないから頑張って。でもフツーに考えたら、多くのキャラクターに”優しい”とか、”冷静”とか、ありきたりなことを書くことになるのよ」
「アー……、確かに」
「でしょ? じゃあ、ありきたりで複数キャラにかぶった”性格”を見ながら、キャラの表情をイメージしたら、どうなると思う? ほとんどの場合が似たような表情になるわよね?」
「だから、先に表情を作って、そこから性格を逆算?」
「そう。文字から考えたらありきたりな”攻撃的な性格”も、先に表情のイメージがあると違うわよね」
「コツはあります?」
「トリガーで性格が変わるときを捉えておくということかしら。つまり”地雷”や”アガる”ときの条件を設定するということね」
●
「さて、表情イメージも性格も出来たら、次は来歴。
これは、生まれたときから作中スタートまでの間、どんな人生を送ってきたか、ね」
「……どんな風に書けばいいんでしょうか」
「そのキャラが居る世界をどのくらい考えているか、というのがあると思うけど、とりあえず、このくらいはあっていいんじゃないかしら」
・学歴(小中高大など)をどう過ごしたか
・両親、家族との関係
・友人との関係
・社会的事件への対処
・恋愛、結婚の有無など
・性格の中、特徴的なものやトリガーがどうして生まれたか。
「こんな感じね。概要で良いし、細かく書く必要も無いわ」
「何となく解りましたけど、来歴が順番としてこんな位置にあるのって、つまり”来歴の各イベントに対してどのような反応をしたか”が、性格やトリガーが決まってると設定しやすいからですね?」
「その通り。
性格のときと同様、来歴も、頭絞って考えたところで、多くのキャラにはありきたりな学歴を経るような人生しか思いつかないものなの。特に、急いでるときや、複数キャラを考えていくと、頭が麻痺してアイデアも出てきにくくなるわ。
だから先に性格や表情などをイメージできるようにしておいて、平凡な来歴に対し、少しでもそのキャラらしい色を与えるのね」
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「ええと、最後、疑問点というのは?」
「ええ。来歴も出来ると、大体はキャラが”固まる”訳だけど、このキャラが作中において何を自問したり、問いを投げかけられるだろうか、と、そんなものをメモしておくの。
また、頭の中に何となくある物語に対し、このキャラは大丈夫だろうか、ここらへんが不安というか、どう動くか疑問に思うという、そんなこともここでメモして、可能であれば解決策も記しておくの」
「――ここは、”作者の、そのキャラに対する疑問”でもある訳ですね?」
「そう。それがあると、プロットやあらすじを考えるとき、”書くときの障害”や、”ドラマとして押さえるべきところ”が見えてくるのね。
だからこの疑問点については、ここまで作ったキャラを、これから作り上げる物語にエントリーする際のアクセントや、懸念点を書いて、キャラと物語をつなげるためのアシストとする訳」
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「……と、そんな感じで、キャラが出来ました」
「チャート的ではあるけど、これで過去が深く作れたでしょ?」
「過去どころか、他のいろいろなものも出来ましたね……!」
「そうね。人によっては逆の順番で考えるかもしれない。だけど過去が出来ると、自然とキャラの性格やリアクションも出来ていることになる訳。なぜなら、過去というのは、そのキャラの”作中スタートまでを作った設計書”だから」
「アー、まあ、確かに」
「トリガー的なものは、特にキャラのリアクションを強く作るわ。
――で、話を冒頭に戻すわね? このようにして過去の部分を深化したキャラ達が、では、物語の中で動き出したら、どうなるの?
アンタ、先にこういう質問をしたわね?
”各キャラの過去を深くしても、キャラ達全員の関係が深くなることになりませんよね?”って。
でも、その答えがここにあるでしょう?」
「……えーと」
「……つまり、過去を深掘りされたキャラ達が、過去に根付いた理由をベースに、その性格や表情、態度をもって、相手や事件に反応し、お互いの主張に自分の見解を持つことになりますね……」
「そう。過去や、トリガーが、事件や、他のキャラの言動に対し、無視することも含めて”無反応”を許さない。
無視するにしても、理由が明確に出てくるわけ。
――”各キャラの過去を深くすることで、キャラ達全員の関係がなる”のよね」
「――暑苦しいですね……」
「アンタ特にそういうキャラだからね?
でもまあ、そういうこと。――言い換えるなら、どのような言動、判断においても、そのキャラとしての”バックボーンがある”ということになるの」
「外見の時に”骨組み”であったものが、性格や来歴を重ねたことで”バックボーン”になった訳ですね」
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「キャラクターの判断が、その場の出たとこ任せでは無く、過去やトリガーによる理由が存在する。
これは、過去を深掘り設定して、性格なども結びつけたキャラ設定だから出来ること。
もしもこういう設定を作らずにそれをやろうとしたら、かなり大変ね」
「……”そういうものが発露する瞬間”を全て逃さず、しかも矛盾が無いように反応をしていかないといけないですからね」
「ええ。でも過去があって解っているならば、自信をもってそれが出来るわ。
これは面白いことに、重厚な設定を作ったようで居て、”ありとあらゆる判断、状況に対し、キャラがどんな反応をするかを明確に出来る”から、つまりキャラが自由自在に動いたり、どんな状況にぶっ込んでも大丈夫と、そういうことになるわけ」
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「なお、キャラの判断などを過去やトリガーに由来出来るほど作り込んでおくと、面白い副次効果が出るの」
「? 何です?」
「ええ。そのキャラの日常的な動作や仕草に、個性が出てくるの」
「たとえば?」
「そうね。例えば小さな娘を失った親だったら、ショッピングモールで家族連れに視線を止めてしまったり、キツめの仕事人生送っていたら、横断歩道の信号が点滅してるのについ駆け込んでしまったり、とかね。
そういう”過去のあるキャラだからこその、言葉にしなくても発される言動”って、結構大事だし、書いていても気分がアガるのよね」
「アー、確かにそういう”気づく人だけ気づいてくれ”みたいな仕込みは、やっていてアガりますよね」
「そうそう。でもまあ、これって、物語には必要ではないことでもあるの。キャラの何気ない日常の仕草や反応は、キャラに愛着を持たせる手法ではあるけど、それが物語としてキャラの反応としての伏線になるのでなければ、無駄なことだものね。でも――」
「でも?」
「そのキャラが、これまでの人生を生きてるなら、そういう部分は発露されて当然よ。そのことを忘れないでね」
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「……でまあ、そういう日常段階から自分について暑苦しいキャラ同士が、倫敦ではぶつかり合った訳ですね」
「どいつもこいつも事情持ちって感じだけど、そういったものをプロットに合わせて、疑問点の部分をドラマにしていったのが倫敦」
「35では、これが”マイアー・エルゼ”間だったのに対し、倫敦では多数のキャラが、それぞれの要素で衝突しあったり、理解し合ったりしていく訳ですね」
「そう。敵対だけじゃなくて”解るところは解る”。だから、単純に敵とは言えず、立場の違いで対抗しあってると、そういう話になるのね。
それもこれも、どのキャラもある程度の密度を持った過去があってこそ。
このキャラ作りのインパクトは結構あって、当時のメディアワークスの次長さんから、忘年会の時に呼び止められて熱く語られた、なんてこともあったわ」
「濃いですね……!」
「ええ。そのときに何となく思ったの。こういう細かい作り込みは無駄と思われるかもしれないけど、こんな風に熱心に拾ってくれる人が一人でもいるなら、寧ろやった方がいいんじゃないか、って」
「作り手としての満足感を何処に設けるか、ですね……!」
「そうそう。だからまあ、初期のTOKYOや剣神壊、35なんかでもやっていたことではあったけど、以後はどのキャラにも、作中に関するような部分だけではなく、それ以外のバックボーンも含めて設定するようになったのね。
それも、どのキャラもお互いに関わり合うような、個人としての縦糸のバックボーンだけではなく、横糸として絡み合った関係を作るためのバックボーンを作ろうと、そう考える流れになった訳」
「全面バックボーンというか、どのキャラも関わり合うパズルのようなフルバックボーンの始まりが、倫敦であった訳ですね」
「まあそういう訳だけど、ここらへん、いずれキャラ設定やプロットの作り方と絡めて言わないと、全体作業が見えてこないんじゃないかしら」
「ここで疑問点を出してオチにしようとしない……!」
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