ヒーローとしての女性

「…………」


「……何か扱いづらい話題が来ましたね? とか、そんな風に思ってます」


「いやまあ、確かにコレ、難しい部分あるのよね」


「ヒーローとしての女性、ってのが、ぶっちゃけ、前例結構ありますよね? デビュー時においても」


「あるある。コバルト系なんかもだけど、女性向けのストーリーは基本的に女性が主人公だから、そういう傾向高いし、角川系列のラノベでも女性主人公は結構いたわね」


「じゃあそれらとの差は」


「ああ、それはもう”ヒーロー”ってこと」


「…………」


「……What? 話が戻った気がします」


「じゃあ、ちょっと言葉を換えるけど、ヒロインって、どんな存在?」


「……それは、まあ、男主人公の傍で支えたり、支えられたりという……」


「…………」


「……ちょっと味の違う存在が身内にいますね……、とか思ってませんよ?」


「今、仲間内は本人含めてそう思ったろうから気にしなくていいわ。

 ――でまあ、何というか、男性向けだと、女性って基本的に”支える役”だったり、”弱い立場”なのよね。でもそうじゃなくて」


「――対等とか、そういう?」


「男性がヒーローだったら、その位置に女性がいてもいいじゃない?」


「無論、男性と女性で出来る事や出来ない事ってあるのよ。でも何か、”役割的な御決まり”は排していいと思ってるのね。女性は”守られる存在”で固定、とかそういうの無しで、男性と同じように現場に出て、出来ることで最大限をやっていく、と」


「アー、現状の自分達とか、そんな感じですね……」


「そうね。でもその一方で、”守られること”を否定もしないの。だって男性に比べたら根本としてのフィジカル面で敵わない場合が多いから、そういうときに”守られるのは駄目”みたいな考えもしないのね。

 男女として出来る事、出来ない事はある、という事で。出来ない事を認めるのは恥ずかしいことじゃないわ」


「ああ、”男女平等”って、それを示すために”お互いが殴り合う”ような、そんな必要はないですよね……」


「意味的にはそうかもしれないけど、それを示すためだとすれば行きすぎよね。

 ともあれ女性としての御約束とか要らないものとして、しかし出来る出来ないを理解しつつ現場に出る。まずはそういう意味で”ヒーロー”」


「まずは?」


「ええそう。ヒーローとして必要なのは”強さ”かもしれないけど、うちの場合、その”強さ”には”自己の確立”というのがあるのね。

 つまりビルドゥングスロマンの要素」



・ビルドゥングスロマン

 教養小説のこと。実は独逸語。

 主人公がいろいろな経験をもって内面の成長、確立する。その過程を描く小説。



「まあ今回、他でも語っているけど、コレの要素が非常に強いのね、川上作品。

 コレによる自我の確立が覚悟となって、一気に成長、強力な存在となるの」


「――どちらかというと男性向け小説の要素ですが」


「女性ものにも多いわよ? 少女漫画とか、特に多いから。

 でもまあ、こういう”強固な自我”を持つということで、”ヒーロー”の次要素ね」


「ああ、ええ、”強固な自我”という意味では、身内に死ぬほど居ますので……」


「アンタも蓋外しの一件とかで相当ソレだから、自覚しなさいよ……」


「他、”ヒーロー”としての部分は、あるんですか?」


「そうね。”立場や存在としてのヒーロー”、”成長と自我としてのヒーロー”というのがあるけど、これはまあ、他の作品にもよくあるものだと思うわ」


「じゃあ、他の要素は……」


「ええ。川上作品の場合、これは女性に限らず男性も含めてだけど、ある意味ヒーローにとって重要な要素を自覚しているの」


「それは何です?」


「――”個”であること」


「孤高、孤独……、とは行きすぎだけど、ニュアンスは近いわね。

 誰もが”一人”であり、例え一緒にいるとしても、それは今、そうしているに過ぎないという、やがての別離を前提とした観点があること」


「勇者の孤独、というより、自我を持った個人として、当然のものですね……」


「そうね。だからお互いを尊重するし、同調などの強制に対して拒否をする。また、それぞれの自我は別の存在で唯一だから、それが消されることには抵抗する。

 ――まあ、うちの総長とホライゾンのアレよね」


「ですねえ……、って、でも、私達みたいな関係はどうなるんでしょう?」


「アンタ達の根本に”コイツ一人にしておくとやべえな”があるのはそういうことよ。”一人”であることの尊さも危険性も解った上での行動と付き合いでしょ? だから失わせないようにした訳だし」


「アー……。まあ確かに……」


「だから川上作品の女性キャラは、こういうことを言うの」





「新伯林の脇役、敵側の女性役職者の一人、ジャンヌ・シュミットの台詞ね。

 自分の出来る事、出来ない事を理解しているからの言葉で、しかしこの後、彼女は、重騎(武神同様の人型機械)と合一したパートナーが倒されようとするとき、その前に立ちはだかって止めようとするのね」


「複雑ですけど……、言った通りのことをしてるんですね。生きている限りは、って」


「アンタの場合はそこで1501回なのよ……。この違いはどういうこと……」


「いやいやいやいや」


「――でもまあ、そういうこと。人間関係が恋愛に終始してなくて、お互い必要だから、居られるだけ共に居る。パートナーってことね」


「自我があって、実は”一人”の自分達が、巡り会っているだけ……、というと、”関係”とか”縁”の話でもありますね」


「そう。だから、いつ別離があってもおかしくないという自覚があるのが、つまり”個”である”ヒーロー”なのよね」


「よく考えたら、CP多い川上作品でも、恋愛無しの女性陣や男性陣、多いですよね……」


「35のエルゼ自体がソレだもんね。……御陰で前線に出てくる連中がどいつもこいつも自我強いから、役職者のこっちは撃破が面倒だわ……」


「ああ、脇役どころかモブにもそういうの浸透してますよね……」


「そう。だからこういうのが”強キャラの資格”になってない。”平均”なのが川上作品の登場人物としては怖い処なのよ……。

 主人公格だけが”アイツは自我が強い”とか”御強くなられた”みたいなこと言われる作品じゃないから」


「大変ですねえ」


「アンタもその一角なのよ? しかもかなり強固よ? 自覚なさい?」


「まあそんな感じ。女性だけじゃなくて男性も含む要素が多いけど」



・”女性”の枠組を排しつつ、女性としての差は認める

・自己、自我の確立をする

・”個””孤独”の自覚



「いろいろと見解はありますけど”格好良い女性”ってことですかね……」


「…………」


「最初からソレ言ってれば、一言で終わったかしら?」

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