『奏(騒)楽都市 OSAKA』技能表記!
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「今回の話は、今やフツーにある”ゲーム的要素を世界観に組み込んだ小説”の一つとして、99年に出たOSAKA。そこで文体として使われていた”技能表記”が、さてどのようなものだったのか。そのシステムや表現をみてみようというものですね。マーやりたい放題です川上作品。そんな話ですね」
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「OSAKAというと、やはり技能表記ですよね」
「そうね。描写の代行文章としての技能表記。OSAKAの特徴の最大と言って問題無いと思うわ」
「ちなみに技能表記というのはこういうものです」
「つまりキャラの行動をシステム化している、という世界観で、キャラの行動描写をそのシステムによって代行してる訳。一種の当て字的置き換えなんだけど、読んでいると段々これに慣れて来て、独特のリズムや勢いが出てくる、という仕掛けね」
「でまあ、何でコレを思いついたんです?」
「何でだと思う?」
「やっぱり、格闘とかあるので、格闘ゲームとかを紙上再現したかった?」
「うーん、かなり惜しいわね。実はコレ、元々が”魔法”的なものだったの」
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「さあ、じゃあちょっと古い話に行くわね。デビュー前の話」
「お? お? 随分と飛びますね」
「そうね。実はOSAKAを書く前、OSAKAには二段階に渡る原盤があったの」
「ええと、一つはデビュー前に書いていたOSAKAですよね。では、その前は……?」
「ええ。それがタイトル”剣神壊”。ケンシンカイと読むもので、コレ、何と世界観はうちらGENESIS、ホライゾンの極東上なのよ」
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「…………」
「……吹っ飛びましたね!」
「そうね。この剣神壊、二つあって、一つはOSAKAの原盤になったもの。もう一つは内容かなりハードな復讐もので、そっちはホライゾンの作中に出た筧・十蔵の設定やラストに引き継がれてるわ」
「アー……、筧・十蔵! 何か変に情感ありまくりのキャラだと思ったら、その頃から!」
「ホライゾンはホント、連綿とした作り込みや変化で出来てんのよねー……」
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「じゃあその、OSAKAの原盤の方は?」
「いやもう、解りやすい一冊完結。水戸・光圀の諸国行脚の世直しで、ある村にて行われている巫女の封印儀式を潰し、巫女を自由の身にするってプロット」
「アー、確かに解りやすい……」
「そうね。海から来る亡霊達を治めるために舞による鎮魂術式に一生捧げる巫女。それを悪習として、亡霊達の主核を潰して、一方でその戦いを模した儀式戦にて、勝つべき村側の代表を倒すのがミッション」
「ミッション?」
「ええ。この剣神壊、うちらホライゾンの世界を部隊としてるけど、そのベースは作成中だった自前TRPGシステム、GENESIS-SYSTEMのYAMATOサプリメントに基づいてるの」
「…………」
「……ええと?」
「解らない? つまり技能表記って、――そのTRPGシステムで用いられていたスキルシステムの持ち込みなの」
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「……えーと、要するにリプレイ的な?」
「OSAKAはリプレイじゃないでしょ? 世界観としての技能の扱い方が同じ。要するに、――技能が魔術とかと同じシステム上にあったの」
「アー……、何となく解って来たような」
「GENESIS-SYSTEMはちょっと変わった部分があって、判定は能力値で行えるんだけど、専門化する場合は専用スキルを用いるの。そしてこのスキル判定は、戦闘も日常系も、同じ単位で行われるのね」
「単位?」
「代演と同じ。ロールプレイは必要だけど、たとえば”交渉”で”剣技”を弾ける。つまりスキルを行動種で分けるけど、基本、ロールプレイが成立するなら全てのスキルに等価な対抗判定が為されるの。無論、状況に合ったスキルが優先はされるけどね」
「それって、まさか”交渉”で”鍵開け”とか出来るんです、か?」
「それが出来るロールプレイをやればね」
「例えば?」
「”開けゴマ”って、そういうものじゃなかった? 後は鍵の精霊が納得してしまったらいいって、そういう」
「また思い切ったシステムですね……!」
「高度な技術は魔法と変わらない、って発想でね。
いろいろな術式とかを組み込んで行ったら、その”間”をまとめるルールが煩雑になり過ぎちゃって。だから神道的な思想に合わせて”全部、同列かつ等価判定でいいか。専門スキルってそういうレベルの話ってことで”って発想でまとめたのね」
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「……以前、GENESIS-TRPG(同人)見た処、クソ重いシステムだと思いましたが、アレ、つまりはシステム部分は出来る事の羅列で、実際はロールプレイで”専門家が自分の技を何にでも適用して勝負する”って内容だったんですね……」
「汎用をさせすぎて制御出来なくなったのよねー……。だからT&Tくらいまで簡略化したいな、と思って、結局はロールプレイ主体なら、全スキル等価判定にすれば、術式なども同じように扱える、ってことで」
「コレ、代演のベースですよね……?」
「そうね。だからうちらの世界では、神道が代演を使えるの。GENESIS-SYSTEMのYAMATOサプリメントはほぼ完成していて、そこからの持ち込みだったから。
一方で旧派や改派なんかはこの等価判定に制限が入ってる、って感じで、つまりは代演ルールこそがベースで、他は”限定”されてんのね。GENESIS-SYSTEM的には」
「何が何やら、……って感じですが、つまりロールプレイと技能判定がメインのゲームを小説に持ち込んだって訳ですね」
「そう。だから通常判定やロールプレイは地の文として、特殊な専門スキルの判定は、それこそ”術式”的に用いられる世界って感じね」
「だとすると技能判定の元々って……」
「ええ。感覚としては魔術の”詠唱”に近いものだったの。通常判定を越える行動をするとき、達人達が技能を宣言、発動してお互いをバトるみたいな」
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「で。そのGENESIS-SYSTEMって現存するんですか?」
「草稿は存在していて、後半の一部だけ現存してるわ。メイン部分が98時代のHDDDクラッシュで飛んでしまって、ひょっとしたら68のFDにあるかもって今でも探してる感ね。御陰で昔のマシンが現役だわ……」
「代用効かないですからね……」
「で、剣神壊も吹っ飛んでしまってて、設定部分が残ってる感じね」
「アイタタタタとか、そういうの吹っ飛ばして貴重資料になってますね……」
「見ていて、アー、アレがあの要素、とか解るでしょ?」
「竜帝とか、ほぼほぼそのまま来てますね……。アー、鬼の義腕とか」
「ヒロインの名前が、名字と名で同じ音を使っている、というのが結構気に入っていたのと、ライバル側で出ていた”結城”家がやっぱり印象にあったから、OSAKAで結城・夕樹が生まれる訳ね」
「色々と積み重ねですねー……」
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「――で、コレで使っていた技能表記法をほぼそのまま持ち込んだのがOSAKA。だからOSAKAは、プレ版も含めて、技能表記というか、文体への組み込みは問題なく行えたのよね」
「そういう意味では三回目の成果がOSAKAなんですね……」
「一回でアレが出来たら凄いんだけどね。でもまあそういうのとは別で、技能表記というシステムの組み込み完成度としては、結構行けてると思うのよ、OSAKA」
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