都市世界の前提”世界の各都市でマルチバース”
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「今回の話は、都市シリーズの世界の構造についてです。都市の世界? 何それ、という疑問にお答えしたり、そのアイデアの発生などを解説です。都市シリーズ知らないとか言わない! そんな話ですね」
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「今回、ビミョーに長めね」
「一回目更新の『都市ごとに世界のルールが違う”都市世界”』の補足みたいな感じですね」
「……さて、ちょっと改めて聞きますけど、都市シリーズ、”世界の各都市でマルチバース”って、どういうことなのか、まずそこからでは?」
「マー、簡単に言うと、世界各国の都市が、都市単位での異世界になっていて、しかし地球上に同時存在しているって処ね。
共通ルールとして、幾らかの超常存在がある感じ」
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「それって、今で言うマルチバースが、地球上に世界各国の都市として存在している、みたいな?」
「そうそう。そしてその地球では歴史がそれなりに形を変えつつ再現されていて、都市ごとの法則をベースにいろいろ事件が起きる、という訳。
だから普通のマルチバース? と違って、こういう特性があるの」
・各都市は地球上に同時存在している。交流、行き来、出入り可能。
・地球上は、本来? の歴史を再現して行っている。
・各都市、都市間にて、歴史や法則をベースにしたトラブルが発生する。
「地球本来の歴史がある、というのが、ちょっと特殊ね。
各都市の歴史的事件とか、都市間の事件が、それぞれの法則を元にした事件となって行く訳。それが世界中で、都市一個ごとに起きたり、都市間の移動者達が居て関わってきたりと、そんな話なのね」
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「……しかし、何でそんな発想になったんです?」
「どのあたりが?」
「まず、”各都市をマルチバース的にした発想”と”マルチバース的なものを各都市にした発想”です」
「解りにくい問いかけだけど、マー確かにそうとしか言いようがないわね……」
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「それぞれへの回答だけど、こっちの前提から話をするわ」
「聞きましょう」
「――元々、自分の方ではクロニクルとホライゾンを中学校の頃から書いたり、準備してたのね。
でまあ、初期の両者は、今の形と結構違ったの」
「何かズレてる気がしますが、……大丈夫ですか?」
「マーちょっと聞きなさい。
中学校の頃に考えていたクロニクルは、デスゲームの戦後交渉じゃなくて、日本の各地に同化した異世界を攻略していく話。
一方のホライゾンは、日本や世界の各地が浮上島として存在する世界を旅して王になっていく話。
この内、クロニクルは書けて、ホライゾンは書くことが出来なくて挫折。
この二つの差は解る?」
「――以前にもあとがきとかで見ましたけど、クロニクルは各世界が別々に存在していて、日本の上に同化しても”別の世界”でしたけど、ホライゾンの方は、その浮上島がそれぞれ文化や経済を持っていたら連動し、影響し合っている筈……、という話でした」
「つまり?」
「つまりホライゾンの場合、”世界は出来た瞬間から見えない箇所まで全て連動している”という用意が必要。しかしそのやり方も知識も解らなかったので挫折、ですね」
「そういうこと。
クロニクルは世界が複数あっても”個別”。
ホライゾンは世界が複数あった上”連動”。
設定も制御も、ホライゾンの方が複雑なのね。
このことは、都市を手がける前にもう解っていて、だから都市というか、自分発のオリジナルを作るときに、”気を付けなければならないこと”の第一になったの」
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「そして昔から、ゲーム企画者っていう将来志望が自分の中にあって、ゲームのアイデアを作り溜めていくんだけど、このとき、幾つもの世界観が溜まっていって、段々と”統一世界”みたいなアイデアも出てくるのね」
「それがどのような影響を与えるんです?」
「一作ごとにシステムが違う、ってこと。
ゲームだと当たり前よね? でも小説だとそうじゃないんだけど”一作ごとにシステムが違う”は、ゲーム企画者を目指す自分の中では当然のこととなっていたの」
「…………」
「……一般からズレてません?」
「うーん、そんなことは無いと言いたいわ……。
ともあれ、ここらがさっきの問いかけへの回答。その布石という処よね」
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「では、各都市をマルチバース化したのは、何故ですか?」
「そうね。
・世界が”個別”だったら書ける、という自信があった。
・ゲーム企画者の観点から、各都市を違うシステムにするのは必然だった。
こういうあたりかしら」
「じゃあ、マルチバースを各都市化したのは、何故ですか」
「これは、こう答えられるわ。
・各都市レベルであれば、連動が出来るようになっているだろうと判断した。
・将来、ホライゾンを書く練習として、世界の連動を試してみようと思った。
・これは企画として面白いし、新しい、と思った。
こういうことよね」
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「結構、ホライゾンが影響してますね……」
「そりゃあ、書けなかったものは書けるようにならないと、というのがあったもの。資料を”何か役に立つのでは”と集めるのと同じで、執筆経験だって”何か役に立つのでは”でなければ自分の向上って無いでしょ?」
「要らんレベルの負けず嫌いが……」
「諦めたら終わり、みたいな処あったわよねー」
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「で、ちょっと気を付けたいのが、この”都市シリーズ”のスタートって、伯林じゃないのよ」
「……What?」
「都市(CITY)に関しては、実はプロ目指して応募してたときに、最初に幾つかの都市のベースとなるもの書いてるのよね。
つまり自分の方では、元々、FORTHからGENESISまでの世界観を作っていた訳だけど、そこで作っていた世界のシステム(燃料、法則、組織など)を利用した別世界観のものとして、TOKYO、上海、倫敦、OSAKA、香港を書いていたの」
「アー……。何かまた複雑になってきたような……」
「さっきのアンタの問いかけへの答えは、伯林35で生じたんじゃなくて、その頃に出来たものなのよね。そしてスタートはTOKYO」
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「? 何でTOKYOスタートだったんです?」
「いや、いろいろ企画用にストーリーを作っていたら、大学一年のとき、十代後半の自惚れ最前線みたいな感じになって”あれ? 自分? 小説書けます?”みたいなアッパーが始まっちゃって」
「アー、イタタタタタ」
「いや、ホントそうなんだけどね。で、企画用でいろいろ作っていたストーリーって、基本的にはゲーム企画用で、いろいろな意味で”ゲーム的”なのね。ゲームのシステムを匂わせるようなガジェットがあったり、で」
「ああ、まあ、そうなりますよね……」
「そうそう。だからゲームから離れた”小説としてのオリジナル”を書こうと思ったの。
でもクロニクルの焼き直しを書いても仕方ないし、ホライゾンは書けると思えないし、この両者が出来ないとEDGE(当時、AHEADとEDGEは逆の設定でしたが、ここでは解りやすく今に合わせてEDGEと呼びます)あたりは足場が弱いし、と、そんな感じ。
だから、次のようなことを考えたの。
・これから書かれる小説は、ゲームから発生しない、自由なものとする。
・発想に制限を掛けない。
こんな感じ」
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「……ンン? 何かさっきと、矛盾してません?」
「解る? さっきは、自分が書くのはゲーム的でシステム的なものになる、と言っていたのにね」
「そうです。それが何故、最初となるTOKYOはゲームから発生しない、自由なものってなるんです?」
「解らない?
システム的なものを書いたとして、それの出来を自己評価するには、非システム的なものを書いた経験が無いと、自分の中での相対評価も出来ないでしょう?
自分の得手不得手を理解する意味や、ではルールが無かったら自分はどうなのだ、と、そういう部分を、まず知っておく必要があるの」
「な、何か複雑な話が来ましたね……!」
「場合によっては、その後に、非システム的なものを書ける機会が無くなる可能性だってあるものね。更にはまあ”自分がどのくらい自由な発想が出来るのか”は、最初に見ておくべきだとも思ったのよ。何も経験の無いような自分の、ある意味、原石的なものを。
それが全く平凡だと思えるなら、”向いてない”んじゃないかと、そう判断出来るし」
「アー……。成程、それで書かれる長編TOKYOが、題材として、中学三年の時に書いた掌編、あれを膨らませて書いたのも、ソレですね。
自分のスタートライン的な」
「コレがそれね。以前にTOKYOの総集編でも見せたわ。
コレ、クロニクルやホライゾンとは別で、掌編だけど、自分らしさはあると思ったのね。
すでに季節の擬人化や事象の概念化、天体の日常化とか起きてて趣深いわ。そして高校時代に追加の掌編(現在はデータ紛失)を趣味で書いていたりもして。だから、それらを統合した世界を作ろう、と」
「そして出来たのがTOKYOですか……」
「そういうこと。神田、時館にて時間が止められるのを阻止しに行く、というロードムービー的なところもある内容ね。
自分としてはかなり型破りなものを書いたつもりで、これだけルール無用に行けたなら、じゃあ、ルール有りのものも書いていいじゃないか、ってそんな風に思った訳」
「……何ですかね、このヒネた性格は」
「いやー、私、物事や常道への逆張りするの好きなんだけど、自分に対してもキッチリそれするから偉いわよねー」
「いや、偉くないんじゃないですかね……」
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「アー……、しかし、TOKYOが都市のスタートみたいに言われるのはそのあたりで……」
「そうそう。小説モドキみたいなのは中学校くらいから書き始めたんだけど、文章の書き方解ってなくてね。いろいろ勉強していたら”言葉として書かれたものは、そこに存在することになる”っていうルールみたいなものに気付いて、そういう要素が世界観の中に入るようになった訳。
中学校の時の掌編。あれを自分が特殊に感じたのって、つまり設定とか云々よりも”言葉として書かれたものは、そこに存在することになる”をやっていたからなのよね」
「じゃあ、TOKYOで星や風が街中で生活してたりするのも……」
「そこらへんは80年代や90年代のポップスとか聴きなさい。星を捕まえてランプにしたとか、風と歩いたとか、結構そういう歌詞の歌があってね。もしもそういうのが”有り得る”としたら、と、考えていった訳よ。
それでまあ、さっき回答した通り、まだ自分には世界一個作る実力無いから、世界全体を作るより、●●都市、と名付けて各都市ごとに書いていった方がいい、と思ったのね」
「……実力あったら違う世界観になっていたかも?」
「その場合は、いきなりクロニクルやホライゾンに行っていたかもねー……」
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「でまあ、実は電撃ゲーム小説大賞の第二回に”架空都市・倫敦”が最終選考まで残ってんのね」
「意外と知られてませんが、どういう内容だったんです?」
「あ、異族の都市で、英国が架空世界になっているのは同じ。外燃詞に似た要素はあったわ」
「書物世界じゃなかったんですか?」
「そう。まだ発想が足りてなくて、異族達だけの空間がそこにある、みたいな扱い。でまあ、ノリとしては格闘ゲームよね。ヴァンパイアとか、あっち系列。
外燃詞は”架空”って言うワードから、空想・イメージの現実化として異族がいるなら、彼らのする空想、イメージも現実化するのでは、という発想ね。だからアモンの変身みたいに、イメージが具現化するのと同じで、思考も現実化して、見える」
「ああ、ビジュアルシーンのトガキや台詞みたいに……」
「そうそうそういう感じ。だから当初は、逆に隠せないからどうしたらいいか、みたいなネタもあったの」
「それがどのようにして今の倫敦になったのか、それについては倫敦の項目ですね?」
「そうね。でも何となく解るでしょ?
都市シリーズはシリーズの最後発だったけど、突然生まれたものでもなければ、集大成とかそういう訳でも無いの。いろいろ作って来た中で、必然のものとして生じたのね」
「各都市のマルチバース的アプローチも、そうしようとして作ったというよりも、他のシリーズや自分自身の方向性から、自分に今出来る最新、最善として作れるものがこれだった、という処ですね……」
「そんな感じだから”所謂マルチバース”とはルールとか御約束も違うのよね」
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「…………」
「……あの、昔の貯金で食ってません?」
「つーかトータルとして”昔からの延長”よ。そういう感じ」
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