1000ページ越えの到達と普遍化
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「今回の話は、1000ページ超える本を作ったのはどういういきさつか、ということと、それを行ったことでラノベ全体としてどのような影響や事実が生じたか、という話ですね」
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「タイトル的に、何か大きく出て来ましたね……」
「まあでもそういうものよね。今だと、ラノベでも600越え、800越えがあっても、チョイ珍しいくらいの感覚になったわ」
「スタートはどんな感じだったんです?」
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「初の1000ページ越えしたクロニクルの最終巻は、作中と同じ2005/12に出そう、というのを担当さんと決めてたのね。だから上下にしようか単巻で行こうか、というのがあって、担当さんとしては、実は700ページくらいの上下巻になるかもしれない、というのも想定してたみたい」
「アー、まあそこまでは行かなかったんですね……」
「そう。出来上がった原稿が1200くらいあって、担当さんが調べたら1100くらいだったら一冊に収められる、というのが解ったのね。で、上下巻にすると、年末でまず上巻買った人が、年末年始の流通や休みによって書店の補充が動かず、リアタイで下巻を読めない可能性が有る、という懸念もあったの。
だったら一冊に収めて、発売日にリアタイ可能な内容が全部届くようにしようと、そんな判断があった訳」
「リアタイ性重視だったんですね……」
「当時は流通が今よりまだちょっと曖昧な処あって、補充とかが完全にデジタル管理されてなかったからね。
だったら欠品の補充を心配してるより、まとめてしまった方がいい、と思った感」
「アー……、まだデジタルの時代になってないんでしたっけ……」
「そういう時代ではあったわね。でもまあ、最終刊を書いてる初期の頃に700ページの束見本見て担当さんと一緒に笑っちゃって。この笑いは皆に共有して欲しい、と思ったから、1200を分けて600の二冊にしてもね、というのはあったわね。商業的に見たら分冊した方が得なんだけど」
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「――で、担当さんと自分のルールで『一回やったことは、もはや”普通”である』というのがあったのね。これは、うちは新しいことを次々やっていこう、というのと同時に、これまでの新しいものを踏み台にして、更に新しいことをやっていこう、という話でもあるの」
「それで以後、”普通”に厚い本が?」
「ええ。だって、前例がある以上、誰でも出来るのよ? リスクはあるけど、でもリターンの方に意味を感じるなら、やっていい。そういう前例を作って、しかしそれが特例扱いにされて”あれは特殊だから”で消えなかったのは、”普通”であるとして、踏み台にしたからだと思うわ」
「一回やって逃げる……、みたいなことはしなかった訳ですね」
「そう、前例作っても、後が続かなかったら、それは特例扱いであって、”本来あってはならなかったこと”になってしまうのよ。
それだと、やったことが否定されてしまうでしょう?
そしてやった側も、ひょっとしたらリスクを出版社に背負わせて一回逃げ切りの売名したかっただけかもしれない。
でもそれじゃあ、折角作った前例は、逆効果にもなるのよね。
だから自分がやったことは”普通”であるとして、自らが利用していくの」
「アー……、後はそこでちゃんと利益化していけば、”あっていいもの”となって、普遍化する訳ですね」
「そういうこと。こっちにはクロニクルの後、ホライゾンという大玉があったし、まさにその利点を享受出来る状況にあった訳ね」
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「でも、自分が利用すると言っても、常にそう、厚い本? が出来ますか?」
「そうね。そのあたりは、別でコラムしようかしら。『”物語”がページ数を決める』とか、そんな感じで話そうと思うわ」
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