『終わりのクロニクル』神州世界対応論の導入
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「川上作品でよく使われるネタで”日本と世界全体が対応している”というのがありますが、それはいつ、どんなネタとして成立したの? そしてまた、他のそういったネタとの差は何? ちょっと意外な流れを持ったこのアイデア。そんな話ですね」
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「クロニクルというと神州世界対応論ですよね」
「結構、面白がって貰えたわよね」
「ええと一応。神州世界対応論って、つまり地脈によって日本各地と世界各国が繋がっている、っていう理論です」
「こんな感じですね。
・北海道=米国
・本州=ユーラシア大陸
・四国=オーストラリア
・九州=アフリカ
大体こんな区分で見て下さい」
「コレ、発表というか、匂わせみたいなのは都市の頃から始まってるわよね」
「そうでしたっけ?」
「新伯林の”祖国”が、世界全体をつなぐ地脈から、独逸に地力を集める、ってものだから、あれ人工的に神州世界対応論をやってるの。発想は同じなのよね」
「アー、確かに機能とか、同じですね……」
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「しかしコレ、何処で得た発想なんです?」
「それがマー、困ったことに自然発生なのよ」
「…………」
「……What?」
「前提として”コレ結構、誰でも思いつくネタでは”って思ってるのね、私。ゆえに実際、Twitterでたびたび上がってくるでしょ? 日本が世界各地と似ている! みたいな”発見者報告”のRTとか」
「アー、ありますね……」
「アレ、本当に本人単独で気付いたってのも多いと思ってんのよ。自分がそうだったから。だから自分的には、ガジェットとして面白いんだけど、レア度で言うと低いんじゃなかな、って思ってるの」
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「じゃあ、何処で思いついたんです?」
「いや、単純に芋蔓よ」
「芋蔓?」
「だってほら、考えて見なさい。私、中二のときにクロニクルとホライゾンの原盤になるものを書き出すんだけど、それってつまり、中二以前から、準備はしていたのよね」
「アー、まあ、そうなりますね……」
「――で、日本の各地に神話とかモチーフの異世界が落ちてくるクロニクルと、日本の各都市、各地域がが浮上都市になっているホライゾンを想定したとする。いいわね?」
「アーハイ。想定しました」
「したわね? ――じゃ、設定を考えるわ。
クロニクルは話の方とか大体いいけど、じゃあ日本の何処にどの異世界を落とそうかなあ、って考える。
ホライゾンは、この浮上都市群日本を統一したら、次は世界だね、って考える。
でもね?」
「でも?」
「何となく両者が繋がっていた方が面白いなあ、って思うわよね?」
「アー、マー、ハイ」
「そうよね? だからクロニクルに落ちる異世界の”痕”が、ホライゾンの方にあると面白いなあ、って、そう考える訳。
そしてホライゾンを思った時、こう感じたの」
「どのように?」
「世界各地にあった神話モチーフの異世界”痕”が、浮上都市群”日本”の各地にある場合。
コレ、……浮上都市群の住人には、この”日本”が”世界各地”に見えるんじゃないかしら、って」
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「アー……」
「何となく解ってきたでしょ? 逆なの、発想の順番が」
「世界各国が日本に似てるから神州世界対応論が生まれた、のではなく……」
「日本に世界各地の”痕”を落とした場合、説得力を与えるため、日本と世界各国の何処が対応出来そうか、って発想で生まれたのが神州世界対応論」
「ア――――」
「地図帳見てね? 世界地図と日本地図を比較して、さ。”あ、ここ、行けるな!”とか”四国=オーストラリアとか、こじつけっぽくていいな!”とか、やってた訳よ。
北海道がアメリカは流石に行きすぎな気もするけど、じゃあ北海道出さなければいいか、とか。かなりこっちの都合で”対応”させてた感じ」
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「というか、だから”対応”論なんですね……!」
「そうよ、雛形論とか同一論じゃなくて、”何処が対応かなー”って地図帳見てた時の感覚そのまま活かしてるから”対応”論」
「ウッワ、クソ雑ですね……」
「いやホント、そんなもんよ。後から似た様なのとかいろいろあるって知って”アー、やはりこういうの誰でも”って思って」
「つまり元ネタがあったとしたら”中学校向け世界地図帳”」
「正確には”中学校社会科地図”ね」
「いやコレ、アレですよね。ここで明かしてなかったら、後の時代に何も解ってないけど論理立っていうのは上手い人が”川上稔はナンタラを資料としてこれに行き着いた”とか断定口調で言われるアレ」
「だから現国テストは問題作る際に作者にホントに聞きに行けと……」
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「でもそこからクロニクルとホライゾンには、どういう風に?」
「そうね。ホライゾンの場合、まず主人公達が始めに旅する浮上島が日本神話ベースの場所となったの。そして”各世界”と思える島を統一していく戦乱になるんだけど、読者視点からだと”あれ? コレ、世界じゃ無くて日本の各地域……?”って解ってるって仕掛け。
そして”世界各国”を統一したと思ったら、”真の世界各国”が浮上大陸として出現する、ってネタだったの」
「究極の二重天丼ですね……。今と違い……」
「気付いた?」
「……重奏世界が、ある意味、それに近い存在だったんですね」
「そういうこと。重層世界は結局神州の上に世界が乗ってるけど、重奏統合騒乱って、ネタ的に見たら世界各国の要素が残った極東が、世界各国とバトった訳で、発想は同じものよね」
「アー……」
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「まあそんな感じよね。つまり神州世界対応論は、神州世界対応論として思いついたり、発想したものじゃないの。
世界を作る中で、設定を組み上げていったら、その途中で生まれてきた産物なのよね」
「もう何が何やら……」
「マーこんなだから、突拍子も無いような設定が積み重ねから生まれることだってあるし、何か不意に、しかし”よくある思いつき”ってのもあるなあ、って思ってるのよね私。
だからネットである”コレ思いついた!”って流れのTL見ると、”あ、昔の自分みたいなのが、今はこうやってアピール出来るんだなあ”って思ったりするわ」
「時代が時代ですが、今だったらどうなんですかね……」
「どうかしら? 当時は周囲に友人しかいなかったから”潰される”こともなかったけど、いまはそう静かでもないものね。いろいろ、黙っているのも大変だけど、それもまた、作る側の楽しみなのかしら」
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